親などが亡くなると、保有していたすべての被相続人名義の財産を民法で定められた法定相続人が分けることになります。
相続を受ける財産の中には自分で使わないものもあるでしょう。代表的な例が親が亡くなる直前まで住んでいた実家の土地・建物です。両親が亡くなり、実家を空き家として遺産相続した場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
当記事では自分が住まない実家を相続した場合の対応方法や注意点について解説します。
実家をそのまま放置するデメリット
対応方法について解説する前に実家をそのままにしておくデメリットについて解説します。まず、建物の老朽化や雑草が生えたり、害虫が発生したりするなど維持管理の手間がかかるという問題があります。実家など引き継いだ不動産をそのまま放置しておくと建物が老朽化してしまい、場合によっては管理が不十分で台風で屋根が飛ぶなどの災害の時に建物の倒壊などで近隣に被害がおよぶ危険性があります。
建物を放置していると自治体などで所有者に状況を確認し、注意される可能性もあります。不動産の管理が不十分であることが原因で他人に損害を与えた場合、所有者が損害賠償請求をされる可能性もありますので、注意が必要です。
また、不動産を保有し続けると、毎年固定資産税がかかります。建物を修繕するとその分の費用もかかります。不動産を保有し続けるということは負担が大きいものです。
実家を引き継ぎたくない場合は、相続放棄をすることも可能です。相続放棄は相続発生から3ヶ月以内に家庭裁判所で申請することで、初めから相続人ではなかったことになります。相続人ではなくなることで、相続に関するトラブルから回避することができます。
相続放棄をすると実家を引き継ぐ権利も維持・管理する義務も失いますが、他の遺産も一切引き継ぐことができなくなってしまうというデメリットがあります。借金が多い場合は有効な手段ですが一度、放棄をすると元に戻ることはできませんので慎重に検討して決めるようにしましょう。
全ての相続人が放棄を行い、相続人がいなくなった場合は最終的に国に帰属することとなります。
また、財産を相続した場合は、登記が必要となります。昔は登記は義務とはなっていませんでしたが、持ち主不明の土地が増えたこともあり、法改正により義務化されています。登記を行わなかった相続人には過料が課されます。
実家を相続した際の対応方法
実家を相続した際にどのような対処法が考えられるのでしょうか。具体的な対応方法について解説します。
売却する
実家を相続し、誰も住む人がいない場合は売ることも一つの選択肢となります。自宅の不動産がアクセスの良いエリアであれば、すぐに買い手がみつかり、売却して現金化することができるでしょう。売却を検討する場合は、周辺の売買事例も確認しておきましょう。
実際に売却を行う際は不動産の仲介をしている業者などに物件の査定をしてもらい、相場を確認しておくとよいでしょう。戸建ての場合、建物は老朽化しており、家として使うことが難しい場合は土地だけの価格となる可能性もあります。
ただし、思い出の詰まった実家を売りたくないという理由で売却に反対する親族もいるかもしれません。親族とも話し合って売却を検討するようにしましょう。
他人に貸し出す
賃貸の需要のある地域であれば実家を他人に貸し出すことも可能です。人に貸し出して使ってもらうことで、放置するよりも建物が劣化するよりも防ぐことができます。場合によっては簡単なリフォームが必要となる場合もありますが、状態が良ければ費用をあまりかけずに、他人に貸し出すことでリスクを抑えて収益を得ることが可能です。
他人に貸し出して活用する場合は、賃料を得られるというメリットはありますが、賃借人と後でトラブルに発展する危険性もあります。契約が問題となる可能性もありますので、不動産会社にしっかりとした契約書を作成してもらい、賃貸借契約を結ぶようにしましょう。
更地にして建物を立て直す
広い土地で賃貸需要も見込める場合は一度建物を解体し、更地にした後で居住用のアパートやマンションなどを建てて賃貸経営をするということも選択肢の一つです。
アパートを建てることで土地を運用して大きな収益を得られるうえに、次の相続が発生した時の相続税の圧縮効果も期待できます。自分が相続財産を引き継いだ時に税金が多くかかったのであれば、賃貸経営を検討してみてもよいでしょう。
ただし、建物を建てることで、多くの現金が必要となりますし、長期間賃貸経営をしていると予定した通りに収入が得られず、建築にかかった費用を回収できないリスクもあります。また、賃貸管理や毎年の確定申告も必要となり運営の手間もかかります。
建築費用がかからない駐車場などで運営するよりも、かなりコストがかかりますので、不動産投資のリスクが高くなることは理解しておきましょう。
所有している不動産の立地から、どのくらいの収益が見込めるか事前にシミュレーションを行って慎重に検討するようにしましょう。
遺言があるとスムーズに手続きができる
相続が発生すると、遺言書がない場合は相続人全員で遺産分割の協議を行い、誰が実家を相続するか決めてから不動産の登記等の手続きを行うという流れになります。
不動産を相続する際は複数の相続人で共有で取得することも可能です。亡くなった時は相続権を持つ者で共有で財産を取得した方が、スムーズに分割することができますが、財産を受けた後に処分するか、保有し続けるかで、それぞれの意見があわず、トラブルになり関係が悪化するケースも多くあります。
適切な配分を検討し、誰が何を取得するかを特定できるように先に遺言を作成して指定しておくことで、相続人同士で話し合って判断する必要がなくなります。そのため、トラブルを防ぐことができるでしょう。
遺言を作成する際は、財産の種類と評価額をまとめた一覧を作成することが重要です。一覧があることで相続人も手続きもしやすくなります。
相続手続きに不安がある場合は専門家に相談を
相続手続きは制度も複雑で、書類も作成する必要があります。また、相続人の心情にも配慮する必要がありますので非常に大変です。知識が無く慣れていない人が手続きを行うとトラブルになるケースも多いです。
相続手続きでお悩みがある場合は、時間が経過する前に弁護士や司法書士、税理士などのプロに相談することをおすすめします。特に相続が開始した時点の被相続人の財産が基礎控除以下であれば相続税の心配はありませんが、相続税の申告が必要な場合、相続発生から10ヶ月以内と短い期間で税務署に相続税の申告を行う必要があります。申告を怠った場合や、誤った申告をした場合、税務署の調査で指摘される可能性もあります。
相続税の計算は複雑ですが、特例などを申請することで税金の負担を大きく軽減することができます。例えば、自宅の土地を相続する時に利用できる小規模宅地の特例の条件を満たし、適用することで敷地の面積の最大330㎡まで80%土地の評価を減額することが可能です。
広島相続税相談テラスでは相続のノウハウを持つ税理士が多数在籍しており、皆さんの手続きをサポートしています。初回の相談は無料で対応しておりますので、自身で対応が難しい場合はお電話やメール等でお気軽にご連絡ください。