相続が発生すると相続税の計算を行うために、預貯金、株式、不動産、金等あらゆる資産の評価を行います。土地は路線価、建物は固定資産税評価額で行うなど、相続税評価基本通達に基づいて一つずつ評価を行う必要があります。
自身で事業を行っており、未上場で取引相場がない株主となっている場合は、株の評価額を計算する必要があり、更に複雑な作業が必要となります。
非上場の自社株の評価をするうえで一つの方法となるのが、純資産価額方式です。株価を求める方法には他にも類似の業種を参考に評価を行う類似業種比準方式などがありますが、当記事では純資産価額方式で評価を行う場合の注意するべきポイントについて解説します。
純資産価額方式とは
純資産価額方式とは評価する会社の資産から負債を差し引いた後、法人税額等相当額を控除した金額を評価額とする方式です。法人税額等相当額は相続税評価額による純資産価額から帳簿価額による純資産額を差し引いたのちに42%をかけて計算します。
預金や不動産など資産性のあるものから借金などの負債を差し引いて、現在の価値とすると考えるとよいでしょう。
純資産価額方式で評価をする場合の注意点
純資産価額方式で評価をする場合の注意点について解説します。
財産性のない繰延資産は計上しない
事業を始める際に既に支払った開業費など繰延資産のなかには前払費用として支払い済で財産性のないものも存在します。財産性のないものは資産として計上する必要はありません。ただし、廃業等で返還金が等が支払われる場合は、返還金は資産に含まれます。
固定資産税は負債に計上する
固定資産税の賦課期日のあったもので、未払いのものは負債として計上することができます。
未払いの税金等は負債に計上する
課税時期に属する事業年度のもので、未払いとなっている法人税、消費税、事業税などは負債に計上することができます。
被相続人の死亡より支給が確定する退職手当金等は負債に計上する
被相続人の死亡により退職手当金や功労金は負債に計上することができます。ただし、退職給与引当金、納税引当金等の準備金は負債に含めることができません。
自社株の評価は税理士に相談を
相続開始から10ヶ月以内に相続税の申告書を作成し、納付を完了させる必要がありますので、まずは財産を一覧の表にまとめて、財産の合計額を確認してみるとよいでしょう。
相続で取得する財産の中に親等が経営する会社の自社株がある場合、評価額を確認する必要があります。自社株の株価の評価はさまざまな方式があり、課税される金額を求めることは簡単ではありません。
自社株の評価について不安がある場合は税理士に相談するようにしましょう。また、被相続人が亡くなる直前まで法人の代表を務めていた場合、所得があるはずですので、死亡から4カ月以内に準確定申告を行う必要があります。相続発生後は何かと忙しいので、あっという間に時間が過ぎてしまうでしょう。
自社株がある場合は、業種や規模によって評価方法も異なり、通常、個人が所有している土地や建物、預金や生命保険の保険金などよりも評価が複雑となりますので、税務の専門家である税理士に相談することをおすすめします。自分で計算を行い、税額を間違った場合、税務署から調査を受け、加算税を請求される可能性もあります。
相続が発生した後に依頼することもできますが、資産が多い場合は相続が発生する前の早い時期から税額を確認し、特例や控除の適用が認められるかの判断や節税の方法についてアドバイスを受けるようにしましょう。