被相続人が保有する財産には不動産や上場株式等さまざまな種類の資産があり、それぞれ、贈与税や相続税の計算をする際の評価方法が定められています。評価額の計算方法について正しい情報を得ていないと相続税の計算も間違ってしまいます。
当記事では近年保有する人が多くなっている投信の評価の方法について解説します。
投資信託の評価方法
投資信託は株式や債券、不動産、金などに投資をし、小口の受益証券として、投資家が購入できる金融商品です。さまざまな投資対象に数万円の少額で簡単で気軽に投資ができるため、比較的初心者向けの商品といえるでしょう。現在ではインフレ対策となるメリットがあるうえに、決算の時に分配金が受け取れるものもあり、銀行や証券会社など多くの金融機関で取り扱いがあります。株式以外の資産運用の選択肢の一つとなっており利用する人も増えています。
投資信託には一般的な投資信託とETFや不動産に投資を行うJ-REIT(不動産投資信託)のように会社型で投資信託自体がで上場しているケースがあります。それぞれに分けて評価額の計算方法を解説します。
一般的な投資信託の評価方法
一般的な公募型の投資信託は投資を行っている銀行や証券会社で手数料を払い、贈与や死亡日時点の残高証明を発行してもらい、記載されている基準価額×口数でかけかわせて計算を行います。基準価額とは投資信託を売買する際の評価額のことで、毎日更新されます。
評価額から信託財産留保額と言われる解約時に差し引かれる控除額と信託財産留保額とは別に売却時に源泉徴収で課税される所得税(利益×20.315%)も差し引くことができます。
概算で評価額を求める場合は、投資信託の運用を行っている運用会社のサイトの中でも基準価額が公表されており、確認することができますので、保有口数を確認し、計算してみるとよいでしょう。
上場投資信託の評価方法
上場投資信託の評価方法も基本的な考え方は一般の投資信託と同じです。贈与や相続時の基準価額×口数で計算を行います。基準価額は以下の4つのうち最も低い価額で計算をすることができます。
①相続開始日の終値
②相続開始日の月の終値の平均価額
③相続開始日の前月の終値の平均価額
②相続開始日の前々月の終値の平均価額
上記の通り、保有している銘柄のうち一番低い価格と口数を掛け合わせて相続税評価額を確認します。相続開始日の口数については取引を行っている証券会社でお客様向けのコールセンターなどに電話をし、残高証明書を発行してもらうとよいでしょう。
投資信託を保有している場合の注意点
投資信託を保有している場合、相続の手続きにあたってどのようなことに注意をすればよいのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。
相続財産の価格が日々変動する
投資信託は国内外の株式や債券などに投資をするため、現金と異なり相場によって毎日解約した時の価格が変動します。解約したタイミングによって受け取る金額が変わりますので、場合によっては遺産分割協議などの対応をやり直す必要があるかもしれません。
相続が発生した後に価格が暴落した場合は、相続税の計算上は高い評価額で計算を行いますが、実際に受け取る際の評価額は大きく落ちているということもあり得ます。場合によっては換金しても納税資金が不足する場合もあるでしょう。
同じ金融機関で取引する必要が生じる場合がある
投資信託や上場投資信託はその商品を取り扱っている金融機関でしか保有することができません。そのため、自分の取引がある金融機関で取得した商品を取り扱っていない場合、その商品を扱っている金融機関で口座を開設する必要があります。
税金の申告は税理士に相談を
今回は投資信託の評価方法について解説しましたが、相続税の計算をするためには、有価証券だけでなく、土地や建物など課税対象となる各財産を評価したうえで一覧の表にし、複雑な計算式で計算を行う必要があります。また、特例制度も複雑で、知識がない人は適用できるか迷う場合も多いでしょう。
相続の場合は相続開始から10ヶ月以内に必ず申告と納付をする必要があるため、時間もあまりかけることができません。もし申告を怠った場合、税務署から税務調査を受けて無申告加算税を請求される可能性があります。
そのため、自分で相続税の税額の計算および書類の作成を行うことが難しい場合は早めに専門家として業務を行っている税理士事務所・税理士法人に依頼し、サポートを受けるようにしましょう。
被相続人が亡くなってからは、資料の作成などに時間がかかるため、なにかと忙しく、あっという間に時間が過ぎてしまいますので、できれば生前に財産をまとめて一覧を作成し、税金のシミュレーションを行っておくとよいでしょう。
不明点は、相続が発生する前に税理士に相談し解消しておくことをおすすめします。生前に検討しておくことで、遺言の作成など別の対策を検討することもできます。生前にしっかりと準備をすることで、相続人の負担を軽減することができるでしょう。