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借地権を相続する際の相続税の計算方法は?

2024年09月23日

相続財産の中には評価方法が複雑な資産も多く、相続税の計算ができないとお悩みの方も多いでしょう。

課税の対象となる相続財産の中でも特に評価が難しいのが借地権の評価です。当記事では借地権の相続税評価について以下に解説します。

借地権とは

借地権とは借地借家法で定められており、他人の名義である土地を借りて上に居住用や事業用の建物等を建てて自己所有し、借地を利用するための地代を土地を持っている人(地主)に賃料を支払うことで土地を使用する権利のことです。

通常、借地権は建物を建て、建物が存続する限り土地を利用するために必要な権利と定められていますので、土地の評価の一部について相続財産として評価する必要があります。借地権には契約更新後、継続できる旧法借地権や普通借地権と契約満了時に借地権が終了する定期借地権等の種類があります。土地を事業に利用している場合は事業用定期借地権などの制度を利用することもあります。

借地権の相続税評価額はその土地の評価額に借地権割合をかけて計算します。借地権割合は地域により定められており、30%~90%の範囲で決められています。借地権は土地を利用するための借りる権利であり、自分の土地ではないため、その分、同じエリアでも一般的に所有権を持つ更地より価値は低くなります。

借地権の評価を行う場合はまず、その土地の評価を行うことになりますが、相続税の計算上の土地の評価は路線価×面積で算出します。路線価図や借地権割合は国税庁のホームページに記載がありますので、確認してみるとよいでしょう(国税庁ホームページ)。

路線価がない地域の場合は固定資産税評価額に所定の倍率をかけて計算を行います。

借地権の評価をする際の注意点

借地権を評価する際にはどのような点に注意をすればよいのでしょうか。具体的に確認しておきましょう。

地代を支払っていない場合は使用貸借となる

借地権が設定されている状態とはあくまで地代を支払って土地を借りる権利となります。親族などから無料で土地を貸してもらっており、建物を建てる用地となっているケースでも地代を支払っていない場合は使用貸借となり借地権は発生しません。

小規模宅地の特例の利用可能

借地権の場合、小規模宅地の特例を利用できないと誤解している方が多いですが、借地権でも利用することが可能です。最大330㎡まで80%減額することができる、効果の大きい特例ですし、特に東京など価額が高いアクセスが良い土地の場合は基準となる額が大きいため、減額効果も大きくなります。

小規模宅地の特例以外でも各種特例の概要を確認し、条件に該当する場合は適用漏れが無いようにしましょう。

売却が困難

相続財産を相続人が分ける際に、不動産などの現物資産がある時は法定相続割合通りに分けることが難しい場合があります。そのようなケースでは現物資産を売却し、現金化した後で分配するケースも多いですが、借地権付き建物は土地・建物を所有している場合と比べ、アクセスが良い物件でも売却が難しいケースが多いです。

地主との関係にもよりますが、地主に譲渡するか、地主から土地を買い取るか、底地の整理に強い専門の業者に依頼するなど、選択肢が少ないため処分に時間がかかるケースが多いでしょう。また、売却する時に相当低い金額となってしまうこともあります。

基本的に借地権付きの土地は分け方が難しく相続人間でトラブルが生じるケースもありますので、慎重に判断する必要があります。

借地権がある場合は税理士に相談を

相続税の申告は被相続人が亡くなってから原則10ヶ月以内と短い期間で行う必要があります。また、特例を利用することで、支払う相続税がゼロになる場合でも基礎控除を上回る場合は相続税の申告書を提出する必要があります。

相続税の計算は複雑で課税価格を確認するためにさまざまな資料を確認する必要があります。まずは預貯金や株式、不動産、金など課税対象となる財産を一覧の表にして、各資産の評価と総額の確認を行うようにしましょう。

誤って申告をした場合や手続きに思った以上に時間がかかり、期限を超過してしまった場合、税務署から税務調査で指摘され、加算税の支払いを請求される可能性があります。知識がなく自分で相続財産として評価額の確認を行うことが難しい場合は専門家である税理士に相談するようにしましょう。初回の相談は無料で応じてくれるケースが多いので、先に電話などで内容や状況を伝え、気軽に相談してみるとよいでしょう。

また、生前の対策として、財産の評価額を計算し、一覧にしてシミュレーションを作成しておくことや遺言書の作成、執行者として不動産の登記などの手続きを代行してもらうよう契約を行っておくことも可能です。借地権を保有している場合は負担も考慮すると第三者に遺贈することを検討してみてもよいでしょう。

対応できることは税務のプロである税理士のサポートを受けて、生前に行っておいた方が相続人の負担を減らすことができるため、税理士事務所・税理士法人に依頼することを検討してみるとよいでしょう。

 

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい