親が亡くなった場合、遺産分割の話し合いや、戸籍謄本の収集、不動産の登記や金融機関の手続きだけでなく、相続税の計算や申告手続きを行う必要があります。
相続税の計算をする際に被相続人が所有していた各財産の評価を行い、一覧の表にまとめる必要があります。多くの人が保有している株式等はどのように評価額を確認すればよいのでしょうか。
当記事では上場株式と非上場株式の概要や相続税の計算方法について解説します。
上場株式の評価方法
上場株式の課税価格は、売却するときの時価で計算を行うことになりますが、株式は現金や預金とは異なり日々変動します。相続税の計算のために以下の中で最も低い金額で評価を行います。
①被相続人が死亡した日の終値
②被相続人が死亡した月の終値の平均
③被相続人が死亡した前月の終値の平均
④被相続人が死亡した前々月の終値の平均
株式は毎日値動きがあり、銘柄によっては乱高下する場合もあるため、死亡する直前の一定期間の平均化した指標も用いて、一番低い金額とすることで、死亡するタイミングでの不公平間を無くすことができます。上場株式については相続で取得する株式を特定するために証券会社で確認し、価額を確認しておくようにしましょう。
非上場株式の評価方法
次に非上場株式の評価について解説しますので参考にしてみてください。
非上場株式は取引される相場が存在しないため、課税される金額の算出方法は上場株式よりも複雑な計算や対応が必要となります。非上場株式の計算方法は3つの計算方法がありますので、それぞれ解説します。
純資産価額方式
純資産価額方式は評価する会社の純資産額から帳簿価額を差し引き、法人税相当額(37%)を差し引いたものを発行されている株式総数で割ったものです。
純資産価額方式は今解散するとどれくらいの純資産を株主に配分できるかという考えを基に計算を行います。
類似業種比準方式
類似業種比準方式は事業内容が類似している上場株式の株価を基に評価を行う方法です。
類似業種比準方式の計算方法は以下の通りです。
①評価する会社と類似する企業の株価を算出
②評価する会社の1株あたりの配当金額・利益金額・簿価純資産価額の比準要素を算出
③①で算出した価格×②で算出した比準要素×調整率×(資本金の額÷50円)で算出
調整率は会社の規模によって決められており、以下の通りです。
大会社:0.7
中会社:0.6
小会社:0.5
③配当還元方式
配当還元方式とは少数株主であり、経営に関係していない人の株式の評価に利用できる方法で、保有する株式から配当がでる金額を基に計算を行います。計算方法は以下の通りです。
①1株あたりの年配当金額を算出
②①×10年分
非上場株式の配当は少ないことも多く、比較的低く評価できるケースが多いです。配当がない場合は1株当たりの念配当金額を2円50銭と仮定して計算を行います。配当還元方式は純資産価額方式や類似業種比準方式と比べると、比較的単純な計算で行うことができます。
準確定申告が必要な場合がある
生前に株式を売買し、特定口座で税金が徴収されていない場合や損益通算ができる場合は相続開始から4カ月以内に準確定申告によって所得税の納付や還付を受ける必要があります。一般的に源泉徴収される特定口座で取引しているケースが多いですが、確定申告が必要なケースでは準確定申告が必要であるということは覚えておきましょう。
相続税の申告は税理士に相談を
相続財産が基礎控除以下であれば申告は必要ありませんが、基礎控除を超える財産を保有している場合は相続税の申告が必要です。期限である10カ月以上経過してしまうと、後で加算税を請求される可能性もあります。
短い期間で行う必要があるうえに相続税の計算は制度が複雑で、改正も頻繁に行われるため、税務の知識がある人が最新の情報を得ていないと正しく相続税の申告ができません。相続が発生したらまずは財産や各金融機関の残高の一覧を作成することが重要です。土地は路線価図、建物は固定資産税評価額を基に評価を行いますが、間口や奥行などによって評価が異なる場合もありますし、不動産の数が多い場合は評価の手間も大きいものとなります。
国税庁のホームページなどで、財産の評価方法を調べることはできますが、実際に自分で行うことは簡単ではありません。
財産の評価が難しい場合は税理士に相談し、サポートを依頼するとよいでしょう。特に被相続人が非上場株式の株主となっている場合は、贈与や相続の時期によっても、価格が大きく異なる場合がありますし、非常に複雑な計算が必要となります。また、今後の会社経営にも関わる可能性があるため、非上場株式の価格を調べる場合は、税の専門家である税理士に依頼することをおすすめします。
非上場株式の評価を依頼する場合や税額の算出をする場合は資料を提示する必要があります。初回の相談は無料で応じてくれるケースが多いので、相続財産の評価や相続税の申告書の作成や税務署への提出にどれくらいの費用がかかるか確認してから正式に依頼するようにしましょう。
事前に税理士に相談し、遺言や財産の一覧を作成しておくなど対策を行っておくと相続人の負担をかなり軽減することができるでしょう。