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預金が少額の場合でも銀行の手続きは必要?

2025年05月03日

相続が発生すると相続人は各金融機関の名義変更や解約など遺産相続の手続きを進める必要があります。しかし、亡くなった人が利用していた口座に残っている預金残高が少額の場合、手間をかけて手続きをするのが面倒だと思う人も多いでしょう。

少額の預金も必ず遺産分割の手続きをする必要はあるのでしょうか。当記事ではなくなった人の少額の預金口座の取り扱いや注意点についてポイントをおさえて以下に解説していきます。

少額の預金口座は放置しても大丈夫?

銀行の預金や証券会社の株式などの名義変更を金融機関で手続きをする場合は被相続人の出生から亡くなるまで戸籍謄本や法定相続人全員で遺産の分割方法について合意したことが記載されて、全員が署名・押印している遺産分割協議書または金融機関所定の書類や相続人の本人確認書類、印鑑証明書などさまざまな書類を提出する必要があります。

結論から言うと、相続発生前に持っていた預金口座などを必ず手続きをしないといけないという決まりはありません。借金が多く、債務の返済を請求されないために相続人全員が相続放棄をした場合や、手続きの手間や費用を考えると解約して引き出せてもメリットを得られないような少額の口座の場合、相続が発生した際に放置するということも可能です。

ただし、相続税の支払いが必要な場合は注意が必要です。相続税の申告が必要な場合は財産の一覧を作成し、法定相続割合どおりに分けたものと仮定し、総額を計算したあとに実際に取得した割合に応じて相続税を按分します。

相続税の申告をする際は少額の預金口座の分も含めて申告を行います。そのため、銀行の預金も払い戻しなどの手続きを行う方がよいでしょう。

また、少額でも相続財産として払い戻しの対応をしないことで、他の相続人と遺産を巡ってトラブルになるリスクがある場合も注意した方がよいでしょう。

口座を放置するとどうなる?

相続人などが銀行に名義人が死亡したことを連絡すると金融機関は口座の入出金ができないように口座凍結します。直接連絡が無くても訃報などで情報を仕入れると勝手に凍結をします。なぜ金融機関がそこまでするかというと、故人の名義からキャッシュカードなどで相続人が引き出すことができる状態にして相続人が引き出した後に他の相続人とトラブルが起こるケースが実際にあるからです。

また、死亡の連絡を行わなくてもそのまま口座を放置すると最後の取引から10年経過すると休眠口座となります。休眠口座となると、公益に資する事業などの費用に支出されることになります。

一定の時間が経過すれば預けている預貯金の額から公益関連事業の資金として使われることになりますので、間接的に社会貢献ができていることになります。

休眠口座となってからも手続きを行うことで当初の残高を全額返金してもらうことができます。

簡易手続きが可能な金融機関もある

通帳に入っている金額が少額の口座の場合、相続人が簡易的に手続きしやすくなっている金融機関もあります。

代表的な例としてゆうちょ銀行では貯金の額が100万円以内の口座に限り、簡易的に相続人1人が単独で手続きを出来るようになっています。ゆうちょ銀行のように、金額によって簡易的に手続きができる事例も増えていますので、取引金融機関に確認してみるとよいでしょう。

名義預金は注意が必要

名義預金とは子どもや孫に相続税対策の一環として贈与税の基礎控除の範囲で生前贈与をしているケースで、子や孫の名義になっているものの、祖父母などが口座を実質的に管理している例があります。

贈与自体は選択肢として有効な手段ですので、多くの人が使われていますが、通帳や印鑑などの管理を贈与者がしている場合、実質的に贈与が行われていないものとして、贈与が法律上成立していないと見なされる可能性があります。そのため、贈与者の相続財産として続きを行う必要が生じる可能性があります。

簡単な書式で構いませんので、贈与の契約書を作成し、しっかりと証拠を遺すことが重要です。

取引漏れを防ぐために事前の準備が有効

少額のため、あえて放置をするということも考えられますが、口座があることを把握しておらず取引が漏れてしまうということもあります。取引漏れを防ぐためにも事前の準備が有効です。具体的には財産の一覧を作成することや遺言書を作成するなど適切な準備をすることが考えられます。

遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言があります。自筆証書遺言は気軽に作成することができますが、家庭裁判所で検認を受ける必要があり、相続人の手間も多くあることや形式不備で無効となる可能性もあります。また、曖昧な書き方をしていた場合はどのような分け方をするか判断に迷う場合があります。

できれば、作成時に公証人に承認を得ることで確実に有効となる公正証書遺言を作成した方がよいでしょう。

ただし、遺留分がある相続人の配分を少なくし、遺留分侵害している遺言になってしまうと希望通りに配分できない可能性があります。遺留分を侵害している遺言を作ったことで、かえって話し合いや手続きに長期間かかってしまう状況になる場合もあります。そのため、配偶者や子どもなど遺留分がある人には一定額の財産を遺すようにしましょう。

遺留分などの制度や遺言の書き方や土地・建物などの不動産の記載の仕方が分からない場合は手数料はかかりますが、司法書士などの専門家に内容を相談し、遺言書の作成をした方がよいでしょう。

また、口座数が多い場合は生前にできる対策として事前に銀行の窓口に行って解約しておくことも一つの手段です。口座が多いと遺言があっても誰か代表となる者が主導でそれぞれの金融機関の払い戻しや口座の整理の手続きをする必要があり、負担になります。口座をまとめておくことで、負担を大きく軽減することができるでしょう。

相続税の申告は税理士に相談を

相続税の手続きは名義変更や相続税の申告などさまざまな手続きを同時進行で行う必要があります。相続税の申告は相続開始から原則10ヶ月以内に行う必要があり、取引のある銀行口座の預金通帳の確認や遺産の評価や配分を検討していると時間もあまり余裕はありません。

期限である10ヶ月以上経過すると延滞税が課される可能性もあり、負担が増えてしまう可能性もあります。通常は相続は何度も経験するものではありませんので、基礎的な知識も無いのは当然です。自分で手続きを進めることが難しい場合は、相続手続きに実績のある税理士等の専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

広島相続税相談テラスでは必要に応じて弁護士や司法書士など他の士業が所属する弁護士法人や法律事務所も紹介し、相続に関するあらゆるお悩みを解決しますので安心してご依頼ください。

初回の相談は無料で応じてますので、まずは電話やメールなどでお気軽にご相談ください。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい