相続が発生すると相続人で協議を行ったうえで遺産分割の手続きを行います。しかし、被相続人の死亡後、相続財産が放置され、遺産分割されないケースがあります。
なかでも投資信託が放置されることは多く、後で気づくことが多い遺産の一つです。当記事では投資信託が放置される理由と、放置した場合のリスクについてポイントをおさえて解説します。
投資信託が放置される理由
投資信託は銀行や証券会社で購入することができる金融商品です。運用会社が運用を行い、信託銀行で保管している金融商品ですが、小口で投資ができてすぐに現金化できるため、人気の商品ではあります。一方で相続が発生した時に放置されることが多い資産です。
投資信託が放置される理由の一つに通帳への記載や証書が発行されないことがあげられます。銀行の通帳の残高が0円になっているとその銀行では取引がないと思う方も多いでしょう。
また、銀行口座の手続きには印鑑証明書の提出や相続人全員の署名必要です。そのため、名義の変更手続きを行わずに放置するケースも多いですが、投資信託のみ保有しているというケースもあります。
金融機関は相続が発生すると凍結されるため、銀行側が相続が発生した時に気づくと思われている方も多いと思いますが、銀行は業務の中で顧客から連絡が無いと相続が発生したことに気づきません。
相続する権利を持つ相続人自身が相続が発生した時点で連絡をしないと金融機関も気が付きませんので注意が必要です。
投資信託の放置を防ぐ対策
相続が発生した時に投資信託が相続人に放置される可能性を低くするにはどのような対策があるのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。
遺言を作成する
自分が亡くなった時に、財産の手続き漏れが無いように財産をまとめた一覧を作成し、遺言書を作成しておくとよいでしょう。遺言を作成しておくことで、誰が何を相続するかも事前に決めておくことができるので、合意を得るための話し合いをする必要が無く、トラブルが発生することもありません。
また、遺言書には相続発生後に遺言通りに手続きをする執行者を定めることも可能です。執行者に財産内容を共有しておくことで手続きがスムーズにできるという大きなメリットがあります。
執行者は税理士や司法書士を指定することもできます。費用はかかりますが、執行者は相続手続きを完了させる義務がありますので、相続人の負担を大きく軽減することができます。
遺言には公正証書遺言と自筆証書遺言があります。公正証書遺言とは公証役場で作成する遺言で、作成時点で法律上有効であることが確定します。一方で自筆証書遺言は自宅で保管する遺言ですので、費用もかからず気軽に作成できるというメリットがありますが、相続発生後に家庭裁判所の検認を受ける必要があり、もし形式不備などがあると無効となる可能性があります。
確実に遺言を残したいのであれば公正証書遺言で作成した方がよいでしょう。
よく取引をしている金融機関に移管する
上記で解説した通り、投資信託のみ取引している金融機関があると相続人が気が付かず、放置してしまう可能性があります。
しかし、年金の受取口座になっているなど普段から使用している金融機関にしておけば多くの人は取引きに口座の存在に気付くため、亡くなった際に故人が取引をしていたことに気づくでしょう。
投資信託はその金融機関が取り扱っている銘柄であれば、他の金融機関から移管することができます。購入手数料のかかる投資信託であれば、売却して再度購入するよりも費用を抑えることができます。他に取引をしている金融機関への移管を検討してみてもよいでしょう。
投資信託を放置した場合のデメリット
投資信託を放置した場合、どのようなデメリットがあるのでしょうか。
相続税の申告をし直す必要がある
相続税の計算は預貯金や株式、投資信託などの金融資産と不動産や金など現物資産も合計して評価を行います。相続税の申告は相続開始から10ヶ月以内と期限も短く、制度も複雑ですので、財産を受ける人が計算を誤ってしまうことも多くあります。また、保有している資産や取引している金融機関の数が多い場合は取引き漏れが生じる可能性も高いです。
投資信託を保有していることに気づかず、相続税の計算に入れていなかった場合、後で再度税金の計算を行う必要があります。
相続税の計算を怠った場合、後から問題となり加算税を請求される可能性があります。
時価が下落する可能性がある
投資信託は株式や債券などに間接的に投資をする金融商品ですので、毎日時価が変動する商品です。内容によっては大きく変動するリスクがある商品もありますので、放置することで大きく下落してしまう可能性もあります。
相続が理由となり名義変更をする場合でも早めに手続きをしないと売却することもできないので、注意が必要です。
相続に関するお悩みは専門家に相談を
相続が発生すると遺産相続のために、出生から亡くなるまでの戸籍謄本の収集や不動産の登記、財産の評価、相続税の申告書類の作成など、さまざまな手続きを同時進行で行う必要があります。家族の中に相続の知識がある人がいない場合は対応にかなりの負担がかかるでしょう。
特に相続財産が基礎控除を超える場合は相続放棄をせず財産を取得する人全員で原則10ヶ月以内に相続税の納付が必要となります。
自分で手続きをすることが難しい場合は弁護士や税理士、司法書士などのアドバイスを受けて適切に手続きを進めることをおすすめします。知り合いの中に紹介してもらうことが難しい場合はホームページなどで相続手続きに強い専門家を探してみるとよいでしょう。
広島相続税相談テラスでは、相続税の申告や手続について皆さんをサポートいたします。初回の相談は無料で対応しておりますので、相続手続きについてご不明点がある場合はお電話やメールでお気軽にご連絡ください。