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孫への生前贈与は持ち戻しなし?孫に贈与を行うメリットと注意点を税理士が解説!

2024年02月07日

基礎控除を超える財産を保有している人は相続税対策の一環として生前贈与を行う人も多くいます。2024年には贈与税の改正もあり、2023年以前より工夫して贈与を行う必要が出てきました。当記事では、税制改正に関する情報や孫への生前贈与を中心に贈与についてポイントをおさえて解説していきますので参考にしてください。

贈与税改正により生前贈与の持ち戻しが7年に延長

1月1日から12月31日までの贈与に課される暦年贈与には持ち戻しというものがあり、2023年までは相続発生前3年以内に贈与をした金額は、遺産として相続税の課税対象の計算に含まれるというものがあります。この制度は2024年には贈与税の持ち戻し期間が亡くなる前3年から7年に延長されました。今回の改正により、持ち戻し期間が延長されましたので、暦年贈与で贈与を行う場合、より若い時期から贈与を始めないといけなくなったといえるでしょう。

ただし、相続税の持ち戻しは相続人など相続財産を受け取る者が受けた贈与に限ります。そのため財産を受け取らない孫や子の配偶者等は相続開始7年以内に生前贈与を受けていた時でも持ち戻しの適用はありません。110万円を超える贈与を行う場合は贈与税の申告が義務となりますので注意しましょう。

また、相続時精算課税制度には1年間で110万円までの非課税枠が新設されました。最初に贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに相続時精算課税制度を利用する旨の届出を税務署に提出する必要がありますが、翌年以降年間110万円以下の贈与であれば毎年届け出る必要はありません。相続時精算課税制度は贈与時点での評価額で相続税の税額の計算を行うため、将来値上がりが期待できる資産の贈与に活用されていました。

改正により非課税枠に加え、非課税枠以内なら毎年申告の手間がいらなくなりましたので相続時精算課税制度は大幅に利用条件が改善され、今後利用を選択する人が増えることが予想されます。

孫に贈与を行うメリット

孫に贈与を行うことでどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

一代飛ばしで資産を移転できる

代襲相続せずに通常通りに親から子、子から孫へと順に相続で財産を遺すと2回相続税がかかってしまいます。祖父母から孫へ贈与を行うことで、一代飛ばし資産を移転することが可能です。代々守っている事業や土地などがある場合で必ずしも子ども財産を引き継ぐ必要がないなら、被相続人の子どもは相続放棄を行って、孫に相続させる方法も有効です。できるだけ下の世代に財産を移転することで、何度も相続税の負担がかかることを防ぐことができるという理由で相続税の額を減らすことができます。

ただし、養子縁組をしており、法定相続人として財産を取得する場合や遺言を書いて孫に財産を相続させると生前に暦年贈与をした場合の持ち戻しの対象となってしまい、孫に贈与をした資産も持ち戻されてしまいます。また、孫に相続させる場合は2割加算の対象となります。その分税金が高くなりますので、自身の財産の場合どのように遺贈をするのがよいのか、財産をまとめて一覧にし、シミュレーションを行って慎重に検討してから手続きなどの対応するようにしましょう。

財産が多い場合、110万円を超える金額を贈与した方が有利な場合もあります。110万円を超える贈与を受けた人は翌年の2月1日から3月31日までの間に贈与する必要がありますので注意しましょう。

住宅用不動産や教育資金などの場合、特例を利用することができる

贈与者と受贈者との関係や年齢、資金使途によって要件を満たせば税金が控除される特例がいくつかあります。

例えば、直系尊属から子や孫に贈与をする際は居住用の不動産を購入する場合は最大1,000万円贈与をすることが可能です。また、祖父母や父母から子や孫への結婚・子育て資金の贈与なら1,000万円まで非課税で贈与をすることも認められています。

他にも塾や学校、大学入学のための費用や学費、習い事など教育費に該当する場合は最大1,500万円まで一括で贈与をすることが可能です。教育費の贈与は直接、孫名義の口座に振り込むのではなく、金融機関で贈与契約の書類を作成し、特定の口座を開設し預け入れる必要があります。18歳以上になると本人が自分で手続きを行いますが、未成年の間は親権者が引き出しを行うことになりますので、普段から利用している金融機関に教育資金の贈与について取り扱いを行っているか確認してみましょう。贈与した資金は30歳までに使いきる必要があります。

