両親が亡くなったときの相続は、一次相続と二次相続に分かれます。後者は前者よりも相続税額が高くなりがちです。二次相続の概要と、相続税額が高くなりやすい理由、これからできる対応策について解説していきます。相続や相続税が気になる人はぜひ参考にしてみてください。
二次相続とは
二次相続は、1回目の相続の後に起こる次の相続のことです。夫婦の一方が亡くなり、もう一方の配偶者や子供達が財産を引き継ぐことを一次相続と呼びます。その後、一次相続で相続した配偶者が亡くなって生じる次の相続を二次相続と呼ぶのです。
両者は相続人が異なります。一次相続は、基本的に配偶者と子どもが、二次相続では子どもが相続人となります。したがって、基礎控除額、死亡保険金・死亡退職金の非課税枠等に違いが生じます。
基礎控除額の計算式は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。いずれ発生する二次相続の時には父親か母親のいずれかがいないため、基礎控除額は少なくなります。
死亡保険金・死亡退職金の非課税における法定相続人1人あたりの非課税限度額は500万円です。基礎控除と同じ理由で、二次相続のタイミングでは最大で使える死亡保険金・死亡退職金の非課税の非課税限度額も少なくなります。
更に、二次相続の相続税が一般的に高くなる理由は相続人の減少による税率の上昇です。
例えば、課税遺産額が1.2億円の場合に、相続人が1人と2人と3人の場合の相続税は以下の通りです。
(相続人が1人の場合)
1.2億円×40%-1,700万円=3,100万円
(相続人が2人の場合)
(1.2億円÷2人)×30%-700万円=1,100万円
1,100万円×2人=2,200万円
(相続人が3人の場合)
(1.2億円÷3人)×20%-200万円=600万円
600万円×3人=1,800万円
以上のシミュレーションの様に、相続税の計算は、課税遺産額を法定相続分で按分して税率を乗じる為、税率の差が生じ、結果的に遺産の金額が同じでも相続人の数によって相続税が変わるのです。
その他では、配偶者控除(配偶者の税額軽減)を受けられない、一定の条件を満たすと相次相続控除(税額控除)を受けられるなどの違いがあります。
夫と妻の財産に大きな差がある場合は、どちらが先に亡くなるかによっても税金が違ってきます。二次相続では多額の税金がかかる場合もありますので、しっかりと金額を把握していただき、備えることが重要です。
二次相続に向けた対策を
二次相続は、1回目のときと相続税を計算する条件が異なります。具体的な金額はケースで異なるものの、配偶者控除の特例も利用できませんし、同居の親族がいない場合、小規模宅地の特例も使えないことが多いので、相続税額は1回目の相続よりも高くなるケースが多いでしょう。また、一次相続が発生した時にはもう一人の親も高齢となっているケースが多く、対策は限られます。そのため、一次相続が発生する前に現在の状況をふまえて今後の対策を決定しておいた方がよいでしょう。
したがって、1億円以上の資産を保有する資産家の方は段階を踏んで何かしらの対策が必要です。どのような対策をとることができるのか具体的にご紹介します。
まずは現状把握
相続税対策について、まずすることは、現時点での現状把握です。自宅の土地や建物、預貯金や株式、投資信託などの金融資産などあらゆる財産を評価して、財産の総額がわかる一覧を作成することで検討しやすくなります。被相続人の財産が1億円を超える方と、基礎控除を少し超える方では相続税対策の方法も異なります。財産をまとめて、いくらくらい税金がかかりそうかをまず把握するようにしましょう。
また、土地など分割できない財産を多く持つ場合など状況により対策の方法は異なります。小規模宅地特例など各種特例の要件を満たすかどうかも事前に確認して、知っておくことが重要です。
まずは現状把握をすることで、基礎控除以内に収めて税金をゼロにすることを目指すのか、ある程度相続税が減ることで良しとするのか、目標を決めてから、それに応じて具体的な対策について考えることが大切です。
生前贈与
基本の対策で簡単にできるのが子に対する生前贈与で、中心となる対策の一つです。暦年課税制度を選択すれば、年間110万円までの贈与は贈与税がかからない制度となっています。毎年、非課税枠を活用し子供や孫などに生前贈与を活用することで、課税価格に算入される相続財産を減らすことができるため、相続税の負担を抑えることができます。
簡単で確実に税負担を減らすことができるため、良い対策でありますが、相当な時間がかかります。贈与する子が1人の場合、10年かけても1,100万円しか圧縮できませんので、財産が多い方は早めに対策を始める必要があります。子どもだけでなく、孫など複数の人に贈与をすることで、トータルで効果を大きくし、次の世代の多くの財産を残すことができます。
生命保険の非課税枠の活用
生命保険の非課税枠は法定相続人×500万円までの範囲で利用することができます。法定相続人の数が多い場合、非課税枠も多くなりますので、ぜひ最大限利用したい相続税対策の一つです。
また、生命保険は受取人を決めることでスムーズに財産を受けることもできますので、当面の生活するための資金を確保することも可能です。また、生命保険に加入後に受取人を変更することも可能です。
養子縁組
