相続時精算課税制度とは?大幅改正となった内容を税理士が解説!

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相続時精算課税制度とは?大幅改正となった内容を税理士が解説!

2024年から贈与税の制度が改正され、贈与の方法による課税が大きく変更されています。相続時精算課税制度が改良されたことにより、これまで暦年贈与での贈与中心だったものから、相続時精算課税制度を選択する人も増えてくると思われます。

当記事では相続時精算課税制度の概要や2024年に行われた税制改正の内容等を中心に説明していきますので参考にしてみてください。

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは累計の額が2,500万円となるまでの範囲で贈与した財産について、贈与税ではなく、贈与者が亡くなってから相続税の対象として課税される制度です。贈与をした金額の合計が2,500万円を超える場合は、超える部分について一律20%の税率で課税されます。

2024年の改正で1年ごとに110万円を限度に基礎控除が新設され、控除の枠内であれば、非課税となり申告も不要となりました。従来の制度では、金額が少なくても申告が必要な分、負担がかかることや、受ける資産の評価の値上がりが期待できないと、節税にならなかったため、不動産や株式など評価額が上がることが期待される財産を贈与する人にしかメリットが少なく、利用する者が少ない制度と言われていました。

現在は別の制度である暦年贈与を選択し、生前贈与をしている人が多くいます。しかし、今回の改正を受け、相続時精算課税制度の基礎控除を使って、不動産や株式以外にも現金を早期から継続的に贈与をすることで節税になりますので利用する人が増えると予想されています。

また、祖父母などから孫へ贈与をする際の教育資金贈与の特例や住宅取得資金贈与の特例など、以前からある各種特例と併用して利用することができますので、特別控除を併用して利用することで、多額の財産を税額0で次の世代に移転することも可能です。

受贈者に条件があるものもありますが、これらの情報を得て、贈与をすることで相続税を大幅に減らすことができるでしょう。

相続時精算課税制度を利用するメリット

相続時精算課税制度を選択することでどのようなメリットがあるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

相続税の基礎控除の範囲内であれば無税で贈与できる

相続時精算課税制度は相続発生時に相続税として課税される制度です。そのため、相続税の基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)の枠の範囲内であれば、亡くなる前に既に相続時精算課税制度を活用して多額の贈与を行っていたとしても相続税はかからないため、申告も不要です。

将来値上がりする資産の贈与に有効

相続税の評価額は贈与時の価額で相続税の計算をするため、現金を贈与するよりも、贈与をした以降に値上がりが期待できる株式や定期的に収入を得ることができる不動産などを贈与することで、次の世代に資産を移転することができる制度です。例えば、贈与時に時価500万円の株式が後に値上がりし、相続発生時に1,000万円となっていも、相続税に500万円が加算され計算することになります。

基礎控除を超える財産を保有する方にとっては、預金よりも将来値上がりが期待できる特定の資産を贈与することで節税しやすくなるでしょう。

暦年贈与の7年以内加算がない

暦年贈与は従来、被相続人が死亡する前3年以内の贈与は相続財産に加算され、相続税として納付するという制度がありました。2024年からは生前贈与の期間が3年から7年に延長され、暦年贈与をしたとしても7年の間に相続が発生してしまうと相続財産に加算され節税対策として意味がなくなってしまいます。

一方で相続時精算課税制度は生前贈与加算の対象外で7年以内繰り戻されることがないため、高齢の贈与者で長生きできない可能性がある場合は、相続時精算課税制度を選択したほうが有利です。

資産の承継先を決めることができる

自分が経営している中小企業の事業用に活用している土地など、事業を引き継ぐ人が決まっている場合は相続時精算課税制度を使うことで、相続開始前に資産を次の世代に移転することができます。

贈与す資産に制限はありませんので、特定の資産を先に移しておくことで、遺産分割協議の対象から除くことができ、受贈者の判断で売却や土地を使って建物を建てるなど有効活用の検討も単独で対応を行うことが出来るようになります。

相続時精算課税制度を選択する場合の注意点

相続時精算課税制度を適用することでどのような注意点があるのでしょうか。

暦年贈与に戻ることはできない

相続時精算課税制度は暦年課税制度との選択制となっています。そのため、一度、相続時精算課税制度を選択すると1月から12月の1年間の間の贈与額で課税される暦年課税制度に再度変更することはできません。暦年課税制度は1月1日から12月31日までの1年間で贈与に対して課税される制度で、財産が多い人であれば、相続時の財産に加算されるよりも毎年贈与税を支払った方が税率が低いケースもあります。

判断に迷う場合は財産の一覧の表を作成し、実際に税金を計算してみないと、結果的にどちらが有利かわかりません。

相続税を専門分野としている税理士のサポートを受け、よく比較してから慎重に選択するようにしましょう。

税務署に届出が必要

暦年課税制度を利用する場合は、基礎控除の範囲内であれば、税務署の窓口に届出は必要ありません。一方で相続時精算課税制度を利用する場合は最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに相続時精算課税選択届出書と添付書類を税務署に提出する手続きが必要となります。

相続時精算課税制度を選択する場合は届出を忘れずに行うようにしましょう。

贈与者と受贈者に条件がある

暦年贈与制度は贈与者や受贈者に条件はありませんが、相続時精算課税制度は贈与者は贈与をした年の1月1日時点で60歳以上であること、受贈者は贈与者の子や孫で1月1日時点で18歳以上となり成人している必要があります。また、この制度を使えるのは祖父母や親などから子や孫などの直系卑属に贈与をするケースに限られます。甥・姪や子供の配偶者などの関係であればこの制度は使うことができません。

適用対象に

年齢要件もありますので、父母や祖父母からまだ小さい子や孫に相続時精算課税制度を活用して金銭などを贈与をすることはできず、一定の年齢以上の子どもや孫への贈与が対象となります。

相続発生時の資産の配分に注意が必要

推定相続人が複数いる場合は、相続時精算課税制度を活用し、一人の相続人に多額の贈与を行うと財産配分で問題が生じるケースがあります。

財産を分けるときに、遺産分割協議書を作成する必要がありますし、相続発生後10ヶ月以内と相続税の申告期限もあり、早く手続きを進める必要があります。そのため、相続発生後にトラブルになる可能性がある場合は遺言を書いて遺贈先を決めておくなど配分に対する事前の準備もあわせておこなっておきましょう。

小規模宅地の特例が使えなくなる

相続時精算課税制度を活用して、自宅の土地や事業用の土地を贈与した場合、相続発生時に小規模宅地の特例を利用することはできません。評価額が大きい場合、特例を利用した方が得になるケースもありますので、制度を利用する前に相続発生した際の税率や税額のシミュレーションを確認して検討するようにしましょう。

実際の遺産の評価や相続税の納税額を計算をする式は非常に複雑ですので、誤って申告を行うと税務調査で指摘され加算税を課される可能性があります。

税の専門家である税理士に相談することをおすすめします。相続税や贈与税に関連する手続きを数多くこなしている税理士事務所・税理士法人を探して依頼するようにしましょう。