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相続税を抑える7つの控除【配偶者控除】の適用条件と計算方法

2021年11月05日

配偶者からの相続で相続税対策を行いたいと考えている方に向け、相続税の配偶者控除について説明する記事です。

その後の生活を考えると相続は非常に助かるものですが、同時に「相続税」の心配をされる方も多いのではないでしょうか。相続税は所得税の累進課税と同じように、遺産が高額であればあるほど、財産に応じ税率は高くなり、多くの税金がかかります。

特に亡くなるまで同居をしている自宅などは、配偶者に遺すケースが多いため、一般的に相続割合の大きい配偶者が納める税負担が重くなります。

しかしこの控除制度を使って、申請することで課税の対象となる財産の評価が抑えられたり、最終的に税額が控除したりすることができますので、相続税がゼロになる可能性もあります。もし、制度や仕組みを知らないと多くの税金を払うことになりかねません。

そこで今回の記事では、相続税で配偶者が受けられる控除の概要や適用要件、計算式をご紹介します。
税金対策に欠かせない配偶者の控除を活用すれば、相続への不安も減ることになります。

相続税の配偶者控除とは

相続税の配偶者控除とは、被相続人の配偶者への相続時に掛かる税金を減らすことができる制度のことをいいます。

配偶者は被相続人の家族として、長年生活に献身的につくした人物であり、被相続人の資産の形成に貢献した人物であったこと。また、被相続人が亡くなった後の配偶者当人の生活を保証するために設けられた特例です。配偶者は子や兄弟姉妹と比べても多額の財産を相続することが多いでしょう。特に東京や大阪などアクセスがよく路線価が高い地域に住んでいる場合は、自宅の土地だけでも大きな財産になります。

配偶者が取得した課税対象の相続財産が1億6,000万円もしくは法律で決められた法定相続分のどちらか多い方の金額までが非課税となります[注1]。
つまり、少なくとも1億6,000万円以上相続しなければ税金がかからなくなります。また、法定相続分までであれば、2億円や3億円を遺贈しても相続税はかかりません。数ある控除の中でも相当控除額大きい制度といえるでしょう。

他にも自宅などの宅地を相続する際に適用できる小規模宅地の特例など、相続税を軽減する制度は数多くあります。このような特例を適用するためには書面を作成し、申告する必要があります。

このように制度を理解し、活用すれば、その節税効果は非常に大きくなります。知識があるか否かで相続税の納付額が大きく異なります。

相続税の配偶者控除の申告方法

配偶者控除を受けるためには、申告書を税務署に提出する必要があります。

この申告を行わなければ、たとえ財産を相続したのが配偶者でも控除が適用されませんので忘れないように注意が必要です。

また、この制度を利用して税額が0円の場合にも必ず申告書の提出は必要です。

申告手続きの期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です[注2]。

基礎控除の金額を超えていて、配偶者控除を活用する際には、必ず定められた期限内に申告書を記入し、忘れずに提出するようにしてください。申告を行わなかった場合は、税務調査で指摘され、相続税の納付が必要となる可能性があります。

被相続人の配偶者が代表して手続きをすることが多くなると思いますが、被相続人の配偶者は高齢であることも多く、場合によっては子供などのサポートも必要です。

相続税の配偶者控除が適用される要件

それでは、配偶者の控除が適用可能になる範囲について確認しましょう。

【適用されるための要件】

  • 仮装・隠蔽された財産ではないこと
  • 民法に定められた配偶者であること
  • 税務署に申告書を提出すること

控除を利用する条件は、一般的に見てもそれほど厳しくないはずです。基本的に婚姻関係にある配偶者は配偶者控除の適用が認められています。
遺産を仮装・隠蔽していたり、内縁関係での配偶者である場合には控除が受けられませんが、その他のケースであれば申告書の提出を行うだけで適用可能となります。

相続税の配偶者控除額の計算方法

次に控除の計算方法について説明していきます。
まずは相続した人全員の相続税の合計金額と、課税対象となる金額の合計を算出してから次のような式で計算しますので参考にしてみてください。

【控除額=相続税の合計金額×配偶者の相続割合】

そして、相続税の合計金額を求めるには次の計算式で、遺産の総額から債務を差し引き、さらに基礎控除額を差し引いたうえで、相続の割合でわけた後に、配偶者を含めそれぞれの税率から計算します。

相続税の計算式は簡単ではありませんが、次の例で具体的な計算方法を解説しますので、参考にしてください。

【相続税課税対象となる金額=遺産合計金額-基礎控除額】

課税対象となる金額とは、遺産すべての金額から基礎控除を引いた金額のことです。
具体例として、遺産合計金額1億円、法定相続人が配偶者と子供2人の合計3人として計算してみましょう[注3]。

配偶者が1/2、子供2人がそれぞれ1/4ずつ相続する例では以下のような計算になります。

基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円
相続税課税対象額:1億円-4,800万円(基礎控除額)=5,200万円
配偶者の相続税課税対象額:5,200万円×1/2(相続割合)=2,600万円
子供の相続税課税対象額:5,200万円×1/4(相続割合)=1,300万円
配偶者の相続税:2,600万円×15%(税率)-50万円(控除額)=340万円
子供の相続税:1,300万円×15%(税率)-50万円(控除額)=145万円/1人分
相続税の合計金額:340+145×2人分=630万円
配偶者が受ける控除額:630万円×1/2=315万円

上記の例のように算出されたように、配偶者が受けられる控除額は315万円となりました。配偶者が財産を受け取る場合、通常かかる相続税よりもかなり納税額は少なくなります。

配偶者控除の注意点

配偶者控除は控除額も大きく、ぜひ利用していただきたい制度ですが、注意点もあります。

配偶者控除の注意点は、配偶者控除を最大限活かすために、配偶者が相続する財産が多くなれば、二次相続でかえって相続税が高くなる可能性が生じるということです。

夫が先に亡くなり、妻が後で亡くなった場合、夫が亡くなった時が一次相続、妻が亡くなった時が二次相続です。夫が亡くなった時に配偶者控除を最大限活用するため、妻に全財産を相続させると、妻から子供に相続させる際に相続税が高くなります。

一次相続と二次相続の相続税がいくらくらいになるかは夫婦の財産によりますので、まずは財産を一覧の表にして、課税対象となる財産の総額と相続税の見込を把握しておくことが重要です。

一次相続が無税になったとしても、二次相続で実際に納める金額が結果として大きくなることもあるのです。

相続発生後に短い期間で相続人間で協議することは難しいものです。二次相続をふまえて相続税対策をする際は夫婦で生前に遺言の作成や生命保険などを活用して、どのような割合で誰が相続するかを検討して、遺言書を作成してもよいでしょう。

一次相続では子供が放棄をするケースも多いと思いますが、子供が財産を相続した場合と比較して、どのようにするべきか、相続人の事情も考慮したうえで話し合いをしておくことをおすすめします。

また、次の世代に財産を遺すためには生前贈与も有効な手段です。生前贈与は相続発生前3年以内の贈与は贈与税の対象ではなく、相続税の対象となりますので、早めの準備が必要です。

また、配偶者控除は戸籍上の配偶者に限られます。夫婦同然で生活しているいわゆる内縁関係であっても、戸籍通りに適用しますので、配偶者控除は使えません。

相続税の配偶者控除を活用して節税を

本記事では相続税の配偶者控除の内容や控除を受けるための税務の要件について解説しました。配偶者控除は配偶者が財産を相続する際に税の負担を軽減するものです。控除の枠や制度自体は分かりやすいものの、一次相続や二次相続を含めた注意点が多くあります。相続はいずれ必ず発生します。仮に、自身が亡くなった場合と、配偶者が先に亡くなったパターンのシミュレーションをして、配分を慎重に判断する必要があるでしょう。また、相続人の人数が多い場合は、自分で考えた通りに相続人全員が合意できるとは限りませんので、遺言書を作成しておくなど、対策を打っておくと安心です。

この記事を読んでいただくことで相続税の配偶者控除についてご理解いただけたと思います。
しかし、税金の計算は非常に複雑です。誤った申告を行った場合や、申告期限を過ぎてしまった場合、税務署から指摘され、加算税を請求され、修正申告の必要が出てくる可能性もあります。また、適用できる特例の適用漏れがあった場合、必要以上に多くの税金を支払うことになります。更正の請求で取り戻すこともできますが、手間がかかってしまいます。

自分で手続きをするのが不安なら、費用はかかるものの、遺産相続の実績のある専門の税理士に相談して間違いのないように案内してもらいましょう。相続税や贈与税は頻繁に税制改正がありますので、ポイントを抑えて申告手続きを完了してくれる税理士事務所や税理士法人を探すようにしましょう。

税理士に相談に行く際は財産をまとめて一覧にしておくとスムーズです。初回の面談はサービスで無料で行ってくれる税理士も多いので、気軽に問い合わせてみましょう。

相続手続きには、戸籍謄本などさまざまな添付資料も必要となるため、専門家に相談しながら早めに準備することが重要です。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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注1]参照:国税庁:No.4158 配偶者の税額の軽減
[注2]参照:国税庁:No.4205 相続税の申告と納税
[注3]参照:国税庁:財産を相続したとき

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい