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法人の設立は不動産を保有している人の相続税対策に有効?

2024年02月10日

相続税対策の方法はさまざまなものがありますが、課税の対象となる不動産を数多く所有しており、相続財産を受けることで、相続する者が多額の相続税がかかる場合があります。このようなケースでは、法人の設立をすることで、税金の負担を軽減することができます。

当記事では不動産事業を行う資産管理会社を設立することで、節税になるメリットや法人を設立することによるデメリットを解説しますのでぜひ参考にしてみてください。

法人を設立するメリット

節税目的で会社設立をすることで得られるメリットはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な効果とポイントを確認しておきましょう。

所得を分散することができる

法人化し、不動産を会社に移転し、不動産管理会社の役員を家族にすることで不動産の賃貸で得た利益を役員報酬として給与を家族に支払い、毎年得られる利益を分散することができます。そのため、長い期間かければかけるほど、効果が大きくなります。

個人事業主としてアパートなどを所有していた場合は、家賃収入はすべてオーナー自身の所得になってしまい、家族に報酬を配ると贈与になってしまいます。年間110万円の基礎控除を超える金額の生前贈与になってしまい、贈与税がかかりますので注意が必要です。

役員は時間を拘束される必要はありませんので、配偶者や子供などを役員にし所得を分配することで、相続発生時に資金が他の人に分散されているので相続税の課税対象財産を少なくすることができます。

所得税は累進課税ですので、一般的に収入が多い人の方が税率があがります。所得を分散できる制度を利用して所得が少ない人に給与として支払うことで所得税の減税になるケースも多くあります。上記の理由から法人の設立は家族のうち一人に収入と財産が集中している場合におすすめの方法です。

相続税評価が低く計算されることがある

個人で不動産を保有している場合の相続税の評価方法は土地は路線価、建物は固定資産税評価額で行い納税します。法人の場合、株式の評価と株主の保有株数で相続税評価額の算出を行います。法人が所有しているものとして不動産の評価は同じように行いますが、含み益については法人税の相当額の分を差し引くことが認められているため、実際の評価よりも下がる可能性があります。

死亡退職金の非課税枠を活用できる

会社の代表や役員が亡くなった場合、死亡退職金を支払うことが可能です。生命保険と同じように死亡退職金は500万円×法定相続人の人数まで非課税枠を使用して相続することができます。個人で事業を行っていた場合このような優遇はありませんので、法人を設立することによる一つのメリットと言えるでしょう。

法人を設立するデメリット

法人を設立することで、個人で不動産を経営する場合と比べてどのようなデメリットがあるのでしょうか。法人を設立する際に注意点を確認しておきましょう。

費用がかかる

法人化することで、法人の登記等、様々な手続きを行う必要があり、手続きに伴い無料でできるものばかりではありませんので、登録免許税や消費税などを支払う必要が出てくる場合があります。廃業の場合にも費用がかかります。

また、個人所有の場合は事業が赤字の場合、他の所得と損益通算し、所得税の負担を減らすことができますが、法人にすると赤字でも均等割りの税金を支払う必要があります。

経理や社会保険の手間が増える

法人化することで、会計・経理業務が複雑化することや社会保険の手続きなど個人で不動産を運営していた時にはなかった手間が発生します。経費の計上を誤ると税務署に指摘され、加算税を請求される可能性もあり、様々な対応が必要となります。これらの手続きを税理士や社会保険労務士に依頼する場合は費用も高くなってしまいます。

法人を設立すると通常の個人事業主に比べて負担が大きいことも理解して法人の設立を進めるか判断する必要があるでしょう。

法人の設立をご検討されている方は税理士に相談を

法人の設立の手続きや相続発生後に相続税の申告をする場合の株式会社の株式の評価は非常に複雑です。知識のない人が自分で行うことは難しいでしょう。法人の設立や相続税の申告に悩みを抱えている方は、税務のプロである税理士に相談してサポートを受けて手続きを進めるようにしましょう。

知り合いに税理士を紹介してもらうことが難しい場合は、ホームページなどで検索するとよいでしょう。税理士にも専門分野がありますので、法人の設立や資産承継の経験が豊富な税理士事務所・税理士法人に依頼することが重要です。

税理士に相談する際は財産の一覧を作成し、小規模宅地の特例の適用なども踏まえてシミュレーションを依頼するようにしましょう。法人を設立することで必ず節税になるわけではありません。実際に法人を設立することで、節税ができてもそれ以上に費用がかかり、中にはかえって高い税金を支払うことになる事例もあります。

税理士や相続人とよく相談のうえ法人設立が有効な手段なのか、将来のことも考えられる範囲でよく検討してから法人設立を行うようにしましょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい