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110万円までなら非課税!暦年贈与と各種特例について解説します。

2022年09月17日

相続税対策として有効な手段が贈与です。基礎控除を超える財産を保有している人は、生前に次の世代に財産を渡しておくことで、相続発生時の課税対象財産を減らし、相続人の負担を軽減することが可能です。しかし、贈与に関する制度は複雑で有効に活用するためには知識を身に着ける必要があります。

当記事では相続税の対策で贈与をするメリットや注意点について解説していきます。

暦年贈与

暦年贈与とは1月1日から12月31日までの1年間の贈与額に対し課税される制度です。原則年間110万円以下の金額であれば、贈与税は非課税です。110万円を超える場合、贈与税の申告が必要となりますので注意しましょう。

ひとりあたり110万円まで非課税となりますので、毎年子どもや孫に非課税の範囲で贈与を続けていけば、財産を大きく減らすことができます。例えば、子供が2人、孫が4人いる場合、110万円×6人=合計660万円の資金を1年に贈与することが可能です。長期間続ければ、大きく財産を減らすことができるため、節税することが可能です。10年続ければ累計で6,600万円とかなり大きな金額を非課税で贈与することが可能です。

暦年贈与を多くの人が利用している理由は、簡単で確実で効果が大きい点があげられるでしょう。

非課税で贈与する金額は110万円が限度ですが、110万円を超えなければいくらでもよいので、渡す金額は100万円でも50万円でも構いません。妻や夫の財産が少ない場合は配偶者に贈与をしておくことも効果があります。

贈与に期限はありませんので、少額でも少しずつ渡すことで大きな金額となりますが、相続により財産を取得する者に死亡する前3年以内に行った贈与は相続財産として相続税の課税対象に加算されます。亡くなる直前から贈与を初めても意味がありませんので、早めから贈与を始める必要があります。

贈与契約は口頭でも成立しますが、証拠を残すために贈与契約書を作成しておいたほうがよいでしょう。口頭で約束し、贈与を行った場合、税務署の税務調査が入った際にしっかりと証明できない可能性があります。契約書は面談して交わす必要はありません。会うことが難しい場合は郵送でやり取りしても問題ありません。

贈与に関する特例

贈与に関しては暦年贈与以外にもさまざまな特例があります。贈与に関する特例について解説します。

住宅取得資金贈与の特例

住宅用不動産を購入する資金や新築、増改築を援助するための贈与資金が非課税となる特例があります。通常の住宅の場合500万円、耐震、省エネ、バリアフリー住宅の場合1,000万円まで非課税となります。贈与を受けた人は贈与を受けた翌年3月15日までに贈与を受けた全額を自宅用の住宅取得用として支払う必要があります。贈与を受ける人は成人している必要がありますので、18歳未満の人は利用できません。

この特例は親から子への贈与であっても居住用の不動産に限られていますので、資産運用の一環で購入する投資用不動産は対象となりません。この特例の適用を受ける場合申告の手続きが必要となりますので注意しましょう。

この制度は令和4年1月1日以降、令和5年12月31日までの特例となっています。以前からある制度なので、一定額の住宅取得資金贈与を非課税枠を設ける制度は残る可能性が高いと思われますが、いくらまでの贈与が非課税となるかは変更となる可能性があります。

教育資金の一括贈与の特例

教育資金贈与の特例は直系尊属から最大1,500万円まで一括で贈与し、信託銀行などで信託することで、非課税となる制度です。贈与後は信託銀行などに専用の口座を作成し、教育費として支払ったことを証明する領収書を提出し、出金することになります。

この特例を活用し、祖父母から孫やひ孫などに贈与をすることで、相続税対策を行いながら資金を有効に活用することができます。贈与した資金を将来無駄遣いされたくないと考える方はこの制度を活用すると良いでしょう。

教育資金の一括贈与の場合、金融機関を通じて贈与を行うことになりますので、贈与契約書を作成する必要はありません。

原則30歳まで使いきれなかった残額は贈与税の対象となりますので注意が必要です。

結婚・子育て資金一括贈与の特例

結婚・子育て資金一括贈与の特例は結婚・子育て関連の資金に限り1,000万円まで一括で贈与ができる特例です。

結婚・子育て資金一括贈与の特例は教育資金と同じく、信託銀行などの金融機関で契約し、専用の口座を作成し、領収書などを提出し請求していくことになります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は一括で2,500万円まで贈与を行って、相続時に相続税として精算する制度です。相続時精算課税制度で贈与した財産は贈与があった時点の時価で相続税の評価を行います。

預金や現金だけでなく、株式など今後値上がりが期待できる資産や、定期的に収入を得ることができる不動産を贈与すると有効です。贈与額が2,500万円を超える場合一律20%で課税されます。

ただし、相続時精算課税制度を利用すると暦年贈与に戻ることはできませんので、年間110万円までの贈与はできなくなります。節税対策を目的とするのであれば、どちらが得になるかよく考えて選択する必要があるでしょう。

また、相続時精算課税制度を利用する場合は税務署に申告書を作成し、提出する必要があります。

夫婦間の住宅贈与

婚姻期間20年以上の夫婦間で住宅の土地や家屋を贈与した場合、2,000万円まで非課税で贈与をすることができます。配偶者に相続財産を遺す場合、配偶者の控除により相続税はかからない場合がほとんどですが、夫婦の間で保有する財産に大きく差がある場合は有効な対策となります。

この特例は婚姻期間20年以上の夫婦のみ適用できることからおしどり贈与ともいわれています。

生前贈与をする際の注意点

生前贈与にはデメリットもあります。生前贈与をする際にどのような点に注意をすればよいのでしょうか。生前贈与をする際の注意点を解説します。

税制改正が頻繁に行われる

生前贈与に関する課税制度は頻繁に改正されています。常に最新の情報を確認しておかないと、誤った方法で贈与をすることになってしまう可能性があります。

特例には様々な種類があり適用するための要件も変わることがありますので、手続きを行う前に税理士などの専門家に特例の概要やポイントを確認して、制度を理解してから贈与をするようにしましょう。

贈与をした資金は受贈者の資金になる

当たり前の話ですが贈与した資金は贈与を受けた人のお金になります。資金を渡してからやっぱり返してほしいというわけにはいきません。自分の生活費を確保したうえで贈与を行う必要があります。

また、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられていますので、贈与した資金は受贈者が18歳以上になったら単独で銀行手続きを行い使うことができます。祖父母や父母が使ってほしくないと考えても、子や孫などの単独の意思でお金を使うことができます。若いうちに大きな金額が手に入ることで金銭感覚が狂い、教育的にもよくないと考える方も多いでしょう。

もし、贈与をした銀行口座の通帳や印鑑を祖父母など家族が管理していた場合などは名義借りとして贈与が成立していないとみなされる場合もあります。

費用がかかる場合がある

相続時精算課税制度などを利用して不動産を贈与する場合、登記費用や不動産取得税など、贈与に関連する費用がかかります。不動産取得税の税率は相続で取得する場合は0.4%、贈与で取得する場合の税率は2%ですので、不動産取得税の税率だけで考えると税率が高くなってしまいます。自分のケースでは生前に贈与をするか、相続が発生した後に取得するかどちらが有利なのかよく確認する必要があるでしょう。

バランスが崩れる場合がある

暦年贈与や贈与の特例を利用することでバランスが崩れてしまうことがあります。例えば、子供が長男、次男と二人いて長男には子供が1人、次男には子供が3人いるようなケースでは、暦年贈与や教育資金の一括贈与で次男の孫に贈与をすることで、長男家族と次男家族に贈与する額が大きく差がでてしまいます。住宅取得資金贈与の特例を行おうとしても時期があわないこともあるでしょう。

このようなケースでは税の負担は少なくなりますが、贈与者が亡くなった時の遺産分割で相続人間で揉めて、関係が悪くなる可能性がありますので、贈与した分だけでなく、全財産をまとめて一覧にし、資産の承継をどのように行うのかを、あらかじめ対応を検討する必要があります。

上記の特例で部分的の贈与をすることで配分のバランスが崩れてしまう場合は遺言などを作成しておくと安心です。遺言の作成は自治体のサービスで無料の講演会や相談会を行っている場合がありますので、参考にしてみてもよいでしょう。

他にも生命保険で受取人を指定することで、贈与した金額が少ない相続人の多く遺すという方法も有効です。税額と配分のバランスを考えて相続と贈与について検討するようにしましょう。

生前贈与で不安がある方は税理士に相談を

生前贈与はさまざまな制度を知っておくことで、有利に次の世代に財産を移転することができる一方で、特例も複雑で思わぬ落とし穴にはまることも多くあります。少しでも不安がある方は税務のプロである税理士に相談することをおすすめします。贈与税に関しては今後も改正があることが予想されます。これからいつ、どのような特例が改正されるのかわかりませんので、確実な情報を確認しておくことが重要です。

贈与を上手に活用することで、納税する金額を大きく抑えられる場合もあります。相続や贈与の申告に実績が豊富な税理士や税理士事務所に相談することが重要です。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい