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このままだと二次相続で負担が大きくなる!遺言書通りに財産を分けなくても大丈夫?

2024年11月02日

相続が発生し、遺言書がある場合、基本的に遺言書通りに財産を配分することになります。

しかし、遺言書通りに分けることで、一次相続と二次相続のトータルで考えるとかえって相続税が高くなることが発覚した例でも遺言通りに分けないといけないのでしょうか。

当記事では一次相続・二次相続の概要や相続税額の考え方、遺言書とは異なる分け方をする方法や注意点について解説しますので参考にしてください。

一次相続・二次相続とは

夫婦のうち一方が先に死亡するタイミングを一次相続、もう一方が死亡するタイミングを二次相続といいます。一次相続の際は配偶者控除を適用することができ、配偶者が相続する場合は法定相続割合か1億6,000万円以下であれば相続税はかかりません。

また、基礎控除の金額(3,000万円+法定相続人×600万円)や生命保険の非課税枠(法定相続人×500万円)となる保険金の金額も大きいため、税負担がそこまで大きくないことも多いでしょう。

一方でいずれ発生する二次相続では一次相続で引き継いだ財産も含めて増加した財産に対して相続税がかかることや、相続人の数が1人減るため、相続税の負担が大きくなる可能性があります。一次相続で配偶者にすべて遺す内容となっている場合、一般的に一次相続では納税は必要ないケースが多いですが、実際に二次相続で多額の税金がかかることもあります。最大限配偶者控除を利用することで一次相続ではかかりませんが、一次相続受け配偶者が財産を取得している分、税率も高くなることが多く、一次相続と二次相続の合計の額は高くなる傾向があります。

相続で引き継いでから子や孫にそれぞれ暦年贈与による贈与税の基礎控除の範囲で毎年、年間110万円ずつ贈与を行うことも可能で、節税効果も高い方法です。しかし、高齢となってからの対策では相続が開始する前に生前贈与で大きな金額を渡すことができないケースが多いでしょう。そのため、相続税を減らすことができる部分も少なくなってしまいます。

遺言書の内容は変更可能?

生前に作成された遺言書で、配偶者にすべて遺すという内容が書かれていた時に、その後で遺言書通りにわけることで、二次相続の税金が大幅に上がることに気づくこともあります。

相続が発生した後で、被相続人が作成した遺言とは異なる内容で遺産を配分することはできるのでしょうか。

結論としては、遺言書通りに必ずしも分ける必要はありませんが、遺産を相続する権利がある者全員で合意し、遺産分割協議書を作成する必要があります。

例えば、父が亡くなった時に母に多く財産を遺すという内容であったとしても、銀行預金などで親の資金が十分に確保されており、現金を引き継ぐ必要がない場合は話し合いのうえ、母は相続放棄を行って、子どもに多く遺産相続させるということができます。生活資金に問題がない場合は今後値上がりが期待できる財産や収益を生む物件等は子供など次の世代の人が受けるようにし、財産が加算されていかないようにした方が税金上は有利です。

相続税のシミュレーションをしておくことが重要

相続税の計算は非常に複雑です。また、同じ相続財産でも法定相続人の人数や配偶者控除や二世帯住宅などで同居の場合は小規模宅地の特例などの活用状況によって実際の税額は大きく異なります。

そのため、一次相続の分割の際に二次相続を踏まえて分け方によってどれくらいの違いがでるか相続税のシミュレーションをしておくことが重要です。資産の状況によっては一次相続の際にあまり配偶者が財産を引き継がずに子供が相続した方が良いケースもあります。

相続税のシミュレーションをするためには、現段階で所有する土地や建物など不動産や預貯金、株式含めて課税対象の相続財産をすべて評価し一覧の表にする必要がありますし、小規模宅地の特例などメリットの大きい特例を利用する条件を満たすか確認することや配偶者居住権制度の利用し、配偶者が自宅に居住し、生活を続けながら自宅の所有権を子供に移すこともできますので検討してみてもよいでしょう。一次相続と将来の二次相続を踏まえて計算するためには両親の財産の総額を把握しておく必要があり、有効な対策を打つことができます。ただし、今後の税制改正などによって要件が変わってしまい、特例を使えなくなる可能性がありますので、改正の情報を確認しておくことも大切です。

相続人全員が合意できるのであれば、必ずしも法定相続分通りに配分を行う必要はありません。どのような配分をすれば節税につながり、家族の納税負担を軽減できるか検討して分け方を決めたうえて手続きを進めることが重要です。

相続発生時点で課税対象となる相続財産が基礎控除を超える場合は相続税の申告が必要です。相続税は複雑で、慣れない人が計算することは簡単ではありません。また、相続税の申告は相続発生から原則10ヶ月以内と期限が定められており、税務署に書類を提出する必要があります。

期間も短いため、自身で対応することが難しい人は早めに税務の専門家である税理士に相談し、サポートを受けることをおすすめします。専門家に依頼することで、税務調査やトラブルにも対応することが可能です。

初回の相談は無料で応じてくれるケースが多いです。申告を依頼する場合の費用は相続財産の内容によって決まることが多いので、被相続人が所有していた財産に関する資料を持っていくとスムーズに相談するができ、安心して進めることができます。

税理士に依頼する際は業務として相続税の申告実績が豊富で、知識と経験のある税理士事務所・税理士法人に依頼しましょう。知り合いに紹介してもらうことが難しい場合はホームページで探し、気軽に電話やメールで質問してみるとよいでしょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい