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相続人全員が相続放棄することは可能か?残された財産の行方

2021年12月31日

故人に財産があるとき、配偶者や子などの法定相続人は相続財産を引き継ぐことになります。財産には預金や投資信託などの金融資産だけでなく、不動産や金などの現物資産、借金も含まれますので、借金があると知っている場合は引き継ぎたくないと考える方もいるでしょう。家族が不動産を遺産相続で取得した際に、対応を怠ると管理責任を問われることもあります。

しかし、プラスの財産がマイナスの財産以下だった場合でも、相続放棄することにより、遺産を引き継がないことが可能です。財産の内容や親族間の関係などさまざまな理由で財産を放棄をして、安心したいと考える人もいるでしょう。

この場合、相続人全員が相続放棄をした場合、残された財産はどのようになってしまうのでしょうか。

「相続放棄を検討しているけれど、全員に引き継がれなかった財産がどう扱われるか気になる」と考えている方のため、詳細についてご紹介します。この記事を読むことにより、民法で定められたルールや相続がおこなわれなかった財産の行方などがわかります。

相続人全員が相続放棄することはできるか

相続人は財産を承継する権利と義務がありますが、相続放棄を行い、家庭裁判所に受理されれば財産を遺贈されることはありませんし、権利も義務もなくなります。

結論からいうと、相続人全員が財産を引き継がないことは可能です。相続はプラスとマイナス両方の財産を受け継ぐことになります。仮にプラスの資産を引き継ぐメリットよりも借金を引き継ぐデメリットや、相続するための費用負担が大きい場合、相続放棄を申し立てることにより、借金の支払いを免れることが可能ですし、管理することが難しい財産も引き継ぐ必要がなくなります。遺言により財産を取得することが指定されていた場合でも、放棄をすることは可能です。

注意点として、全員が引き継がなかったときは相続順位が繰り上がり、もともと相続人でなかった人が相続人となります。例えば、被相続人の配偶者とその子供が全員相続の放棄をおこなったときは、次に相続人として挙がるのは被相続人の父母や祖父母などの直系尊属、その次が兄弟姉妹(亡くなっている場合は代襲相続で甥・姪)です。相続人は戸籍でしっかりと確認するようにしましょう。

被相続人が借金を残している場合、自分たちの相続放棄によって新たに相続人となる方にはその旨を伝えましょう。連絡を取り合い、全員で引き継がないことを決めたほうが良い場合もあります。伝えず、借金があることを知らずに相続させてしまった場合、迷惑がかかるため、大きなトラブルにつながる可能性もあるでしょう。自分が放棄をする場合も期限である3カ月以内に次の人が放棄をできるように、しっかりと説明するなど別の人に迷惑をかけないように考える時間があるうちに報告することも重要です。他の相続人が放棄をしたことを知らずに1人だけ残ってしまうような事態は避けなければいけません。

また、自分が放棄することで繰り上がる親族など利害関係がある人には財産について詳しく伝えておく必要がありますので、まとめて財産調査を行い、土地や建物、負債がわかる資料を集めて一覧を作成して、しっかりと説明できるようにしましょう。

ただし、放棄の検討を始めるより先に財産を換価したり、処分したりした場合は単純承認をしたものとみなされます。故人に借金がある場合は、負担を負うことがないように財産の処分は慎重に行うようにしましょう。

相続放棄された財産はどうなるのか

順位が繰り下がっても全員の相続放棄が完了した場合、最終的に相続人不存在となり、引き取り手のいない財産は国庫に帰属されます。借金については相続放棄された遺産から返済しますが、足りない場合は契約書に記載されている連帯保証人に支払い請求される可能性が高いです。

相続人が連帯保証人になっているようなケースもありますが、この場合、相続放棄しても連帯保証債務から免れることはできないので注意しましょう。

もしプラスの財産とマイナスの財産がどちらが多いかわからない場合は、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を弁済する限定承認という方法もあります。相続放棄、限定承認に対し、プラスの財産もマイナスの財産も承継することを単純承認といいます。状況に応じて使いわけるようにしましょう。

国庫に帰属されるまでの流れ

全ての人が放棄をしたとしてもすぐに国庫に帰属されるわけではありません。相続人がいない場合、家庭裁判所が公告し、相続人がいないかを確認します。

裁判所は相続人がいないことが確認できた場合、特別縁故者がいないか確認します。特別縁故者は内縁の妻や、最後は近隣の住民で被相続人のお世話をしていた人などが財産の取得者として認められ、財産を受けるケースもあります。

一定期間経過後、特別縁故者も申し出がなかった場合財産管理人を選任し、財産を管理し、国庫に帰属する手続きを行います。

財産管理人は弁護士など法律の専門家が担うことが多く、預貯金や不動産などプラスの財産を処分し、債権者に債務を返済するなど精算を行った後に国庫に帰属します。

親族でよく話し合いをすることが重要

いかがだったでしょうか。相続人全員が相続放棄できるのか、引き継がれなかった財産はどうなるのか解説してきました。財産の行方などをご理解いただけたかと思います。遺言書がない場合、被相続人が亡くなってからすぐに検討を行う必要があります。ある程度考える時間も必要ですので、遠方の相続人にはメールや電話などを利用して連絡をとるようにしましょう。

法律に関することでもあるため、知識がない方が手続きをすることは難しいですし、相続関係の不安を感じている方もいるでしょう。何か困ったことがある場合、相続関連の業務に強い税理士などの専門家に頼りながら悩み解決につなげてみてはいかがでしょうか。

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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい