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相続時精算課税制度と「住宅取得等資金の非課税制度」の併用

2021年11月03日

金額の大きな住宅やその購入ためのお金を贈与しようとすると、気になるのが贈与税や相続税でしょう。
相続時精算課税制度を活用すれば2,500万円まで無税で贈与出来るので住宅などの高額な贈与に対する贈与税を節税できますが、より良い方法がないかと探している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、相続時精算課税制度と住宅取得等資金の非課税制度について解説します。

いずれも高額の贈与に適用可能な方法ですが、実は両方の制度を併用することも可能です。
記事を読んでいただければ、家に関する金銭援助の税金を軽減するための制度がご理解いただけるでしょう。

相続時精算課税制度とは

「相続時精算課税制度」とは、費途を問わず住宅などの贈与でも2,500万円未満であれば贈与税が免除される制度です[注1]。

2,500万円を超えた金額に対しては20%の贈与税が掛かってきますが、本制度を利用すれば金額の大きな贈与における節税に効果を発揮します[注1]。

相続時精算課税制度の要件としては、原則60歳以上の者が子供や孫に対して財産を贈与するときです[注1]。

高齢になった父母が持っている住宅を子供に贈与したり、親や祖父母が住宅購入の為の資金援助する場合などに、贈与税の節税をするため広く活用されるのが相続時精算課税制度です。また、毎年の基礎控除があり110万円までは非課税で贈与をすることが可能です。

相続時精算課税制度は生前に行うことができる相続税対策としてもつかわれていますが、事前に現時点の資産で相続税のシミュレーションを行って、どれくらいの効果があるか確認しておくとよいでしょう。

ただし、相続時精算課税制度は1月1日から12月31日までの贈与金額に対して課税する暦年贈与と選択制となっており、相続時精算課税制度を利用した場合は暦年贈与に戻ることはできません。

住宅取得等資金の非課税制度とは

住宅取得等資金の非課税制度とは、父母や祖父母から住宅用資金を受け取った場合に贈与税が非課税となる制度のことです。

住宅の新築に伴う土地、家屋・増改築のどちらに使われる資金でも対象となります。

非課税限度額は住宅の新築・増改築が完了した年月日や省エネ住宅であるかどうかにより変わります。

ただし、適用を受けるためには次のような要件を満たさなければいけません[注2]。

【適用されるための要件】

  • 贈与を受けた年の1月1日時点で贈与を受ける人の年齢が18歳以上の直系の親族であること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること
  • 平成21年から平成26年までに同制度を使用していないこと
  • 贈与された翌年3月15日までに住宅の新築・増改築を完了させ居住できること

上記のような要件を満たしている場合、利用できることになります。また、住宅を取得以外の家具などの購入に使うことはできませんので注意しましょう。

住宅取得等資金の非課税制度のメリット

住宅取得等資金の非課税制度にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

メリット① 相続時精算課税制度と同時に適用可能

受贈者等の条件を満たせば住宅取得等資金の非課税制度には、相続時精算課税制度と同時に適用受けることができるメリットがあります。

住宅を購入するときに、直系の父母や祖父母から住宅取得に必要な資金のうち一定額を贈与された場合に両方の制度を併用可能です。

新築する住宅の省エネ性能が高い場合に限られますが、もし併用したなら、最大4,000万円分が非課税とされるため節税効果はかなり大きくなり、税額を抑えることができます。

住宅を購入する際に父母・祖父母から資金を受け取れる場合、大きなメリットが感じられるはずです。

メリット② 生前贈与加算が不適用

もうひとつのメリットは、生前贈与加算の適用を受けずに済むという点です。

贈与した人が贈与した日から3年以内に亡くなると、原則、その贈与した財産を相続財産に加算して相続税を計算しなければなりません。しかし、この住宅取得等資金の贈与については相続財産に加算する必要がありません。

極端な話、贈与をした父母が贈与の次の日亡くなってしまった場合でも、加算しなくていいのです。

住宅取得等資金の非課税制度の注意点

住宅取得等資金の非課税制度には大きなメリットがありますが、活用する際には注意するべきポイントもあるので押さえておきましょう。

注意点① 贈与税の申告が必要

まず非課税制度により贈与税が課されなくても、申告が必ず必要です。申告を要件に本制度の非課税を受けることが出来るのです。

もし申告をしないと、本来は非課税であった贈与税が課税されることになり、高額な贈与の場合が多いので多額の贈与税が発生します。

さらに、延滞税や加算税などの罰則があるので、非課税の条件に該当しても必ず申告するようにしましょう。

注意点② 対象範囲が限定的

住宅取得等資金の非課税制度は、利用できる対象の範囲が限定的となっています。

対象者としての要件を満たしたとしても、合計所得金額や住宅完成期限、居住の期限なども要件のひとつとされているためです。

たとえば、贈与を受けた翌年の3月15日までに住宅の新築を終え、居住できる状態にしなければならないなどの条件も課されます。

対象範囲が限定的であるため、適用要件をよく理解して活用することが重要です。

住宅取得には相続時精算課税制度など非課税制度を活用

いかがでしたでしょうか?

この記事を読んでいただくことで、住宅取得における相続時精算課税制度と住宅資金等資金の非課税制度がご理解いただけたと思います。

所有する不動産の購入や売却にはさまざまな非課税制度があり、自宅の売却や買い替えの場合は特別控除があります。また、所得から費用を差し引くこともできますので、うまく届出をすることで所得税を抑えることも可能です。

非課税制度を活用する際には、書類の作成や特別控除に係る要件を確認する必要があり、一般の人が行うのは簡単ではありません。誤った申告をすると控除が認められず、将来税務調査で指摘される例もあります。

自分で手続きを行うことに不安がある場合は先に税務の専門知識を持つ税理士に相談しましょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。相続税は複雑で税制改正も多く、短い期間で財産の評価や申告書の作成が必要ですので、税理士のサポートが必要となるケースが多いです。
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[注1]参照:国税庁:No.4103 相続時精算課税の選択
[注2]参照:国税庁:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい