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配偶者控除は使うべきでない?配偶者控除のデメリットとは

2024年07月28日

相続で財産を取得する者には相続税を納める義務がありますが、相続税には、事情を考慮してさまざまな特例が定められており、条件を満たす場合は家族が負担する税金をいくらか軽減することができます。

数ある特例の中でも控除の金額が大きく、多くの人が利用しているのが配偶者控除です。配偶者控除を利用することで、相続税の税額を大きく減らすことができますが、大きなデメリットがあることをご存知でしょうか。

当記事では配偶者控除の概要や見落としがちなデメリットについて解説します。

配偶者控除とは

配偶者控除とは相続が発生し、配偶者が財産を受ける場合に相続税から一定額が控除され、非課税となる制度です。夫婦間で住宅や預貯金などの財産を渡しあう場合に税負担を強いるべきでないという理由があり、控除の金額は大きく1億6,000万円または法定相続分までは相続税がかかりません。

大きな財産を取得しても相続税がかからないため、非常に軽減効果の大きい特例制度といえるでしょう。実際に多くの人が活用しています。

なお、相続発生時点で被相続人と婚姻関係である必要がありますので、離婚した元妻や事実婚で内縁関係の場合は適用することができません。

配偶者控除のデメリット

配偶者控除は控除額も大きく、メリットも大きい制度です。配偶者控除を最大限利用するために子供は相続放棄をするという事例も多くあります。

しかし、配偶者控除を利用することで、節税をするつもりがかえって相続税が高くなる事例があります。配偶者控除を利用することで、相続税が高くなるケースでは夫婦で財産が多くあり、二次相続の時に相続税の負担が多くなってしまうケースです。

一次相続とは夫婦の一方が亡くなったタイミングの相続のことで、二次相続とは遺されたもう一人が亡くなるタイミングのことです。相続税は財産から基礎控除を差し引いた後、法定相続割合どおりに配分したものと仮定して、各相続人がそれぞれ取得する金額に応じて、税率が決まります。一次相続ですべての財産を配偶者に渡した場合、二次相続が発生した際に配偶者の資産が増えています。

その分、二次相続の時に財産が大きくなっており、財産が大きければ税率が高くなる仕組みになっているため、かかる相続税の負担が大きくなり、一次相続と二次相続合計の相続税が配偶者控除を利用しない例よりも増えるケースがあるのです。

そのため、配偶者控除を利用する場合は二次相続にも注意して分割方法を決める必要があります。

配偶者控除を利用する場合のシミュレーション

配偶者控除を利用する場合、一次相続と二次相続ではどのように税金がかかってくるのでしょうか。子供が2人いるケースで夫婦の財産の額によってどのように税金が変わるか、具体例を示して下記に解説していきますので参考にしてください。

①夫の財産が1億円、妻の財産が2,000万円で夫が先に死亡した場合

夫の財産が1億円の場合、妻にすべての財産を遺すと配偶者控除で控除できる1億6,000万円以下になりますので、一次相続での相続税は0円になります。ただし、二次相続で配偶者の財産は1億2,000万円となっており、その後の二次相続での相続税は1,160万円となります。

一方で一次相続で民放で定められた法定相続割通りに配分した場合、一次相続では316万円かかり、すべて配偶者に遺す場合に比べて負担は大きくなるものの、二次相続での相続税あ320万円と大きく下がります。合計で636万円となり、一次相続で妻にすべて遺す場合と比べて524万円少なくなります。

②夫婦ともに5,000万円ずつ財産を保有している場合

すべて配偶者に遺した場合、相続税は0円となりますが、二次相続で財産を5,000万円相続し、合計1億円となっていることで税率も高くなるため770万円と多額の税金がかかります。

一次相続で法定相続割合通りに配分した場合、一次相続の相続税は10万円、二次相続での相続税は396万円で合計で406万円となり、こちらも一次相続で配偶者控除を最大限利用するよりも負担は少なくなります。

今回は二つのパターンで解説しましたが、どちらのパターンでも配偶者控除を使うかどうかで最終的にかかる負担が大きく変わることからお分かりいただけたと思います。

上記のとおり配分によってトータルでどれくらい相続税が変わるのか、事前に情報を得てから話し合いをすることで、遺産分割もスムーズに進めることができます。二次相続も含めて把握してから判断することが大切です。

一次相続の際は二次相続で子供が相続するタイミングまで考えずに配分を考える方が多いですが、配偶者が多くの財産を取得することで、結果として二次相続での負担が大幅に増えてしまうことが問題となるケースもあります。

最大限配偶者控除を使うことで一時的には相続税の負担を軽減することができますが、二次相続も含めると必ずしも納める税金を軽減できるとは限りません。事前に二次相続もふまえて協議して配分を決めるようにしましょう。

二次相続の際の税金も知っておくことで、父や母が資金を相続しなくても生活に困らない状況なのであれば居住用の自宅不動産のみを所有権を承継し、金融資産は子供に遺すことを考えることができます。

遺産分割協議を相続発生後に全員で行うことは負担も大きいため、生前にプランを検討しておき遺言書を書いておくなど事前の対策を行うと相続開始後の負担を減らすことができます。

相続税の申告は税理士に相談を

預貯金や株式、生命保険や不動産など課税対象となる財産の総額が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超える財産を保有する人の相続が発生すると被相続人の死亡の翌日から10カ月以内と短い期間に税務署に申告書を提出し、納付を完了させる必要があります。相続が発生すると戸籍の収集や金融機関の名義変更や不動産の登記など他のさまざまな手続きが必要であっという間に時間が経ってしまいます。知識がない人が期限内に申告を完了させることは簡単ではありません。誤って申告をすると税務調査で指摘され、加算税を課される可能性もあります。

期限内に自分で相続税を算出し、申告書の作成や添付書類等の準備が難しい場合は専門家である税理士に相談するとよいでしょう。早めに税理士にサポートを依頼することで期限内に申告と納税を完了することができます。

知り合いに税理士を紹介してもらうことが難しい場合は、ホームページなどで普段から業務として申告をしており、相続税・贈与税に強い税理士事務所・税理士法人を探すことをおすすめします。税金には所得税や法人税などさまざまな種類の税金があります。税理士にも専門分野がありますが、相続税に強い税理士に依頼することで、土地や建物など遺産の評価や特例の要件もふまえて適切に対応することができますので安心です。

申告を依頼する場合は財産の内容や額によって費用がかかりますが、初回の面談はサービスで無料で応じてくれることが多いです。まずは正式に依頼する前に電話やメールで気軽に問合せし、相続財産を一覧の表にまとめて気軽に相談に行って費用を確認してみるとよいでしょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい