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相続税の申告を怠った場合、どのようなペナルティが課される?

2024年06月02日

相続税の申告は原則、被相続人が亡くなった翌日から10ヶ月以内と期限が定められています。相続が発生した後、相続人は遺産分割の話し合いや金融機関等の手続きが忙しい中で、税額の計算を行って、税務署に納付しなければいけません。

また、死亡の翌日から10ヶ月と短い期間ではありますが、期間内に書類の作成や納税を行わなかった場合、通常よりも重い額の税金が課されることもあります。当記事では申告を行わなかった場合にどのようなペナルティが課されるのか、概要を解説します。

財産が基礎控除の範囲内であれば相続税の申告は不要

保有する土地や建物、金融資産などの合計が基礎控除の範囲内であれば、そもそも申告の必要はありませんので、ペナルティは課されません。基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円で計算を行います。

また、生命保険を契約していいた場合、生命保険の非課税枠の500万円×法定相続人や死亡退職金の非課税枠の500万円×法定相続人を加算した金額までであれば、納税義務は発生しませんので、相続税の申告は必要ありません。

ただし、小規模宅地の特例や配偶者控除などの特例を利用することで相続税が0円になる場合でも、基礎控除が超える場合は相続税の申告が必要です。この点は間違えやすく、勘違いして申告しない人も多いので気を付けましょう。

相続税の申告を行わなかった場合のペナルティ

相続税の申告を期限内に行わなった場合や財産を過少に申告した場合、税務署から税務調査で指摘を受けて追加で税金を課される可能性があります。ケース別にどのようなペナルティを課されるか確認しておきましょう。

延滞税

延滞税は、災害などの特別な理由がなく相続税の申告期限までに相続税の納付をすることができなかった者に課されます。

延滞税の税率は以下の通りです。

申告期限後2カ月以内:2.4%
申告期限後2カ月超:8.7%

財産の状況にもよりますが、延納をするよりも高い税率になりますので、不動産などが多く、現金一括で相続税を支払うことが難しい場合は延納の手続きをとるようにしましょう。

過少申告加算税

過少申告加算税とはしっかりと財産を把握できておらず、本来の財産よりも少ない財産で申告し、納税した場合に課される税金です。過少申告加算税は本来納める税額と申告を行い実際に支払った税額との差額に対して課税されます。

過少申告加算税の税率は下記の通りです。

<納付すべき税額が50万円以下の部分>

税務調査の通知前に申告した場合:無し
税務調査の通知後、税務調査実施前に申告をした場合:5%
税務調査実施後に申告をした場合:10%

<納付すべき税額が50万円超の部分>

税務調査の通知前に申告した場合:無し
税務調査の通知後、税務調査実施前に申告をした場合:10%
税務調査実施後に申告をした場合:15%

金額や、自主的に修正申告を行ったかどうかで課されるペナルティの金額が異なります。調査によって指摘を受けた場合はより重いペナルティを課されることになります。

過少申告加算税を課される場合は、申告期限を超過しているため、延滞税の両方が課されることになります。

無申告加算税

無申告加算税は相続税の申告期限までに申告を行わなかった場合のペナルティです。

加算される税額は納付するタイミングのより異なり、以下の通りとなります。

<納付すべき税額が50万円以下の部分>

税務調査の通知前に申告した場合:5%
税務調査の通知後、税務調査実施前に申告をした場合:10%
税務調査実施後に申告をした場合:15%

<納付すべき税額が50万円超の部分>

税務調査の通知前に申告した場合:5%
税務調査の通知後、税務調査実施前に申告をした場合:15%
税務調査実施後に申告をした場合:20%

上記の通り、無申告加算税は過少申告加算税よりも重い税金となります。

無申告加算税も過少申告加算税と同じく延滞税の両方が課され、重い負担となります。無申告加算税は過少申告加算税よりも重い負担となり、多額の税金を請求されることになりますので、注意しましょう。

重加算税

重加算税は遺産を隠蔽するなど意図的な場合や悪質な事例で課される税金です。

無申告の場合は40%、過少申告の場合は35%とかなり重い税金が課されます。また、故意に悪質な脱税行為を行った場合は、加算税だけでなく刑事罰をされることもあります。

相続税は国税として相続で財産を取得する者に納税が義務付けられています。過去に指摘されているケースも多くありますので、悪質な財産隠しなど、相続財産を隠蔽するような行為は絶対にやめましょう。

相続税の申告は税理士に相談を

相続税の計算をするために、それぞれの財産の評価、特例の適用可否の判断を行う必要があります。期限内に申告書を作成し、税務署に提出するなど期限内に対応を完了することは簡単なことではありません。

申告を怠った場合や相続税法で定められた算出方法で適切な金額で申告をしなかった場合、加算税などのペナルティが課されます。

知識がなく、計算が難しい場合や財産の数や種類が多くて評価しきれない場合、土日しか休みが無く手続きが進められない状況の場合は税務の専門家である税理士に依頼することをおすすめします。

税理士に依頼すると費用がかかりますが、相続人の負担を軽減できますし、安心して続きを進めることができるでしょう。また、財産の内容によっては小規模宅地の特例など、要件を満たし可能な範囲で特例を活用することで、正当な方法で報酬を超える節税ができる場合もあります。

税理士を知り合いから紹介してもらうことが難しい場合は、ホームページなどで税理士を探す必要があります。普段から相続税の申告を行っている税理士事務所・税理士法人に依頼し、間違えなく申告をするようにしましょう。期限ぎりぎりで依頼しても間に合わない可能性があります。初回の相談はサービスで無料で応じてくれることが多いので、まずは電話やメールで気軽に問合せしてみると良いでしょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい