相続税の計算をする際はあらゆる財産の評価額を合計して、税額の計算を行います。
では、亡くなった方の未支給年金は相続税の対象となるのでしょうか。当記事では未支給年金の税務上の取り扱いについて解説します。
未支給年金とは
未支給年金とは本来年金を受給する権利が発生しているものの、まだ受け取っていない年金のことです。国民年金や厚生年金等の公的年金は死亡した月まで支給されますが、実際に年金が支給されるのはその翌月になりますので、必ず未支給の年金が発生することになります。
例えば、1月に亡くなった場合は1月分の年金が2月に支払われることになります。まだ受け取っていない公的年金は配偶者、配偶者が亡くなっている場合は子どもなど遺族が請求することで受け取ることができます。子どもがいない場合は父母や祖父母、兄弟姉妹と3親等までであれば後順位の親族が受け取ることが可能です。
未支給の公的年金の税務上の取り扱い
未支給の公的年金を受け取った者は相続税の課税対象として申告する必要があると考える人も多いと思いますが、実際には相続税の課税対象とはなりません。公的年金は受給権がある人と生計を一にする家族の生活を守るためのお金として支給されていますので、相続税は非課税となります。
一方で、未支給の公的年金を受け取った遺族の一時所得として所得税の課税対象となります。一時所得は特別控除が50万円ありますので、他に一時所得がなければ、未支給の年金が50万円以内であれば確定申告をする必要はありません。
基礎年金だけでは50万円を超えることはありませんが、厚生年金は保険料を支払った金額や期間によって、支給額が決まりますので所得が多かった場合50万円を超える可能性があります。50万円を超える場合は、超える部分の2分の1が所得税の対象となります。
私的年金の取り扱い
未支給の公的年金は課税対象とはなりませんが、自分で加入している年金保険や勤めていた企業の企業年金は相続税や所得税の課税対象となり、税金がかかる場合があります。どのような時に税金がかかるのか確認しておきましょう。
企業年金
企業年金の中には在職中に死亡した場合や、保証期間が満了していない場合に遺族一時金が支給されることがあります。遺族一時金は相続税の課税対象となりますので、申告が漏れないようにしましょう。
また、保証期間満了までの遺族給付金を定期金で受け取る場合も定期金を受け取る権利を相続したことになりますので、相続税の課税対象となります。
個人年金保険
個人年金保険とは生命保険会社で契約し、契約内容に応じて年金が支払われる保険商品です。
個人年金保険の中には有期や終身で相続人が引き続き年金を受け取ることが出来るものがあります。被相続人が保険料の負担をしているケースで、個人年金保険の未収年金の受給権を相続した場合、相続税の課税対象として申告する必要があります。
判断に迷う場合は税理士に相談を
今回は未支給の年金の税務上の取り扱いについて解説しましたが、財産や権利にはさまざまなものがあり、相続税や所得税の課税対象となるか判断に迷う場合もあるでしょう。
相続税の申告は相続発生後、原則10ヶ月以内に完了させる必要があり、時間もありません。受け取る財産の中に判断に迷う場合は税金の専門家である税理士に相談し、間違えがないように申告するようにしましょう。
国税庁のホームページに相続税の計算方法は記載されていますが、相続税の制度は複雑で特例の種類も多いため、対応することは簡単ではありません。また、誤って申告をした場合は税務調査で指摘され加算税を請求される事例もあります。
申告自体が難しい場合は税理士に依頼することも可能です。税理士の報酬は財産の内容によって決まることが多いので、財産の一覧を作成し、見積もりを依頼するとよいでしょう。