贈与したお金の用途は限られていますが、課税されずに大きな資金を一度に承継することができるため、大幅に相続税を減らせるケースも多くあります。

多くの人に贈与ができる

資産家の方が贈与税の基礎控除の範囲内で年間110万円ずつ贈与をする場合、財産を減らすまでかなり時間がかかります。資産によっては少し贈与税を支払ってでも贈与を行っていった方がメリットが出るケースもあります。

例えば、子供だけでなく、子供の配偶者や孫を含めることで、人数×110万円の合計金額を毎年贈与することができます。

贈与をする相手は1人でも多い方が低い税率で早く財産を移転することができますので、孫を受贈者の一人に入れることで多く贈与をすることが可能です。

孫に生前贈与をする場合の注意点

孫に生前贈与をする際はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。孫に贈与をするデメリットについても具体的に確認しておきましょう。

財産配分が問題となるケースがある

生前贈与によって節税対策としては高い効果がありますが、孫の数に差があった場合、不公平が生じ、トラブルとなるケースがあります。

例えば、長男には子供が二人、次男には子供がいないケースで、長男の子二人に祖父母から1,500万円ずつ教育資金贈与を行った場合、家単位でみると長男一家は次男一家よりも3,000万円を多く受け取ったことになります。贈与と相続する財産の評価額に大きく差がでると亡くなってから揉めるケースもあります。

最悪のケースでは相続人同士では折り合いがつけられず弁護士を交えて家庭裁判所で調停を行うこともあります。いくら税金の負担を減らせても、揉めることは避けたいものです。贈与を行う際は税金だけのことを考えるだけでなく、取得する配分や金額も考慮して行うようにしましょう。相続が発生した後に相続人間の関係が悪化することを回避できるように、財産の配分割合を決め、遺言書を作成するなど方針を定めておくようにしましょう。

孫が若いうちに大金を手にする

孫に贈与を行った資金は18歳になり成人すると孫が自分で預金を引き出せるようになります。毎年非課税枠の範囲で贈与を行っていたとしても2,000万円近くの現金を手にすることになり、教育上悪影響を及ぼす可能性もあり、一般的には慎重になる人も多いでしょう。

しかし、通帳や印鑑を本人が手の届かない範囲で贈与者が保管していた場合は税務調査で名義借りをしていると指摘される可能性があります。贈与をした場合はそれぞれの孫に財産の管理を任せる必要があります。贈与した以上、強制することはできませんが、一定期間引き出しができない生命保険や一定期間経過後定期的に給付されるような商品を契約することで、結婚や子育てでお金がいる年齢の時に生活費として使うことができます。気軽に出金できなくしておくというやり方も選択肢の一つとなります。

相続や贈与に関するお悩みは税理士に相談を

財産の評価額の合計が基礎控除を超える財産を保有する人が亡くなった場合、相続税の申告を行う必要があります。

国税庁のホームページにルールや書類の書き方は記載されていますが、相続税や贈与税の計算は非常に複雑で、誤った申告を行って加算税を請求されるケースもあります。また、相続税は被相続人が死亡した翌日から原則10ヶ月以内に申告と納税が必要であり、期間も短く、不動産の登記や金融機関の名義変更も同時に行う必要があるめ、自分で行うことが難しいと感じる方も多いでしょう。

期限内に自分で申告をすることが難しい場合は税務の専門家である税理士に相談してサポートを依頼することをおすすめします。ただし税理士にも得意分野がありますので、普段から相続税の申告を行っている税理士事務所・税理士法人に支援を依頼すると安心して進めることができるでしょう。

また、上記のとおり、生前に相談することで、遺言書の内容や節税対策について、様々な手段について相談することが可能です。相続発生直前に相談するよりは若い時に相談し、時間をかけて準備した方が、効果的な対策を行いやすくなるので、実際に家族が支払う税金を減らすことができるでしょう。

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