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相続税を抑える7つの控除【基礎控除】の適用条件と計算方法

2021年11月04日

被相続人の財産が多い場合、被相続人の住所の近くの税務署に相続税の申告書を提出し納税する必要があります。

遺産相続をした際の相続税を計算するときに「基礎控除」というものがあります。節税対策などで基本的な控除の情報を仕入れても、「本当に計算はあっているのか」「計算方法はこれでいいのか」と正しくできているか疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。税金の計算に間違いがあると、追徴課税などが発生する可能性もあるため入念にチェックして申告することが大切です。

そこで今回の記事では、親族が相続税を計算するときの控除額について、適用条件や計算方法を解説していきます。
記事を読んで頂くことで、基本の基礎控除額や計算方法がわからないと困っている方の具体的な悩みが解消されるはずです。

相続税の基礎控除とは

相続税における基礎控除とは、相続による課税分についてある一定の金額を超えなければ税金がかからない制度のことをさします。
相続した金額の合計額からこの基礎控除額を引いた結果がプラスになったときのみ、相続税が課税され、申告が必要となる仕組みです。

基礎控除額は、財産を相続する相続人の人数によりその金額は変わります。相続人の含まれるか否かの範囲は被相続人との関係によって順位が決まっており、配偶者は常に相続人、第一順位が子、第二順位が父母や祖父母などの直系尊属、その第三順位が兄弟姉妹となります。子や兄弟姉妹が亡くなっている場合は孫や甥・姪が代襲相続して財産を受けることになります。
そのため、相続税の申告の有無や税額も財産を相続する人の数により違うので、それぞれのケースに応じて計算が必要です。

しかし、この基礎控除を活用すれば、相続税が免除になったり課税額が少なくなったりするので必ず活用しましょう。

相続税基礎控除の条件

相続税が課せられなくなる可能性のある相続税の基礎控除は、基本的に適用の要件はありません。
相続した人であれば、誰でも必ず基礎控除を適用することができます。

ひとつ前の項目で解説したように基礎控除額は財産を相続する相続人の数により変わりますが、適用されないということはないので安心してください。

相続税の計算方法

それでは、相続税の基礎控除を用いて実際の相続税の算出方法について見ていきましょう。

相続税は、以下の①⇒④の順番で計算していきます。

① 各人の課税価格の計算

まず、相続や遺贈及び相続時精算課税を使って受ける贈与によって財産を取得した人ごとに、課税価格を次のように計算します。

相続又は遺贈により取得した財産の価額(注1)- 債務及び葬式金額+相続開始前3年以内の贈与財産の価額=各人の課税価格(千円未満切捨て)

(注1)みなし相続財産や相続時精算課税に係る贈与財産は加算し非課税財産は控除します。

② 相続税の総額の計算

相続税の総額はイ⇒ホの順番で計算します。

イ 課税価格の合計額(注2)=各相続人の課税価格の合計

(注2)上記①で計算した各人の課税価格を合わせて、以下の式で課税価格の合計金額の計算をおこないます。

ロ 課税遺産総額=課税価格の合計額 - 基礎控除額(注3)

(注3)基礎控除額=3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

預貯金・有価証券・生命保険の保険金・不動産(土地・建物)・金などの現物資産、など各財産の全額を一覧にして評価を行い、借金、ローンなどのマイナスの資産や葬儀にかかった費用を差し引き課税価格を算出します。

課税価格の合計額から基礎控除額を差し引いて、課税される遺産の総額を計算します。例えば、相続人が配偶者、子ども2人の場合、法定相続人は3人になりますので、基礎控除は4,800万円ですので、4,800万円を超える場合のみ相続税が課税されます。基礎控除を超える場合も基礎控除を差し引いて計算します。

養子縁組をしている養子がいる場合は被相続人に実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までが基礎控除の対象となります。相続について放棄をした相続人がいたとしても基礎控除の数には加えます。

