基礎控除を超える財産を保有する方が亡くなると、相続人に相続税の申告義務があります。
相続税の申告は被相続人の死亡の翌日から10ヶ月と期限が定められています。期限内に税務署に申告書の提出と納付ができないと、延滞税がかかりますので注意が必要です。
当記事では相続税の延滞税の概要や延滞税がかかるケース、計算方法について解説しますので、相続税の申告に不安がある方は参考にしてみてください。
延滞税とは
延滞税は原則、法定相続人が死亡を知った日の翌日から日数をカウントし、10ヶ月以内に申告と納付を完了させる必要があります。
10カ月以上過ぎてしまい、申告期限に遅れてしまった場合の延滞税の計算方法は2段階になっており、納付期限の翌日から2カ月以内に税金を納めた場合、2.4%、納付期限の翌日から2か月経過した場合は8.7%の税率で延滞税が課されます。
上記は令和6年時点の税率であり、延滞税の税率は金利情勢等を鑑み、毎年決定されています。延滞税の税率については国税庁のホームページで確認することができます(リンク)。
期限に遅れて延滞すると本来の相続税に加えて延滞税が加算されることになり、重い負担となります。また、故意に申告を怠ったり、悪質な財産隠しや記載漏れをした場合、税務調査で指摘を受け、ペナルティとして無申告加算税や重加算税が追加で課される可能性があります。追徴課税を課されると相続人の負担も大きくなりますので注意しましょう。
ただし、台風や地震などの災害でやむを得ない事情がある場合は期限が延長され、延滞税を免除される場合があります。特別な事情がある場合は税務署に相談してみるとよいでしょう。ただし、自分の仕事が忙しかった場合や納税資金を確保するために財産を処分するのに時間がかかった場合など個人的な理由では延長が認められることはありません。
相続税を期限内に申告するための対策
相続税は10ヶ月という短い期間で手続きを完了させる必要があります。相続税を期限内に申告するためには事前の準備が重要です。
財産の一覧を作成しておく
相続人の方が対応に困るケースとして多いのが、どのような財産があるかわからないケースです。税金を計算するためには被相続人が保有していた課税の対象となる財産の評価額に応じて計算する必要がありますが、そもそもどのような金融機関と取引をしてどのくらいの財産があるかわからないと計算することができません。
財産を確認することに時間がかかってしまうと、期限に間に合わない可能性がありますが、不動産や金融資産などを記載した財産の一覧の表を作成しておくことで、相続発生後の相続人の負担を減らすことができるでしょう。
また、権利関係が複雑な不動産など内容が複雑な相続財産がある場合は、事前に評価方法と金額を確認しておくことで、相続人の負担を軽減することができます。また、財産を確認することでどれくらいの税金がかかるかシミュレーションをすることが可能です。事前に確認しておくことで対処法も事前に確認することができます。
遺言を作成しておく
相続税の計算は各相続人の取得する割合に応じて計算を行います。そのため、遺産分割で財産を受ける配分が決まらないと相続税の計算も行うことができません。相続人同士で遺産の分割協議についてもめてしまうとかなり時間がかかるため、あっという間に期限を超過してしまいます。相続人が全国に散らばっていて頻繁に集まれない場合や、それぞれの事情があり主張がある場合の話し合いは簡単ではありませんので、10か月の期限に間に合わない可能性が高いでしょう。
感情的なもつれが解消されず、最悪のケースでは弁護士を交えて話し合いになることも少なくありません。一度話し合いがこじれるとあっという間に時間が経ってしまいます。期限を過ぎると特例の対象となる場合でも利用が認められなくなってしまうものもあります。いずれ発生する相続の際にトラブルとなることを回避しスムーズに手続きができるように、相続開始前に遺言書を用意しておくとよいでしょう。
延納・物納を検討する
相続税は原則現金で一括で納付する必要があります。
申告期限内に申告書を作成していても、財産の中に不動産の割合が多く、相続税を支払うことができない場合があります。このような場合は、相続税の延納扱いとなります。延納扱いとなった場合は、不動産の割合などによって税率が決まりますが、延滞税を支払うよりは少ない負担で済むケースが多いです。
他にも物納と言われる不動産など現金以外の資産で相続税を支払う方法もあります。物納は現物資産のまま納税できるというメリットがありますが、相続税評価額で納付することとなり、売却する際の時価と異なり、低く評価される可能性があります。また小規模宅地の特例を利用した場合は、特例適用後の評価額となりますので、注意しましょう。
金融機関で借入を行う
資金が足らず、自身のお金でも納税が難しい場合は銀行などの金融機関で借入を行うことを検討してもよいでしょう。土地を担保にする場合は登記簿など土地に関する資料を提出する必要があります。
金融機関に資金を借りることで延滞税や延納で納める金額よりも少ない利息で済む例もあります。現金が足りない場合は金融機関に審査を依頼してみるとよいでしょう。
申告期限に間に合わない可能性がある場合は税理士に相談を
相続財産の合計が基礎控除以下であれば、そこまで期限について気にする必要がありませんが、基礎控除を超える財産を保有していた場合、相続税は被相続人がなくなってから 10ヶ月と短い期間で申告を完了し税金を納める必要があります。
相続税の評価額の算出や特例制度の要件は複雑ですので、本などを読んでも簡単には手続きできません。
自分で行うと相続税の申告期限に間に合わない可能性がある場合は、税務の専門家である税理士にサポートを受けて手続きを進めるようにしましょう。税理士に申告を依頼することで、期限に間に合わせることができますし、間違いなく正しく申告をすることができますので、修正申告や更正の書類を作成する必要もなくなります。初回の相談は無料で応じてくれるケースが多いので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
また、特例や控除の申請漏れなども無くなりますので、実際に支払う税額が安くなる可能性もあります。相続税の申告を依頼する場合は相続税や相続税に関連の深い贈与税の申告普を普段から業務として行っており、実績があり、相続税に強い税理士事務所・税理士法人に依頼することをおすすめします。