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節税対策で養子縁組をする際の注意点とは

2024年08月18日

資産家の方の中には養子縁組による相続税対策について聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
養子縁組の仕組みを活用するのとで、相続税の節税になりますが、注意点もあります。

当記事では養子縁組で節税ができる仕組みと注意点についてポイントをおさえて解説します。

養子縁組で節税ができる理由

養子縁組を活用することで節税ができる理由は基礎控除の範囲に入る人数が増えるからです。
相続税の基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円で計算します。また、生命保険や死亡退職金の非課税枠は500万円×法定相続人で計算を行いますので、こちらの非課税枠も基礎控除と同じく、増加することになります。

そのため、養子縁組の仕組みを活用し、子を増やし、法定相続人を増やすことで基礎控除と生命保険や死亡退職金等の非課税枠が増えるので相続が発生した時に実際に支払う相続税が減少するため税金対策につながります。ただし、養子縁組は民法上は無制限ですが、相続税の計算上は無制限に子どもを増やせるわけではありません。

相続税法上は実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までと限度が決められています。

孫や子どもの配偶者などと養子縁組をし、法定相続人の数を増やすことで相続税対策になりますが、税法上、認められる限度はがあり、たくさん養子を増やして税金を下げられるわけではないことは覚えておきましょう。

養子縁組の注意点

養子縁組をすることで戸籍に親子と登録され、簡単に解消することはできませんので、不安な点は必ず解消してから手続きをする必要があります。養子縁組をする際にはどのような点に注意をすれば良いのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

配分で揉める可能性がある

養子縁組の制度を活用し、孫を子どもにした場合、孫も法定相続人として、遺産を相続し財産を受ける権利を有することになります。

そのため、実子が複数いる場合、妻や子どもなど他の相続人一人あたりがそれぞれ相続できる金額が減ることになります。例えば、配偶者と子供2人の場合、3人で分けるところが、養子縁組をすることで、4人に分けることになります。そのため、兄弟姉妹の間で配分を協議する際にトラブルになる可能性がある場合は事前に慎重に検討し、遺言書を作成するなど対策を打っておきましょう。

相続税の2割加算の対象となる

相続人が配偶者、子ども、父母以外の場合は相続税の2割加算の対象となります。孫を相続人にすることで、基礎控除は増やすことができますが孫が支払う相続税は2割加算となってしまうことは注意が必要です。

納税資金の確保が問題となる可能性がある

孫などの収入や資金がない者を相続人とした際に、不動産など現物資産のみを相続させると相続税は被相続人から受け取る資金ではなく、自分で用意する必要があります。

被相続人の死亡時にまだ若い孫などを相続人とする際は現金もあわせて遺さないと納税資金が不足してしまう可能性がありますので注意が必要です。

養子縁組の手続き方法

養子縁組をする際は現在の親子関係を継続する普通養子縁組と実親の法律上の親子関係が終了する特別養子縁組があります。

養子を縁組を行うためには養親となるパートナーである配偶者も含めて、養親と養子が同意のもと行われます。養子が未成年者の場合は事前に養子縁組許可申立書を記入し、戸籍謄本や800円分の収入印紙など必要書類とともに提出する必要があります。養子が未成年の場合は養子縁組をする理由が正当で養親が未成年の保護をすることが可能かを判断します。特別養子縁組の場合は、実親との法律上の関係が解消される強い効果があることから、監護期間を経てから判断されるなど、厳しい基準で判断されることになり、目的によっては否認されることもあります。

家庭裁判所から許可が下りた場合、養子縁組届出書や戸籍謄本、本人確認書類などの必要書類を市区町村の役所に提出することで養子縁組の手続きをすることが可能です。

養子縁組を検討する際は事前にシミュレーションが必要

財産の総額が明らかに基礎控除を超える場合は養子縁組の仕組みを利用した節税を検討してみてもよいでしょう。

養子縁組の仕組みを活用し、相続税の節税を検討する際は現時点で保有する財産であればどれくらいの税額がかかり、どのような問題点があるか、現時点で保有する土地・建物、金融資産の評価を行って事前に確認することが重要です。

事前に確認し、メリットとデメリットを比較し、夫婦で話し合ったうえで養子縁組の手続きを行う必要があるでしょう。もし、節税効果があったとしても、養子縁組の影響で法定相続分が変化することで遺産分割の際に家族の関係が悪化し、実際に争いになるような事情があるのであれば、養子縁組による相続税対策は行わないことをおすすめします。

生前のシミュレーションをする際は税務の専門家である税理士に相談するとよいでしょう。国税庁のホームページには内容が記載されていますが、課税の対象となる相続財産の評価や税率の計算は複雑で、税金の知識がない人がすぐに理解できるほど簡単なものではありません。誤った計算をしてしまうと判断を誤ってしまう可能性が高いので、しっかりと計算ができる専門家にサポートを依頼することで安心して検討することができます。

手続きにより税理士に報酬を支払う必要がありますが、初回の相談は無料で応じてくれる税理士も多くいますので、まずは依頼内容をお伝えし、税理士事務所・税理士法人に見積もりを作ってもらうとよいでしょう。また、事前にシミュレーションをすることで、相続発生後の書類作成もスムーズに行うことができ、相続人が相続発生後に対応する負担を減らすことができます。養子縁組を結果的に行わないことになったとしても、相続税の申告には役立ちますので無駄にはならないでしょう。

 

 

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい