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法人を設立すると相続税の節税になる?メリットとデメリットを税理士が解説!

2023年09月30日

基礎控除を超える財産を保有する人が相続税対策をする場合、計画的に行う必要があります。

さまざまな情報を得る中で、相続税の節税のために法人を設立すると良いという情報を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。実際に法人の仕組みを利用することで、相続税の節税を行っている事例は多くあります。

しかし、相続税対策が目的で法人の設立をする際に生じるデメリットもしっかりと理解して判断する必要があります。当記事では法人を設立する際のメリットとデメリットを解説します。

法人を設立するメリット

資産家の方が自己の資産を管理するために会社設立するケースではどのようなメリットがあるのでしょうか。

家族を役員とすることで資産を移転することができる

個人事業主として行っていた事業を法人化し、所有している賃貸に出している不動産などから得られる収益が得られる資産を法人に売却し、家族を役員とすることで、事業から得られる収益を相続人に役員報酬として支払うことが認められています。不動産の収益は主に土地よりも建物から得られますので、建物だけを法人に譲渡し、取得させておくことで対価として受け取る資金は個人から法人から貸し付ける形とし、法人の債務とすればよいでしょう。

また、給与所得控除を適用することができるため、相続人を数多く役員に入れ、給与を受けることができる分、所得税面での控除のメリットも大きくなります。

役員は時間的拘束をする必要がありませんので、会社勤めをしている人も会社を辞める必要はありません。

法人を設立することで、直ちに遺産の評価額を抑えられるわけではありません。しかし、将来の収益をできるだけ次の世代に移転することで相続発生時の被相続人名義の課税対象財産が減っていきます。そのため、納税する額を抑えることが可能となります。

生命保険の保険料を全額損金算入できる

個人の場合、生命保険の保険料として支払った料金の生命保険料控除は最大12万円が上限となりますが、法人の場合、保険料は上限なく全額損金算入することができます。

法人の会計上の仕組みを活用することで節税効果を得ることが可能です。

収益に対して所得税ではなく、法人税が課税される

法人で得た収益は個人が得た所得に加算されることはなく、法人税の対象となります。個人の所得は累進課税ですので、所得が多ければ多いほど税率が上がっていきますが、法人税は累進課税ではありませんので、最大で23.2%です。

所得税が高い人であれば法人に財産を移転することで所得税の節税が可能です。

法人を設立するデメリット

税金上はメリットも大きい法人の設立ですが、法人を設立することでどのようなデメリットがあるのでしょうか。メリット以上にデメリットがある場合もありますので、注意するべき、重要な点について具体的に確認してみましょう。

会計の手間が増える

収益不動産などを保有する法人化することで、会社法にのっとった経営が必要となります。会計処理の対応が複雑化し、計算の手間が増えます。会計の知識がない人にとっては、継続的に運営することは大きな負担増となるでしょう。自分で経理処理をすることが難しい場合は、赤字の場合でも経理を行う人に給与を支払う必要があり、コスト増になってしまいます。

設立に費用がかかる

法人を設立する場合、資本金の準備や登記費用など、設立の手続きや不動産を法人に名義変更するために数十万円の経費がかかります。また、廃業する際も費用がかかります。無料でできるわけではない制度になっていることを認識しておきましょう。

株式の評価が複雑となる

法人を設立することで、不動産などの財産を法人に移転し、株式として評価することになります。取引相場のない、中小企業である自社株式の評価は不動産よりも複雑です。株主の相続発生後は何かと忙しい上に、10ヶ月と短い期限内に複雑な株式の評価を完了させる必要があり、相続税の申告を行う相続人にとって負担が大きくなります。

法人を設立する前に他の方法も検討する

法人を設立することで、相続税の節税をすることが可能です。しかし、法人の設立は手間も多く、相続人への負担もあるため、法人の設立以外の方法で財産の承継対策をした方が良いケースも多くあります。法人の設立をする前に検討しておきたい相続対策やポイントについて紹介します。

まずはシミュレーションを行う

まず、具体的な対策を考えるより、事前に行うべきなのは預貯金や株式、不動産、金などの現物資産を含む相続財産を一覧の表にしてシミュレーションを行い、どれくらいの税額がかかりそうか知っておくことです。財産が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)の範囲内であればそもそも相続税対策は必要ありません。

シミュレーションをする際は配偶者控除や小規模宅地の特例など該当する特例は利用できるものとし、税額がどれくらい軽減できるかも把握しておきましょう。

相続のタイミングはわかりませんので、早めに検討し、有効な対策を打っておくことが重要です。

生前贈与

法人を設立することで、役員報酬として相続人に財産を移転する流れを作ることができることは、大きなメリットと言えます。しかし、継続的に大きな収入がない場合は生前贈与で財産を移転することも一つの手段です。年間110万円までは非課税で財産を移転することが可能ですので、多くの相続人に贈与をすることで、スピーディに財産を移転し、課税対象財産を減らすことが可能です。

生前贈与は法人を設立するよりも気軽にでき、法人の登記の準備などもいりません。生前贈与で節税対策として十分なのであれば、法人を設立する必要はないでしょう。資産家の中でもどちらを利用した方がいいか、状況により別れますので、それぞれのメリットとデメリットをよく理解のうえ、比較して、選択する必要があります。

遺言の作成

法人の設立とあわせて検討したいのが遺言の作成です。相続対策として、節税を行っていても、配分について検討しておかなければ、法定相続人同士で問題が発生する可能性があります。

財産の分け方が理由となり、疎遠になる家族も多くいます。遺言の作成をあわせて行っておくことで、スムーズに財産を引き継ぐことができ、配偶者や子の負担を減らすことができます。

法人の設立は税理士に相談を

法人を設立することは、手続きの方法も複雑です。税金の計算を行って、相続税を納付することは慣れていない者にとって簡単なことではありません。設立の方法や、節税効果については、法人を設立する前に、財産の内容を説明して、専門家である税理士のサポートを受け、注意点を確認しながら進めるようにしましょう。相続対策の法人設立をする際は相続税・贈与税の実績が豊富で、業務として普段から行っている税理士事務所に相談することをおすすめします。

また、相続税の申告の際も税理士に依頼することで、税務署から税務調査を行われた際も安心です。相続税の申告は相続開始から10ヶ月以内と短い期限内に手続きと支払いを済ませる必要があり、相続人にとって大きな負担となります。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい