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貸家はどう評価する?相続税の計算方法を解説!

2023年05月04日

相続税の計算をするためには、課税対象となるあらゆる財産の評価額を確認する必要があります。相続対策の一環で土地の上に建物を建てて賃貸に出すことで、評価を下げることができると聞いたことがある人も多いでしょう。

当記事では貸家がなぜ評価がさがるのか理由と計算方法を解説します。

貸家の評価はなぜ下がる?

貸家とは土地・建物を保有している人が他の人に貸している状態です。通常、毎月決められた一定の賃料を徴収します。

貸家の評価が通常よりも下がる理由は日本の法律では借地借家法により、借主には借家権が認められており、強い制約があるからです。借家権とは借主として建物を借りている権利のことで、普通借家と定期借家に分かれています。

普通借家は期限の定めがない借家権で定期借家は期限の定めがある借家権です。定期借家であれば、一定期間経過後に返却してもらうことができますが、普通借家は期限がないため、正当事由がなければ借主に出て行ってもらうことはできません。

似た言葉として「借地権」についても理解しておく必要があります。借地権とは土地の保有者と家屋の所有者が異なる場合の権利で、土地を借りている人が建物を自分で建てて住んでいるという状態です。土地を借りている人は毎月一定の地代を支払うことになります。

不動産の評価方法

貸家の計算方法を確認する前に通常の土地・建物の評価方法を確認しておきましょう。

不動産は土地と建物に分けて評価を行います。自分で使う土地は自用地といわれ、路線価×面積で計算します。路線価がない地域は固定資産税評価額×倍率で評価を行います。路線価は時価の8割程度に設定されています。

路線価や倍率は国税庁のサイトで確認することができますので、保有している土地の評価額をご覧ください(国税庁)。

建物は固定資産税評価額で評価を行います。固定資産税評価額は時価の7割程度に設定されています。それぞれの評価方法で計算をすると土地・建物を売却する際の価格よりも相続税評価額の方が安くなります。

貸家の評価

次に貸家の評価について解説します。

土地の評価はまずは自用地として路線価×面積で評価を行います。アパートなどの貸家が建っている土地部分については貸家建付地として評価の減額を行います。貸家建付地の評価は以下の通りです。

【計算式】
自用地評価×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借地権割合は地域によって定められており、先ほどの国税庁ホームページで確認することができます。借家権割合は全国一律30%と定められており、賃貸割合は入居率によって決まります。全室満室の場合は100%です。

具体的に確認してみましょう。

1億円の土地で借地権割合70%、賃貸割合100%の場合1億円×(1-70%×30%×100%)となりますので、7,900万円の評価となります。

続いて建物を見ていきましょう。計算式は以下の通りです。

【計算式】
固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

借家権割合は30%ですので、賃貸割合が100%の場合、貸家の評価は固定資産税評価額の70%の評価となります。そのため、固定資産税評価額が5,000万円の場合3,500万円で評価します。

ポイントは建物を建てて人に貸すことで相続税評価額を下げることができるという点です。土地・建物の相続税評価は時価よりも安く設定されていますので、不動産を購入するだけで相続税を低く抑えることができますが、人に貸すことで更に評価を下げることが可能です。駐車場などで保有している場合、自用地として評価されますので、建物を建てる敷地として利用することを検討してみてもよいでしょう。

貸家の評価を控除できる特例

貸家の評価を減額できる特例がありますのでご紹介します。

貸家がある場合、貸付事業用宅地の特例を利用して最大200㎡まで土地の評価を50%減額することができます。ただし、自宅の土地を相続する際の特定居住用宅地の特例を利用する場合は注意が必要です。

両方利用する場合はそれぞれの面積を按分して適用する必要がありますので、面積や評価額を考慮してどのように使うか検討する必要があります。計算方法は非常に複雑ですので、併用する場合は相続税を専門とする税理士に相談するようにしましょう。

貸家を保有することのリスクは?

貸家を保有することで簡単に高い節税効果が得られます。しかし、貸家を保有することはリスクもあります。

空室リスク

マンションやアパートなどの貸家を保有するためには建築費や固定資産税などさまざまな費用がかかります。空室状態が長く続き経常的に赤字になっている場合、資産が目減りしていく可能性があります。賃貸経営は必ずしも継続してうまくいくとは限りません。そのため、節税効果よりも大きく資産が目減りしてしまうリスクもあります。

災害リスク

不動産は現物資産ですので、台風や地震などの災害で大きくダメージを受ける可能性があります。建物が損傷を受けた場合、持ち主が修繕する必要がありますので、多額の費用がかかります。建て替えに費用がかかりローンを組まざるを得なくなった場合、相続人に負の財産を遺すことになる可能性もあるのです。

配分に悩むことがある

貸家を建てることで、相続税評価を下がりますが、複数の相続人に財産を分ける場合、貸家があることによって不平等になってしまい相続人間の関係が悪化してしまうことがあります。

建物があることによって別の悩みを抱えることもありますので、気軽に行うのではなく、プランを家族にも説明して理解を得ながらすすめるようにしましょう。

相続財産の評価は税理士に相談を

相続財産の評価は非常に複雑です。まずは財産を一覧にして確認することをおすすめします。相続税について知識がない人が正確に計算し、税務署への申告・納付の手続きなどすべての対応を相続発生から10ヶ月という短い期間内に行うことは難しいでしょう。

特に貸家を保有している場合は、計算が複雑になりますので、最新の情報を持ち、相続税や贈与税に関連する経験が豊富な税理士を利用する方がよいでしょう。また、税理士のサポートを受けることで的を得た節税対策を行うことができ、安心です。

初めはサービスで無料相談に応じてくれる税理士事務所も多くあります。本格的に依頼する前に無料相談を活用して方針を決めていくとよいでしょう。場合によっては税理士の報酬よりも実際に払う税金を減らすことができるケースもあります。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい