小規模宅地の特例とは?税理士が分かりやすく解説!

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小規模宅地の特例とは?税理士が分かりやすく解説!

相続税にはさまざまな理由で税金が優遇される特例があり、特例をうまく活用する等の対策を講じることで、相続財産の評価額を減額することができ、相続税の負担を大きく減らすことができます。

一般的に利用する人が多い特例が小規模宅地の特例です。小規模宅地の特例は土地の評価を減額できる特例ですが、居住用、事業用、特定同族会社事業用、貸付事業用、と対象不動産によって別れており、複雑な制度となっています。今後税制改正が行われる可能性もありますので、正しい情報を得て、要件をしっかりと理解しておく必要があります。

当記事では、小規模宅地の特例の概要と注意点、利用可否の判断のポイントをまとめて解説しますので、参考にしてみてください。

小規模宅地の特例とは

小規模宅地の特例は4つ種類に分かれています。次にそれぞれの控除額や要件を確認しておきましょう。

特定居住用宅地

特定居住用宅地の特例は住居として使用している自宅の土地・建物を配偶者や配偶者が既に死亡しているケースで、同居しており生計を一にしている家族や自宅不動産を相続開始前3年間保有していない親族(家なき子)などが取得した場合などに適用できる特例です。相続する人によって特例を利用できるかどうか異なるため、遺産分割の際は、所有する財産の一覧を作成し、特例も考慮して配分を決めるようにしましょう。

土地の評価額に対して最大330㎡まで80%評価を減額することができるうえ、自宅不動産の承継に利用できるうえ適用できる面積、減額幅も大きいため、多くの人が利用しています。自宅の土地が330㎡以上の土地を所有している場合でも、330㎡を超える部分は通常の評価額となりますが、限度である330㎡以下の部分について一定の減額を受けることが可能です。東京など土地の値段が高いエリアの場合は減額のメリットも大きくなるでしょう。

特定居住用宅地の特例を利用するためには、被相続人が直前まで住んでおく必要がありますが、被相続人が有料老人ホームなどに入居し、家を離れていた場合でも要介護認定や要支援の認定を受けて、介護を目的として自宅とは別の老人ホームなどの施設に入居して生活をしていた場合は特例を利用することができます。

特定事業用宅地

貸付事業以外の事業用の宅地として利用していた土地の場合、最大400㎡まで80%減額することができます。事業用宅地の特例を利用するためには、事業用の宅地で運営されていた事業を相続した者が引き継ぎ、申告期限まで運営していることが条件となります。

特定同族会社事業用宅地

特定同族会社事業用宅地として利用していた土地は最大400㎡まで80%減額することができます。

特定同族会社事業用宅地は法人の発行済株式総数または出資額の50%超を被相続人とその親族で保有している会社が保有している土地に適用されます。特定事業用宅地と同様に、申告期限まで事業を継続していることが条件となります。

貸付事業用宅地

賃貸アパートなどの貸付事業用宅地として利用している場合は最大200㎡まで50%減額することができます。貸付事業とは不動産貸付業や駐車場などとして利用されている土地のことで、事業宅地、特定同族事業用宅地と同様に申告期限まで事業を継続していることが条件となります。

小規模宅地の特例を利用する際の注意点

小規模宅地の特例を利用する際はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

配分によっては特例を使うことができない場合もある

小規模宅地の特例は条件を満たしていても、相続する人によって、利用できなくなる可能性があります。遺言書がない場合は、相続発生後に配分を決める必要がありますので、相続税がおおくかかる配分とならないように注意する必要があります。

また生前に遺言を作成することで、配分を決める必要がなくなり、簡単に手続きを進めることができます。相続人の数が多い場合や特定の人に生前贈与などを行っている人は、相続人間で大きな不公平が生じる可能性もあるので、いずれ発生する相続にそなえて遺言の作成を検討してみてもよいでしょう。

小規模宅地の特例は申告が必要

小規模宅地の特例を使って、節税をするためには、財産を受ける法定相続人が相続税の申告を行う必要があります。申告書や土地の権利関係の書類や戸籍謄本や印鑑証明書や戸籍謄本、戸籍の附表などの資料を添付して税務署に提出する必要があります。また、特例を利用することで、納税する相続税額が0円になる場合も、財産の総額が基礎控除(計算式;3,000万円+法定相続人×600万円)を超えている場合は申告が必要となります。条件を満たす場合でも、該当する不動産が自動的に減額されるわけではありませんので、注意が必要です。もし、申告を怠った場合は税務調査で税務署から指摘され、加算税を請求される可能性があります。

相続税の申告期限は被相続人が亡くなってから原則10ヶ月以内と短いため、相続発生後は相続人で預貯金や株式、不動産など財産の配分方法や取得する割合を全員で協議し、金融機関の名義変更や登記などの手続きも急いで対応を進める必要があります。

知識がない人が自分で進めることは簡単ではありません。忙しい中での手続きとなりますので、10ヶ月以内に自分で申告書の作成や課税対象の財産の評価額の計算、特例を使うための書類の準備を行うことが難しい場合は、税務の専門家である税理士に依頼するようにしましょう。

税理士の紹介を受けることが難しい場合はホームページなどで相続税を専門に扱っている税理士事務所・税理士法人を探すようにしましょう。

家屋は減額することができない

小規模宅地の特例はあくまで土地の評価を減額できる特例で、家屋は特例の対象外となります。そのため、不動産全体の評価を減額できるわけではありません。

相続税評価は土地は国税庁のホームページに記載されている路線価図、建物は固定資産税評価額で計算することができます。親などから相続する予定の不動産がある場合、現在の評価額について土地と家屋をしっかりと分けて把握するようにしましょう。相続税の総額や税率を計算をするためには他の資産も合計し、使える特例も把握してシミュレーションをしておく必要があります。

申告期限までに売却した場合、特例を利用することができない

小規模宅地の特例は相続した後、居住用や業務用として相続税の申告期限までは保有し続ける必要があります。相続が発生した時にすぐに売却してしまった例では特例を適用することができませんので、少なくとも相続税の申告期限までは保有するようにしましょう。

マンションでも利用可能

小規模宅地の特例は土地に対して利用できる特例ですので、マンションなどの区分所有権については利用できないと考えている人もいますが、マンションにも敷地として土地部分があるため、戸建ての場合と同じで保有している土地の面積に応じて小規模宅地の特例を利用することが可能です。