相続が発生すると法定相続人で話し合いのうえ遺産分割の協議を行います。話し合って合意した内容は遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・押印をします。
しかし、遺産分割協議書が成立し、本人が納得したうえで約束したにも関わらず守らない親族がいる場合、どのように対処すればよいのでしょうか。当記事では遺産分割協議書を守らない人への対処方法を解説します。
遺産分割協議書が守られないケース
遺産分割協議書が守られないのは代償分割で財産を配分しているケースが多いです。代償分割とはアクセスのよい不動産など価値の大きい財産や事業承継に必要な資産を一人の相続人が引き継ぐために自分の財産から現金を他の相続人に支払うような分け方です。
例えば、長男が単独で1億円の不動産を相続する代わりに長男が保有している現金を5,000万円次男に渡すようなケースが考えられます。長男が次男に現金を渡すと遺産分割協議書で約束したにも関わらず、長男が資金繰りが難しいなどの理由をつけていつまでたっても債務を履行しない場合、次男は相続で何も財産をもらえなかったということになってしまいます。
遺留分も侵害されているため、遺産分割協議書を解除し、初めからやり直しをしたいと考える人も多いと思いますが、遺産分割協議書を無効にすると他の相続人にも影響があります。一度決めた遺産分割協議書を後で無効とすることは法的な安定性を著しく害するという理由から基本的に行うことができません。
遺産分割協議書が守られなかった場合の対処方法
遺産分割協議書で約束された債務不履行などの問題が発生した際はまずは自身で粘り強く請求をすることになります。しかし、相続人間でトラブルになり、応じてくれない場合は弁護士に相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。
弁護士との交渉でも対応してくれない場合は家庭裁判所で調停を行い、調停でも解決できない場合は訴訟を提起することになります。裁判で決着するとなると後で感情的なしこりを残すことになります。家族でトラブルを起こしたくないと考える人も多いと思いますが、相手方が応じてくれない場合はやむを得ないでしょう。
トラブルを防止する方法
遺産分割協議書が守られないという事態が発生した場合、解決することは時間がかかりますので、トラブルが発生する前に未然に防ぐ方法について解説します。
まず重要なことは、相手が代償金を支払う資金があることを確認することが重要です。不動産を登記した後に支払うお金がないと言われたら困りますので預金の額など支払い原資を確認しておくようにしましょう。さらに確実な方法は代償金の支払いを確認したうえで遺産分割協議書の署名・押印をするという方法です。他にも遺産分割協議書に代償金が支払われない場合は強制執行を行う旨を記載し、公正証書で作成することです。遺産分割協議書に記載をしておけば強制執行を行うことができますので預貯金や土地などを差し押さえることができます。
相続開始前であれば、亡くなってからトラブルが発生しないように遺言書を作成し、誰が何を取得するか明確に記載しておくとよいでしょう。生前に検討し、相続発生前に遺言書に記載しておくことで価値の大きい財産を一人の相続人に遺すことも可能です。ただし、遺留分を侵害してしまう場合は、注意が必要です。配偶者や子など遺留分をある相続人は相続放棄をしない限り、一定額を遺産相続する権利を持ちますので遺言が書かれていても遺言通りに分けられない例もあります。遺言書を作成する場合は法律事務所などで内容についても相談してみると良いでしょう。
相続のお悩みは専門家に相談を
今回は遺産分割協議が守られない場合の対処方法について解説しましたが、相続に関するお悩みはさまざまです。紛争が起こらなくても、知識もなく慣れない手続きも多いので自分で行うことは難しいという人も多いでしょう。
特に相続税の申告が必要な場合は預貯金、株式、不動産、金などあらゆる財産の評価を行い一覧を作成したうえで、相続発生から原則10ヶ月以内に相続税の申告手続きを行う必要があります。相続財産の種類が多い場合や相続人が多い場合は時間がかかる事例も多く、自分で行う場合は税理士等の専門家に依頼した方がよいでしょう。
広島相続税相談テラスでは皆さんの相続手続きのサポートをいたします。初回の相談は無料で対応しておりますので、基本的なことでも不明点がある場合はお気軽に電話やメール等でご連絡ください。