不在者財産管理人とは?

  • HOME
  • 不在者財産管理人とは?

不在者財産管理人とは?

相続が発生し、被相続人が死亡する前に遺言が作成されていなかった時は、遺された相続人は誰が何を相続するか、相続財産の配分について全員で話し合い、遺産分割の手続きを進める必要があります。

しかし、親族の中に居所や連絡がとれない行方不明の人がいると、遺産分割協議を進めることができません。そのような場合に利用できるのが不在者財産管理人という制度です。当記事では不在者財産管理人の制度の概要や役割について解説します。

不在者財産管理人とは

不在者財産管理人とは行方がわからない本人に代わって財産を管理する人のことです。相続人の中に行方不明者がいると遺産分割の協議ができませんので利害関係者は手続きを進めることができません。そこで、不在者財産管理人が協議に参加することで、財産の配分を決めることができます。

不在者財産管理人の申立ては配偶者などの相続人や債権者や検察官等が行います。申請は不在者の最後の住所(住民票がある場所)を管轄する家庭裁判所に申請し、収入印紙(800円分)、返信用の郵便切手、申立書、不在者の戸籍謄本、戸籍の附票などの資料が必要です。

適切な不在者財産管理人の選任するためには数ヶ月かかりますので、早めに申請の書類を出しておく必要があります。不在者財産管理人は弁護士や司法書士など法律の専門家が候補者となり選任される事例が多いです。弁護士や司法書士は第三者として業務を行うため、報酬の支払いが必要です。報酬は不在者の財産等から支払われることになりますが、不在者に財産がない場合は申立人が予納金を納めることになります。予納金から事務手数料などについて必要に応じて支払われ、残っている場合は返還されます。財産管理人は年に1回、定期的に財産の状況について家庭裁判所に報告する義務があります。

一方で行方不明から7年以上経過している場合は、失踪宣告の申立てが可能です。失踪宣告が認められると法律上は死亡した扱いになると定められているため、遺産分割協議に参加する必要はありません。失踪から7年経過している場合は上記の不在者財産管理人よりも簡単に手続きを進められるため、失踪宣告の申し立てを行ったほうがよいでしょう。

不在者財産管理人が行える行為

不在者財産管理人が行うことができる行為にはどのような内容のものがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

財産の保存と管理行為

不在者財産管理人の役割は民法27条で定められています。不在者財産管理人は不在者の所在がわかるまで、財産を保存する権限と義務を有します。また、選任された後は財産目録を作成し、家庭裁判所に提出する必要があります。

例えば、賃貸不動産を所有している場合は、不在者財産管理人の職務として判断し、賃料の回収や修繕など、本人の利益となるように、本人が有する権利に基づいて管理・運営を行う必要があります。一方で不在者財産管理人には処分行為は認められていませんので、不動産を売却することはできません。

遺産分割協議は家庭裁判所に権限外行為許可の申立てが必要

遺産相続をする際の遺産分割協議は本来の不在者財産管理人の権限には含まれておりませんので、別途申立てが必要となります。権限外行為許可を申し立てるには家庭裁判所に収入印紙(800円分)、申立書、遺産分割協議の案を提出する必要があります。

遺産分割協議の案は不在者が正当に財産を得る内容のものであることが条件となります。そのため、関係が希薄である等の理由で、相続放棄をしたり、法定相続分として受け取る権利を大きく下回るような配分にするなど、不当に不利益を被るような内容とすることはできません。

相続人の中に行方不明者がいる場合は専門家に相談を

民法で定められた相続人の中に行方不明者がいる場合は、生前に遺言を作成しておくなど対策を検討しておく方がよいでしょう。

相続が発生してしまった場合は早期解決のために、弁護士や司法書士など業務として本人の代わりに手続きを行ってくれる専門家に相談し、必要に応じて不在者財産管理人の手続きを進めるようにしましょう。また、相続が発生すると、まず被相続人の財産を調査することをおすすめします。被相続人の財産の中に多額の借金があった場合、しっかりと放棄をしておかないと後でトラブルになる可能性が高いです。

借金がある場合でも預貯金、有価証券、土地・建物、金などの所有するプラスの財産が多い例もあるため、先に承継する各財産をまとめて一覧を作り、状況を可能な限り確認しておくようにしましょう。特に不動産が多数ある場合は取得する不動産ごとに評価をするのに時間がかかることも多いので注意しましょう。

金融資産については通帳や金融機関からの郵送物で残高を確認し、不動産については登記事項証明書を確認するようにしましょう。

また、財産の額が基礎控除以下であれば、相続税について考慮する必要はありませんが、基礎控除を超える財産を保有していた場合、亡くなってから10ヶ月以内に相続税の申告が必要です。もちろん自身で申告することも可能ですが、相続税の申告は計算方法が複雑で、知識がない人が行うことは容易ではありません。

相続税の申告が必要な場合はあわせて税理士にも相談を進めるようにしましょう。相続税の申告を依頼する際は、相続税や相続税に関連の深い贈与税の申告実績が豊富な税理士に依頼することをおすすめします。誤った申告をした場合、税務署から加算税を請求される可能性があります。費用はかかりますが、税理士に支店してもらうことで税務調査に入られても安心して対応を進めることができるため、相続人の負担を減らすことができるというメリットがあります。

知人に紹介してもらうことが難しい場合はホームページなどで業務内容を確認するとよいでしょう。初回の相談はサービスで無料で応じてくれるケースも多いので、まずは電話などで気軽に問い合わせてみるとよいでしょう。

相続発生後は遺された家族は金融機関の名義変更や、不動産の登記など、短い期間の中でほかにもやるべきことは多いです。特に行方不明者がいると問題も多く時間がかかるので、早めに手続きに着手するようにしましょう。