次々に相続が発生した場合に利用できる相次相続控除とは?

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次々に相続が発生した場合に利用できる相次相続控除とは?

相続が起きると相続人は相続税の申告を行い、相続税を支払う必要があります。しかし、相続税は代々引き継いだ資産に対し、何度も相続税がかかるため、何重にも課税を行っており、財産を失ってしまうという理由で批判されることもあります。

特に短い期間で相次いで亡くなり財産を引き継いだ場合、多額の税額を短期間で何度も納める必要があります。そのため、短期間で相続が発生した場合、税額を一部控除できる「相次相続控除」という制度が設けられています。

当記事では相次相続控除の概要や控除額の算出方法について解説します。

相次相続控除とは

相次相続控除とは、次々に相続が発生し、財産を承継した場合に受ける税負担を軽減するために、被相続人が亡くなって後に10年未満の時期に相続人に相続が開始した場合に税額を軽減することができる特例です。例えば、父や母から財産を受けた一次相続のあとすぐに子が亡くなって二次相続が発生した場合などが考えられ、税金が一定額を差し引くことができます。

相次相続控除は経過年数に応じて1年に10%の割合で逓減されます(1年未満は切り捨て)。そのため、1回目の相続発生からすぐに亡くなれば亡くなるほど、大きい控除額となります

例えば、1回目の相続から5年後に次の相続が発生した場合は50%免除されます。単純に税額から50%免除されるのとは異なり、非常に複雑な計算が必要です。計算方法については後ほど解説します。

ただし、前回の相続の時に相続人が相続財産を受け取り相続税を支払っていることが条件ですので、遺産を放棄をしたケースや財産を配偶者が相続し、税額控除を適用したことにより、財産を取得したものの相続税の課税価額が0円で税金を納付していない場合、小規模宅地の特例の適用によって税金が0になるケースは適用することができません。協議が終わっておらず財産が未分割の場合は法定相続分で分けたものとして適用し、税金を納めることも可能です。

一般的に利用できることが多い事例としては兄弟姉妹間の相続です。兄弟間の相続では年齢が近いうえに配偶者控除などの特例で納める税金が0になることはありません。兄弟間で相次いで相続が発生し、相続税がかかる場合は、相次相続控除を利用することが可能か、要件を確認してみましょう。兄弟間の相続の場合、相次相続控除を使用することで結果的に相続税を大きく減らすことができる例も多くあります。

相次相続の計算方法

条件を満たした場合、相次相続控除が適用できます。相次相続控除の計算方法は国税庁のホームページに記載されています。

計算式は以下の通りです。

A×C/(B-A)(求めた割合が100/100を超える場合は100/100とする)×D/C×10-E)/10

A:今回の被相続人が前の相続の際に課せられた相続税額
B:今回の被相続人が前の相続の際に取得した純資産価額
C:今回の相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額
D:今回の相続人の純資産価額
E:前の相続から今回の相続までの期間(1年未満は切り捨て)

見ていただくとお分かりの通り、相次相続控除は上記のように複雑な算式で計算が必要なうえ、前の相続の際に支払った税金などの情報も必要となるため、内容を確認し、計算することは簡単ではありません。国税庁のホームページを参考に必要な数値をあてはめて計算することで実際に納める金額を計算することはできますが、相続税法に詳しくない人が自分で対応することは難しいでしょう。

実際に利用する場合は申告の際に相続税の申告書第7表を添付して申告することとなりますが、計算ができず断念する人も多いですし、一定の控除を利用できることに気づいていない人も多いでしょう。

相続税の申告は税理士に相談を

相続が発生したら、まずは、金融資産や不動産などの財産をまとめて一覧にしてみましょう。財産を一覧にして、積極財産から債務を差し引いた純資産が基礎控除を超える場合は相続税の申告が必要です。

相続税の申告は複雑でかつ、被相続人が死亡した翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。葬式などで忙しい中で、課税対象の財産の評価や計算は知識がない人にとって、短い期間で申告書を作成し、税務署に提出することは簡単なものではありません。遺言書がない場合、書類を作成するなどの手続き面だけでなく、相続人全員で行う遺産分割の話し合いに時間がかかることも多くあります。

申告を怠ったり、延滞したりすると税務調査が行われ、加算税を請求され、通常よりも多い金額を納税することになる可能性もあります。自分で申告を行うことが難しい時は早めに、税の専門家である税理士に相談することをおすすめします。

税理士にも専門分野がありますので、相続税や贈与税の申告実績が豊富で特例や控除などの制度にも詳しい税理士事務所・税理士法人に依頼すると安心です。税理士に申告を依頼する場合は、費用がかかります。財産の合計によって金額が決まることが多いので、初回の相談では、財産が分かる資料を持っていくと、費用のシミュレーションもできますのでスムーズに相談できるでしょう。申告期限ぎりぎりになると税理士のサポートを受けても間に合わない可能性がありますので、まずは気軽に相談し、状況を説明するようにしましょう。

また、生前に相談することで、さまざまな対策を打つことも可能です。遺産として分けることが難しい土地などの財産を売却をしたり、相続税対策としての生前贈与、生命保険の非課税枠の活用、事前に遺言を作成したりすることも考えられます。先に節税や配分に対する各種対策を講じておくことで、同じ財産でも相続人も手続きをしやすくなりますので、負担を減らすことができるでしょう。