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相続税における実効税率とおさえておきたい限界税率との違い

2021年10月27日

相続税の基礎控除の額を超える財産を保有する被相続人が亡くなって、遺産を相続することになったら、相続税についてもや税率の計算について正しく理解しておかなければなりません。基礎控除は3,000万円+法定相続人×600で計算します。

相続税を計算する際に必要となる知識が「限界税率」と「実効税率」です。万が一のご相続が発生してから、相続税の制度について勉強をしていると遺産分割や税務署に提出する申告書類の作成など手続きに時間がかかり納税の期限に間に合わない可能性もあります。申告の期限は相続人が被相続人の死亡の事実を知った時から10ヶ月以内です。

そのため、相続が発生する前に知識を得ておくことが重要です。また、生前の税額が分かれば対策を打つことも可能です。

今回の記事では「限界税率・実効税率について正しく知りたい」と考えている方のために、ポイントを解説していきます。

特に生前対策で贈与などで遺産の額を減らすことを検討している方にとっては節税にもつながる重要な問題です。相続税や贈与税に関して調べているけれど限界税率、実行税率の内容がよくわからないと悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

自分の場合は具体的にいくらの相続税がかかるのか、税負担の考え方などがわかるようになります。

相続税における限界税率と実行税率の違い

相続税では、税率を考える際に「限界税率」と「実効税率」の2つが用いられています。それぞれの概要や算出方法、違いなどについてご紹介します。

限界税率

限界税率とは、相続税がいくらなのか計算する際に用いられる税率のことをいいます。

相続税を計算する際には、まず、被相続人が保有していた課税対象となる財産の評価額を一覧にし、相続や遺贈及び相続時精算課税の適用を受ける贈与によって財産を取得した人ごとに、課税価格を計算します。課税対象となる財産とは預金や株式、土地建物などの不動産、生命保険などあらゆる財産が課税対象となります。生命保険の非課税枠内の財産や仏具など一部非課税となるものもありますが、ほとんどの財産が課税の対象となると考えてよいでしょう。相続税の計算をするためには被相続人が保有していた財産の内容や金額を把握することも重要です。

財産の評価は相続が発生した時に国税庁が定める財産評価基本通達に応ずる評価方法を行います。まずは各財産を書き出して一覧にするとよいでしょう。

次に、民法に定める法定相続分に従って相続人が課税遺産総額(注)を取得したものとして税額の総額を算出します。

法定の相続分は配偶者と子がいる例では、配偶者が2分の1、子供が2分の1を複数いる場合はその人数で分けます。例えば、法定相続人が配偶者と長男、長女の合計3人の場合、配偶者の法定相続分は2分の1、長男と長女はそれぞれ4分の1ずつとなります。

そこから最終的に財産を遺贈により取得した人の課税価格の割合に応じて、各人の相続税を計算することになります。

(注)「課税遺産総額」とは、各人の課税価格の合計額から基礎控除を差し引いた金額のことです。

この課税遺産総額に応じた税率は、以下の速算表のように定められており、国税庁のホームページにも掲載されていますので確認しておきましょう。

法定相続分に応ずる
取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

ここでいう上記の表の税率が限界税率です。上記の表の通り、財産に対して単純に税率をかけるわけではないということがお分かりいただけたでしょうか。それぞれの取得する金額に応じて税金の額が異なりますので相続人の数が少ないとそれだけ負担も大きくなります。

実効税率

実効税率とは、相続した財産に対して、負担する相続税の割合を示した税率のことです。

例えば、1億円の遺産を配偶者と子供2人が相続した場合の相続税の総額は630万円となります。その遺産1億円のうち、40%にあたる4,000万円を取得し、実際にかかった相続税の納税額が252万円だったとしましょう。

この場合、実効税率は、実際に負担する税額を取得した相続財産の額で割ることで求められます。

例の場合だと「252万円÷4000万円=0.063(6.3%)」です。ここで出た算出した数字は取得した財産に対して負担する相続税の割合となります。つまり、4000万円の財産を引き継ぎ、そのうち6.3%を相続税として課税され支払うことになります。

この場合の6.3%のことを実行税率と言います。実行税率は法定相続人の数によって大きく異なります。財産が同じ1億であったとしても、相続人が一人の場合と二人の場合では実行税率は大きく異なるのです。そのため、同じ財産を持つ人でも子供の数によって税金が変わってきますので子が少ない方は節税対策も早めから行う必要があります。。

実効税率を求める理由

節税について考える際には特例を適用した後の実効税率から判断が必要です。相続に関する節税対策の一つとして生前贈与があります。この場合、年間の贈与額に対する暦年贈与と相続のうちどちらがお得なのか迷ってしまうこともあるでしょう。

そのような場合には実効税率が役立てられます。

相続税と贈与税の実効税率を計算し、比較すればどちらがお得なのかがわかるからです。相続税の実効税率を計算したところ、贈与税の実効税率より大きかったようであれば、非課税になる110万円を超える金額を贈与しても節税効果があります。しかし、小さければ節税効果はありません。

例えば、相続人が子供1人で遺産総額が1億円だった場合の相続税は1,220万円となり、実効効率は12.20%です。そのため、相続の際には12.20%の相続税である1,220万円を支払うこととなります。

この場合、相続税の実効効率である12.20%以下で生前贈与を行っておくと、贈与した金額に応じて節税に繋がるのです。例えば、生前贈与の実効税率を確認してみると、500万円の贈与は贈与税額が49万円で、贈与税の実効効率は9.80%です。計算して比較してみると、500万円の生前贈与をしてから相続した方が結果的に100万円ほど節税きます。このケースでは年間110万円の非課税枠を超えて、贈与をした方がお得です。

このように具体的な計算ができるので、仕組みを理解し、実効税率を求めたうえでできるだけ低い税率で少ない金額で納税できるように対応を考えることが大事です。

慎重な計算が必要

今回は、相続税における実効税率や限界税率についてご紹介しましたが、考え方をご理解いただけたでしょうか。注意点として、限界税率と違って実効税率はシチュエーションによって変わりますので簡単ではありません。また改正が頻繁に行われます。知識のある人に案内してもらえないと利用できる特例を見落とす可能性もあります。

そのため、相続税対策を行うなら、報酬を支払う必要はあるものの税の専門家である、最新の情報を持つ税理士に頼んだほうが確実です。初回の相談は無料となっているところも多いので、まずは気軽に相談してみて申告にかかる料金を質問してみるようにしましょう。また、申告期限ぎりぎりに依頼すると税理士でも対応できない可能性がありますので、早めに依頼することが重要です。

相続税の申告は非常に複雑です。流れを理解していても税率や金額を勘違いし、間違って申告書を作成をしてしまい、税務署に指摘されてしまうと皆さんが思われている以上に大変なので、注意しましょう。また、特例を適用し、有利にするためにも税理士の知識が必要となる場合があります。費用を支払っても特例を適用することで、結果的に負担を減らすことができる可能性もあります。

相続税の相談は相続税の申告や節税対策の実績がある税理士や税理士法人に相談するようにしましょう。紹介してもらえるような税理士の知り合いがいない場合は、HPなどで、相続税を専門としている税理士を探すとよいでしょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい