遺言書を作成することや生命保険の保険金の受取人に指定することで、配偶者や子供など、法定相続人以外にも法定相続割合とは異なる割合で遺産を遺すことができます。原則、孫は法定相続人ではなく、相続権はありませんが、直系の血族である孫に相続させたいと考える人も多いのではないでしょうか。当記事では孫に財産を相続させるケースと注意点について解説しますので参考にしてみてください。
孫に財産を相続させるケース
孫に財産を相続させるケースとはどのようなケースが考えられるのでしょうか。具体例とメリットを確認しておきましょう。
子が既に亡くなっているケース
子が既に亡くなっていて孫がいる場合は代襲相続によって孫が次の順位の相続人となります。孫にも遺留分がありますので、基本的に孫に財産を遺すことになります。相続放棄の場合は孫に代襲することはありません。
孫を養子にしているケース
養子には実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで相続税法上の養子にすることができます。民法上は3人を養子にすることができますが、税法上は意味がありません。
現行の課税制度では孫を養子縁組することで、相続人の数が増えるため1人につき600万円基礎控除と生命保険の非課税枠500万円を加算することができますので、合計1,100万円非課税にすることができます。
そのため、節税の一環として孫を養子に入れているケースがあります。養子に入れると民法上は子供としての扱いとなりますので、基本的に法定相続分をの財産を相続することになります。
財産の代飛ばしをしたいケース
相続税は遺産相続をする度にかかりますので、代々引き継いでいく財産はできるだけ若い人に相続させた方が相続税の負担を軽減することができます。そのため、子どもへ相続し、そのあと孫に相続するのであれば、子どもを飛ばして孫に相続させた方が相続税が安くなるケースがあります。事業を経営している場合などで孫を後継者として決めている場合などは自社株式を子どもではなく、孫に相続させることで、スムーズに承継し、会社の経営を安定させることも可能です。
贈与も有効な手段
孫に財産を遺したいと考えている場合、亡くなった際の相続だけでなく、生前贈与をすることも有効な手段として利用することができます。1月1日から12月31日までの1年単位で課税する暦年贈与では年間110万円までの非課税枠があり、110万円以下の贈与であれば、贈与税がかからないため、税負担なしで財産を孫に遺すことができますし、申告も不要です。生活に支障のない範囲で、毎年贈与を行うことで大きな金額を移転することができるでしょう。110万を超える場合は、取得する側が一定の税率で贈与税を支払う必要があります。
また、教育資金一括贈与の特例を適用することで、直系尊属から、学校や塾などの教育資金贈与に限り1,500万円まで一括で贈与をすることも可能です。教育資金の一括贈与は金融機関で契約をする必要があり、受け取った資金を払い出し請求の都度、領収書を提出する必要があるなど、手間がかかるデメリットはありますが、暦年贈与以上に節税メリットも大きい制度です。
他にも結婚・子育て費用に限り1,000万円まで一括贈与できる制度があります。条件を満たす場合には特例を活用することで、大きな金額を相続が発生する前に孫に贈与することも可能です。先に贈与をすることで、亡くなる前に被相続人の財産を少なくすることができるため、結果的に家族にかかる納税額を減らすことにもつながります。
他にも、相続時に相続税の課税対象となる相続時精算課税制度を利用して孫に贈与をすることも可能です。
孫に財産を移転する際の注意点
次に孫に相続や贈与などで財産を移転する際に考慮しておくべき注意点について解説します。
相続税が2割加算になる
養子に指定する場合や遺言によって孫に財産を相続させる場合、通常の税額に加え2割加算の対象となります。代飛ばしで財産を遺すケースでも、通常の税率と異なりますので、どちらが有利か詳細に計算をしておく必要があります。
メリットが出るか否かは相続財産がいくらあるかにもよりますので、相続税の計算をする際は、金融資産、土地・家屋、金などの現物資産を含めた課税対象の財産をまず一覧の表にし、それぞれの財産を国税庁が定めた基準で評価し、財産額に応じた計算を行う必要があります。
相続人間でトラブルになるケースがある
特定の孫に財産を多く遺すことで、遺産分割の際に他の相続人から異議を唱えられる可能性があります。相続関連の裁判は実際に年々増加傾向で、自分の家は大丈夫と思っていても必ずしも円満に解決できるとはかぎりません。相続をきっかけに財産の分け方で関係が悪化しないように、財産を受贈する孫だけでなく、他の相続人の意思も確認しながら進める必要があります。
相続人ではない孫に遺贈する際はトラブルになりやすく注意が必要です。財産の総額を見て全体のバランスを考慮して配分を検討するようにしましょう。
金銭管理や手続きで問題が発生するケースがある
祖父母からの贈与や相続で孫が多額の金銭を手に入れることで、金銭管理や手続きの面で問題が発生するケースも多くあります。祖父母が死亡する時点では孫はまだ10代や20代と若いことが多いでしょう。未成年者のうちは親権者が口座の管理をすることになります、成人の年齢が20歳から18歳に引き下がったことで、18歳から金融機関の手続きなどを自分一人で完結することができます。まだ若い時期に多額の資金や土地・建物などの不動産を受け取ることは教育的にもよくないこともあります。
また、相続税の申告や不動産の登記などの手続きを怠れば、税務署から指摘を受け、ペナルティを受ける可能性があります。信頼のおける税理士や司法書士を紹介できるように、祖父母や父母がサポートしておく必要があるでしょう。
孫に相続させる場合は税理士に相談を
少しでも孫に財産を相続させる場合は、法定相続人に相続させる場合に比べて注意するべき点が多くあります。相続税の計算方法や各種特例や控除等、制度をよく理解して、慎重に対応する必要があります。
相続税の計算は簡単ではありませんので、孫に財産を相続させようと検討している場合は、税務の専門家である税理士に相談することをおすすめします。相続税や贈与税は頻繁に改正がありますので、相続・贈与関連の実績があり、最新の情報を持つ税理士に依頼することが重要です。
相続税は相続開始後10カ月以内と期限も短く急いで対応する必要があります。税理士に依頼することで、費用はかかりますが相続税の申告書の作成・納税、特例の適用もサポートを受けることができます。知識がない人は現状の悩みを解決するために、まずは気軽に税理士事務所などで相談するようにしましょう。
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