相続税はプラスの財産から借金などマイナスの財産を差し引いた実額に対し、相続税が課税されます。通常財産が多い人は相続税も高額になるため、対策を検討している人も多いでしょう。
相続税対策の一つとして選択されることが多いのが、生前贈与です。贈与は次の世代に資産を移すことができますし、特例などもうまく活用すれば相続税を大きく抑えられます。
しかし「どんな場合に利用すれば良いのかわからない」「自分に向いているか判断できない」と悩んでいる方もいるでしょう。そこで、生前贈与すべきなのか判断する際に参考になるメリットとデメリットについて3つずつご紹介します。
この記事を読むことによって、生前贈与にはどのような魅力があり、何に注意すれば良いのかがわかるでしょう。節税するにあたり慎重に進めたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
贈与税は頻繁に税制改正が行われますが、知っているか否かで実際の税負担には大きな差がでます。また、誤った知識で贈与を行うと税務署から調査され、加算税を請求されることもあります。
現行の課税制度で利用できる各種控除や贈与に関する身に着けておきたい知識や基本的な仕組みなどについての情報も解説します。
生前贈与のメリット3選
生前贈与することによって期待できる効果は大きく分けて3つです。それぞれご紹介します。自分にとって魅力的に感じられるポイントかチェックしてみてください。
メリット1 相続時の相続税が節税可能
最大のポイントといえるのが、相続税を節税できる点です。
相続税とは、被相続人が残した財産の総額に対して課せられます。相続税の基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円で計算しますので、基礎控除を超える財産を保有している場合は贈与を検討してみてもよいでしょう。
そのため、存命のうちに金銭などの生前贈与を行い名義変更しておくことで、相続財産の合計額を少なくしておけば、その分相続税を抑えることが可能です。特に、預金よりも株式など今後価値の上昇が見込める資産を贈与をすることが有効です。
どの程度贈与して財産を小さくするかについては、実際に税額を計算してメリットを得ることができるか計画を立てる際は夫婦や親子で十分に検討してから決めるようにしましょう。
暦年での生前贈与は1月1日から12月31日までの1年間で110万円の基礎控除が用意されています。そのため、取得する人、一人につき110万円までの間であれば贈与税はかからないため、非課税で一定の財産を遺すことが可能です。110万円超の場合は贈与税の税率が適用され、申告の義務が生じるため注意が必要です。贈与税がかかる場合は財産をもらう側が申告と納税の手続きをする必要があります。
基礎控除を活用し、基礎控除の範囲内で数多くの人に毎年贈与を行えば、より多くの財産を家族などに残すことが実現できます。遺産が多い人は税率も高くなり、相続税はとても高いので、しっかり対策しておきましょう。
暦年贈与は効果も高く、簡単な手続きで確実に行えますので、生命保険の非課税枠(相続人一人につき500万円)とあわせて活用したい制度です。特例と違い条件もなく、使う目的も自由です。
また、住宅取得資金の贈与であれば、500万円まで非課税で贈与をすることが可能です。不動産を取得する際には不動産の購入費用だけでなく、不動産取得税や登録免許税など様々な費用がかかりますので、資金を受け取った子や孫の負担を減らすことができます。
教育資金であれば1,500万円まで父母や祖父母など直系尊属から子や孫へ、住宅資金と同様に一括贈与が可能です。教育資金の負担を減らすことができるため、塾などの請求書を金融機関に提出するなど、手間はかかります。しかし、住宅資金贈与と教育資金贈与の2つの特例は先に大きなお金を渡せるので相続人の援助としても有効な手段で人気があります。
教育資金贈与は金融機関で契約して渡すお金を管理してもらう必要がありますので、お近くの銀行などのサイトを検索して手続き方法を確認してみるとよいでしょう。
メリット2 相続時のトラブル防止になる
生前贈与は存命のうちに意思を明確にして贈与するため、相続時のトラブルを回避することにもつながります。遺産の分割でトラブルが起こり、関係が悪化しやすいのは遺産分割協議の際に「誰がどれくらい受け取るか」の問題です。最悪のケースでは考えの異なる複数の相続人で徹底的に戦うことになり弁護士を通じて裁判になるケースもあります。
遺言書が残されていたとしても、遺留分を侵害している場合などはその内容に納得できない親族が出てくると大きな揉め事に発展しやすくなります。ですが、生前贈与であれば、相続開始後の協議とは異なり、贈与する人が直接会ったり電話などで親族に意向や方針を伝え、希望を聞きながら贈与可能です。
また、相続人もいただいた資産をどのように使っていくか、贈与者と相談することも可能です。
もちろん、贈与をすることで特別受益となりますので、納得できない親族が現れる可能性もあります。その場合も直接本人と理由や基準を説明しながら解決を目指せるため、相続時のトラブルを防ぎたい方に向いているでしょう。生前に贈与することで自分で対応できることは大きなメリットです。場合によっては大きな贈与を受けた相続人が相続放棄をすることもあるでしょう。