養子縁組は孫などを養子にすることで、相続人を増やすことです。相続人を増やすことで、基礎控除を増やすことができます。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで養子に加えることができます。ただし、養子縁組で孫を養子にした場合、相続税の2割加算の対象となりますので注意しましょう。
不動産の購入
不動産の評価は土地と建物に分かれており、土地は路線価×面積。建物は固定資産税評価で評価されます。路線価は実勢価格の8割程度、固定資産税評価は5割~7割程度で評価されますので、実際の売買金額よりも評価を低く抑えることができます。
そのため、自身の居住用だけでなく、2世帯住宅など家族の居住用や投資用として取得しておくことで相続税対策になります。投資用の場合、値上がりすることや家賃収入を得ることができますが、将来、空室状態が長く続くリスクもあります。投資用として購入する場合は、不動産の特徴や駅までのアクセスなど、賃貸用として資産価値を保つことができそうか、十分に説明を受けて購入するようにしましょう。
相続税対策をする際の注意点
上記のような相続税対策にはデメリットがないわけではありません。
相続税対策を行う際の注意点はどのようなものがあるのでしょうか。相続税対策でおさえておくべきポイントを確認しておきましょう。
配分に注意
相続税対策を優先しすぎると相続権を持つ親族間で相続する割合に差が出て、結果として特定の人が有利になるケースがあります。例えば、孫を含めた生前贈与をする場合、孫の数によって兄弟姉妹の家族単位では贈与する金額に差がでます。
父か母のどちらかが存命の場合、話し合いでまとまることも多いですが、民法で定める法定相続割合通りの配分と大幅に差が出ることで、相続発生後に遺産相続でトラブルになります。それぞれの主張があり、話し合いで解決できない例では、弁護士も交えて協議が必要となる場合もあります。相続権のある人だけでなく、その配偶者が出てきて、兄弟で余計に揉めるケースも多くあります。
遺産分割協議の際にトラブルになることが予想される場合は、トラブルを防ぐために遺言書を作成しておくなど、関係が悪化しないように配慮して対策を行いましょう。遺言を作成しておくことで、相続人同士が遠方に住んでいる場合や人数が多い場合など、頻繁に会えない場合でも、分け方について話し合う必要がないため期限内に手続きを完了させることができる可能性が高くなります。
手続きの負担が増える
相続税対策をするために預貯金をあらゆる資産に配分していた場合、相続人の負担が大きくなるケースがあります。評価額が高い預貯金を不動産など、評価を減額できるものに変えることで、課税対象となる財産の合計は減りますので、税負担を減らす有効な手段ではあります。しかし、所有する不動産の登記を司法書士に依頼する手間が増えるなど、財産の種類が増えることにより、資料の作成や名義変更の手続きも変わってきます。税金は減っても、手間が増える場合がありますので、財産の内容が変わることによるデメリットもしっかり考慮して、遺族に負担がかからないように対策を行っていく必要があるでしょう。
資金が不足する可能性がある
生前に贈与に加え、不動産の購入などの手段を用い、手元の資金を減らすことは節税の観点では有効な手段ではありますが、資金を減らし過ぎることで生活資金や納税資金が不足する可能性があります。
特に不動産は思うように収益が入らない場合や、天変地異などで物件の修理にお金がかかる場合もあります。今後かかる可能性があるコストや納税額を把握して、生活費として使うための手元の現金が減り過ぎないよう十分に配慮して対策を検討するようにしましょう。
二次相続は税理士に相談
いかがでしたでしょうか?今回は、二次相続について解説しました。二次相続は掛かる税金が高くなりがちです。また、まとめ役の親が不在なため、相続人間で揉めるケースが少なくありません。
二次相続も含めた相続税の計算は非常に複雑で知識がない方、計算を行うのは簡単ではありません。税制改正も頻繁にありますので、心配な方は事前に税理士へ相談し、提案を受けるとよいでしょう。
また、申告漏れや誤りがあった場合、税務調査で税務署からかなり詳細にチェックされる可能性があります。税務調査は3年以内に入ることが多く、申告後も完全に安心することはできません。調査で不備が指摘されると加算税を請求される場合もあります。
費用はかかることになりますが、税金のプロである税理士に申告を依頼することも可能です。税理士に依頼することで、財産の評価や特例の適用可否の判断、納税も依頼できるため安心です。初回の相談は無料で応じてくれる税理士もいます。相続税は相続開始後10ヶ月という短い期間で完了させる必要があります。そのため、自分では何から始めていいかわからない方は専門家である税理士に早めに相談することをおすすめします。
税理士に相談する際は、財産の一覧表を作って持っていくとスムーズです。税理士に来する際は相続税の申告実績が豊富で相続を普段から業務として行っている税理士に依頼するようにしましょう。知り合いに税理士がいない場合は税理士のサイトなどで税理士事務所・税理士法人の実績を確認するようにしましょう。
広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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