終活ブームがあり、関連する書籍やサイトなどで知識を得る人が多くなっています。そのため、生前に相続に関する対策を行うことが一般的になっています。
しかし、相続対策と一口に言っても、具体的な方法はさまざまです。何から始めていいかわからないと不安に感じている方も多いでしょう。人によって財産の額や種類、相続人の状況は異なりますので、自分に必要な対策をしっかりと行うことが重要です。
相続対策はあらゆる方法がありますが、目的に応じて、適切に判断して選択する必要があります。
今回は相続を専門とする税理士の立場から3つの観点にわけて相続対策についてポイントを抑えて紹介していきます。
遺産分割に関する対策
相続人が複数いる場合は、相続人同士で協議をして大きなトラブルに発展する『争族』を避けるためにも遺産相続について考えておく必要があるでしょう。特に不動産がある場合は、誰が不動産を相続するかによって、配分割合が大きく異なりますので、しっかりと決めておいたほうがよいでしょう。
遺産の分割について検討する際は、まず、土地・建物・金融資産・金などの現物資産も含めて課税対象となる各財産を一覧にして、考えることをおすすめします。資産を一覧にしておくことで、不動産などの現物資産を引き継ぐ人と、預貯金や株式、投資信託などの資金を中心に引き継ぐ人とのバランスを考えやすくなるでしょう。
配分が問題となりそうな場合に、財産配分を明確にするためには、相続が発生する前に遺言書を書いていただいたほうがよいでしょう。法律上有効な遺言を作成するためには、公証役場で公正証書遺言を作成することをおすすめします。自筆証書遺言でも法律上の効果が発生しますが、要件を満たさない場合無効となる点や家庭裁判所で検認を受ける必要があるなど注意するべき点が多くあります。
遺言を作成した場合、遺言書を作成していることを家族に伝えておくとよいでしょう。また、遺言を作成していても遺留分を侵害するような内容となっている場合など、法定相続分とは大きく異なる配分となっている場合、遺言の方針通りに相続人が財産を受け取ることが実現しない可能性があります。大きく配分が偏る場合には、配分の理由を不利となる相続人に丁寧に説明しておくなど、トラブルを回避するために注意深く準備しておくことが必要です。
節税に関する対策
多額の財産を保有する場合は相続税対策も必要です。
次に相続税を低く抑えるための節税に関する対策や注意点について解説します。
相続税の節税に関する対策も重要な対策の一つです。一般的な相続税対策の方法としては、贈与税の暦年贈与の基礎控除額の上限である1月1日から12月31日までの1年間で毎年110万円を子や孫への生前贈与する方法や、直系尊属から教育資金や結婚・子育てをする子供や孫などへの金銭の一括贈与による資産の移転。生命保険の死亡保険金を取得した場合の非課税枠(500万円×法定相続人)を活用するために、対象となる生命保険をあらかじめ契約しておくことなどが考えられます。贈与と終身保険を契約し、生命保険の非課税枠を利用することは確実に実際に支払う税金を減らすことができますので、次の世代に多く資産を遺す方法として効果的ですので検討してみることをおすすめします。ただし、今後生活資金の値上がりも予想されますので、老後の生活資金をしっかりと確保したうえで実施しましょう。
節税に関する対策を検討する際も、まずは自分の課税の対象となる預貯金、株式、投資信託、不動産など相続財産の一覧を作成し、総額や税率を把握した上で現時点でどれくらいの納税額となるかを計算して、具体的にどのような対策を行うか検討するようにしましょう。
もし、財産の合計が基礎控除額(3,000万円+法定相続人×600万円)以下の場合、相続税はかかりませんので、節税対策については検討する必要がありません。しかし、少しでも基礎控除を超える場合は、相続税を払うことになりますので、税額を軽減するために、検討の余地があるでしょう。納税額をシミュレーションする場合、住宅用の宅地を相続する際に、利用できる小規模宅地の特例などの特例可否もふまえて計算することも重要です。
実際の相続税は株式等、時価の変動が大きい財産を購入している場合は、相続が発生し、相続人が取得した時の評価で計算をすることになりますが、現時点での情報を得ておくことも重要です。
生前贈与を活用して節税対策をする場合は、長い時間をかけて対応する必要がありますので、若くて元気な時期に現状を把握しておく方が、メリットが大きい対策をとることができます。ただし、贈与を行う場合は相続人同士で不公平とならないように、贈与した金額を累計して把握しておくようにしましょう。また、お金を渡したり、口座に送金するだけでなく、お金を渡す度に贈与者と受贈者が贈与契約をしたことを書面を作成しておくなど、通帳以外でも贈与したことを確認できるようにしましょう。また、贈与をした祖父母や父母が通帳を管理していると名義預金ととられ、贈与をしていないと判断される場合があり、贈与をした前提で申告書を提出すると財産の申告漏れで加算税を請求されるリスクがあり、受け取った相続人がかえって負担が大きくなる可能性がありますので注意しましょう。
他にも保有する土地にアパートを建てて土地の評価を下げることや収益性が低いものの相続税評価が高い不動産を売買し、資産を組み換えするという方法も考えます。ローンを借りてアパート建築をする場合はローンの返済も伴うため、慎重に検討する必要があるでしょう。
相続税の計算をしてみると、東京など都心にあるアクセスのよい土地や自分で経営している会社の株の割合が多い場合、相続で受けた現金や預金で相続税を納税できないケースもあります。このようなケースでは相続発生前に不動産を売却しておくことを検討するなど、納税資金の確保についても検討する必要があります。納税資金について心配な人はいくらか相続人にも貯めて置いてもらう必要がありますので、財産を引き継ぐ可能性が高い人に、事前に話しておくことも大切です。
相続税の計算は複雑ですので、計画的に税理士などの専門家にサポートを依頼し、節税効果の高い方法について相談するとよいでしょう。
手続きに関する対策
被相続人の相続発生後は相続税の申告書類の作成だけでなく、不動産の登記や多数ある銀行の手続きなど、様々な手続きを行う必要がありますので簡単なものではありません。特に不動産の数が多い場合や金融機関の口座を多く持っている場合はそれぞれの手続きが必要となりますので、早めに着手する必要があります。
相続税の申告期限は10ヶ月以内と短いため、相続発生後は非常に忙しくなります。手続きが複雑な財産を残すよりは生前に処分したり、取引している金融機関の数が多い場合は事前に解約をして、減らしておくことも相続人の将来の負担を減らす手段として一定の効果があります。
相続手続きは主に相続人が行いますが、配偶者が高齢で認知症となっていたり海外に移住している場合など、家族や親族の中に手続きを行える人がおらず、財産の分け方の協議や、鉄づkうぃお進めることが難しい場合は、税理士や司法書士、行政書士などの士業や信託銀行などの金融機関に手続きを依頼することもできます。
生前に依頼する場合は、事前に遺言書を書く際に、遺言執行者として指定しておくことも重要な点です。執行者と指定しておくことで、遺言の内容を実現するために執行者として指定された物が手続きを行うことができます。
相続に関するお悩みは税理士に相談を
相続税の課税制度は複雑で、税務署で申告手続きの説明を受けても簡単にできるものではありません。また、税制改正も頻繁にあり、前提が変わる可能性があります。一度対策をすれば終わりではなく、今後も一定程度のタイミングで見直しをする必要があります。
相続に関するお悩みは税務の専門家である税理士に相談することをおすすめします。相続に関する制度は複雑ですし、相続は自分の親が亡くなった時くらいしか経験することではありませんので、わからないのは当然です。評価額の計算方法や特例を適用する際の利用条件など、間違った認識で行っていると、思うように対策の効果が出ず、財産の承継に必要以上に税金が多くかかるケースもあります。最悪のケースでは誤った申告をしてしまい、税務署による税務調査で指摘され、通常よりも相続税が高くなる可能性もあります。
税理士にも得意分野がありますので、相続税や贈与税を専門にしており、申告の実績が豊富な税理士事務所・税理士法人に依頼すると安心です。初回の相談はサービスで無料で行っている場合もあります。相続税の試算や実際に手続きを依頼する場合の費用などは電話で気軽に問合わせてアドバイスを受けてみるとよいでしょう。