ただし、透明性は必要ですので、特定の相続人に贈与をして、法定相続割合と大きく異なる配分となることもあるため、相続人間で誰にいくら贈与したかは他の相続人と比較できるように一覧にしてわかるようにしておきましょう。大きい資産を贈与する場合は贈与と合わせて遺言を別に作成しておくことも有効な手段です。遺言を作成する際は一部の財産ではなく、全ての財産について記載するようにしましょう。
メリット3 誰に何を渡してもOK
相続の場合、法律によって定められた法定相続人しか財産を受け取れません。一方、生前贈与であれば誰に対して贈与するのか贈与者が選択できます。
配偶者や子ども等、民法で定められた推定相続人だけでなく、孫や兄弟、甥姪など相続人でない方にも贈与をすることが可能です。配偶者には相続時の配偶者控除がありますので、相続税の節税メリットは限られますが、居住用の自宅以外の生活資金の確保などにおいて有効です。
お金だけでなく、「この財産は必ず○○に残したい」など、指名したい相手がいる場合に役立ちます。遺言書でも同じことが可能ではありますが、万が一不備があった場合、無効になってしまうため注意が必要です。
贈与する父母や祖父母が60歳以上であれば、相続時に相続税を精算することができる相続時精算課税制度を利用することで将来評価が高くなりそうな株式や土地・建物などの資産を事前にまとめて渡したり、名義変更したりすることも可能です。株式会社を経営している人は後継者に株式を贈与することも可能です。
相続時精算課税制度はかの場合は贈与時点の時価、土地は路線価、建物は固定資産税評価額で相続財産に加算されますので、将来値上がりが予想される多額の資産や収益を生み出す資産の贈与に向いています。
相続時精算課税制度を利用する場合は税務署への申請や不動産の場合は登記手続きが必要となりますので注意しましょう。
生前贈与のデメリット3選
生前贈与は良いことばかりではありません。下記のような注意点もあります。
デメリット1 死亡前7年以内の生前贈与が相続税の対象になってしまう
相続が発生する前7年以内のタイミングで行った生前贈与がある場合、相続税がかかります。
つまり、亡くなる7年以内に行った贈与はその贈与はなかったものとされ、相続財産に加算され、課税対象になるのです。
よくあるのが、財産を所有している方が大きく体調を崩したタイミングで慌てて生前贈与を始めるケースです。それから間もなく亡くなってしまったような例では贈与した分が相続税の対象になる可能性が考えられます。期限はないものの、財産が多い人は財産を移転するまでにかなりの期間がかかります。
また、存命でも認知症などで意思能力がなくなり、成年後見を立てている場合なども贈与をすることは難しくなるリスクもあります。実際にあと何年生きられるかはわからないので生前贈与で節税につなげたいと考えているのであれば、高齢になってから行うのではなく、早めに贈与しておいたほうが良いでしょう。
尚、この規定は、相続人に対する贈与の場合なので、親から子に贈与した場合は対象となりますが、孫など相続人以外に対する贈与については財産を相続しない限り相続税の対象にはなりません。
デメリット2 税務署に否認される危険性がある
生前贈与は、税務署が税務調査の時に贈与を否認をする可能性があります。
まず、贈与する側が一方的に贈るものではなく、受贈者が財産を受けることが必要であり双方の合意に基づいた契約が成立しなければなりません。そのため、財産を与えること、受け取ることを同意した贈与契約書を作成しておくと良いでしょう。
税務署から調査を受けた時のために、書類の作成方法などについて、書き方が難しい場合は司法書士や税理士など、書類の作成に詳しい専門家に相談するようにしましょう。
また、贈与の証拠を残したほうが良いので、現金手渡しではなく通帳に証拠が残る振り込みなどの方法を選択したほうが安心です。
デメリット3 定期贈与とみなされ節税にならない危険性がある
毎年同じ金額を贈与した場合「定期贈与」と判断されてしまう恐れがあります。
定期贈与とは、例えば1,000万円を引き継ぎたいと考えた場合「毎年100万円ずつ、10年にわたり贈与する」といった取り決めです。この場合、1,000万円の定期金に関する権利を贈与した扱いになり、年間110万円までの基礎控除が認められないため、原則1,000万円に対して贈与税が課税されます。こうなるとせっかく税金の負担を軽減しようとおもったのにかえって生前贈与が原因で将来的に遺族の税負担が増えてしまう可能性があります。
定期贈与と判定されないように毎回贈与契約書を作成する、贈与の金額や時期を毎年変えるなどの対策をとることが大切です。
自分にとって贈与する・しないだとどちらがお得か確認
いかがだったでしょうか。今回は、生前贈与の一般的なメリットとデメリットについてご紹介しました。上記の通り節税につながることやトラブルを防げる、被相続人以外にも財産を残せるなどの魅力があります。
しかし、注意すべきポイントについても確認し、生前贈与するのが自分に向いているのか考えてみてください。もし、最適な選択肢がわからず、お悩みや疑問がある方は、税理士に相談してみるのがおすすめです。
実績のある税理士に具体的な生前贈与の額などについても確認してみてはいかがでしょうか。サービスで無料で相談に応じてくれる税理士もいます。財産の一覧表や相続人関係図を作成し、具体的に自分の状況をお伝えするとスムーズに相談できるでしょう。
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