この段階で被相続人の財産の課税価格の合計額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。相続税の申告も不要です。

基礎控除は平成27年に改正されて現在のルールになっています。改正前は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数でしたので、基礎控除の金額が大幅に減り、課税対象となる人が大幅に増えました。まずは自分の法定相続人の数を把握して、いくら財産を持っていれば相続税がかかるか確認しておきましょう。

法定相続人の数は生命保険の非課税枠(500万円×法定相続人の人数)にも関係し、相続人が多ければ多いほど控除できる金額が大きくなります。相続税がかからないことが確認できれば、その時点で相続税を申告する準備は必要ありませんので、安心できるでしょう。

ハ 各法定相続人の取得金額の計算

上記ロで計算した課税遺産総額を、各法定相続人が民法に定める法定相続分に従って取得したものとして、各法定相続人の取得金額を計算します。

ニ 算出税額=法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額 × 税率

上記ハで計算した各法定相続人ごとの取得金額に税率を乗じて相続税の総額の基となる税額を算出します。

ホ 相続税の総額=各法定相続人ごとの算出税額の合計

上記ニで計算した各法定相続人ごとの算出税額を合計して相続税の総額を計算します。

➂ 各人ごとの相続税の計算

各相続人等の税額=相続税の総額 × 各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計額

上記②で計算した相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格に応じて割り振って、財産を取得した人ごとの税額を計算します。

最後に各相続人等の税額から各種の税額控除額を差し引いた残りの額が各人の納付税額になります。

国税庁の公式サイトには、上記のように基礎控除額の計算方法が記載されています。
具体的な計算について2種類で確認してみましょう。

【財産を相続する相続人が2名の場合】

3,000万円 + 600万円 ×2名(法定相続人の数)=4,200万円

【財産を相続する相続人が4名の場合】

3,000万円 + 600万円 × 4名(法定相続人の数)=5,400万円

つまり相続した金額の合計金額は、財産を相続する人の数が2名の場合は4,200万円未満、財産を相続する人の数が4名の場合は5,400万円未満であれば相続税が課せられず、申告の必要もなくなるのです。上記の例のように、基礎控除額は、相続する人の数(法定相続人の数)に応じて計算します。

相続税の計算は基礎控除額を差し引いて

ここまでご覧になっていかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで相続税における基礎控除についてご理解いただけたと思います。
基礎控除額自体の計算は簡単ですが相続税の計算方法は非常に複雑です。

一般的に利用されいている基礎控除や小規模宅地の特例以外にも、特定の障害者や未成年者がいる場合に適用できる障害者控除や未成年者控除などあらゆる特例があります。

自宅の土地の評価を軽減したり、実際に納税する額を減らしたりすることができます。また、配偶者控除を使う場合、同じ財産でも分割の割合によってかかる納税額が大きく異なることがありますが、自分で申請をする必要があるため注意が必要です。

また、財産の割合を指定したい場合は遺言書を作成することをおすすめします。遺言書を作成することで、相続人間で話し合い必要がないため、家族の負担を減らすことが可能です。

相続税の申告手続きは複雑で注意点も多くあり、専門家ではない、相続人が期限内に完了させることが難しいケースもあります。特例の利用条件も複雑な対応が必要となりますし、贈与をしている場合は贈与税との関わりも出てきます。誤った金額で申告した場合は税務署から税務調査を受け、加算税を請求されるケースもあります。自分で調べることもできますが、相続税の申告の経験がない人が自分で行うことはかなり難しいでしょう。

費用はかかりますが、確実に期限内に申告書をを提出するために、ご自身で行うよりも専門知識を持つ税理士に相談するのがおすすめです。普段から業務として行っている税理士に依頼することで、適用できることに気づかなかった特例を適用できるメリットもあり、結果的には負担が減る可能性があります。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
税理士選びにお困りなら、まずは無料相談でお気軽にご相談ください!

参照:国税庁:No.4152 相続税の計算

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい