プラスの財産から借金などマイナスの財産を控除して課税対象となる遺産の額が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超える財産を保有する方が亡くなった場合、必ず相続税を納める必要があります。
基礎控除以下の場合は、申告も納税も必要ありませんが、相続税は原則、現金で一括納付する必要があります。しかし、期限までに金銭で一括納付できない場合はどのような方法があるのでしょうか。当記事では現金が少ない場合の対策について、問題となるケースと対処法を解説しますので、参考にして知識を身に着けてください。
現金が足らなくなるケース
現金が足らなくなる理由として最も多いのが、財産の多くを不動産等の現物資産が占める場合です。土地や建物が財産の中で占める割合が多いケースです。
相続税には、資産の評価額が関係します。被相続人が亡くなった時に保有する相続財産の中で不動産の割合が多く評価額が高い場合、その分かかる相続税よりも預金など被相続人の名義ですぐに換金できる資金が少ないケースがあります。相続放棄をする場合は、全ての財産を受け取ることができなくなります。一部の財産のみ放棄をするということはできませんので注意しましょう。
他にも事業を経営している場合、株式会社の有価証券の評価が高く保有する預貯金などすぐに換金できるお金だけでは相続税を納めることができないケースもあります。遺贈される資産の中で経営している法人で利用している不動産や自社株などすぐに換金できない資産の数が多く、評価も高額となる場合、一括で相続税を支払うことが難しいケースがありますので注意が必要です。宅地や株式は相場によって価格が変動しますが、まずは現時点での時価で保有する財産を一覧にし、どれくらいの金額の税金がかかりそうか、総額を確認してみるようにしましょう。
また、法定相続分の総額では現金が足りているケースでも分け方によって現金が足りなくなるケースもあります。例えば、不動産と現金がある場合は一人が不動産のみ、一人で現金のみを受け取る場合、不動産を受け取る相続人は納税するための資金が不足することになります。不動産が多い場合は分割の方法によって現金が足りる相続人と現金が足りなくなる相続人に分かれるケースも多くありますので注意が必要です。
現金が足らない場合の対処方法
現金が足らない場合、どのような対処を行えばよいのでしょうか。あらゆる対処法を知っておくことで自分にとって最適な選択をとることができます。相続税が払えない場合に使える制度や具体的な方法、メリットやデメリットについて案内します。
延納
本来10カ月と定められている期限も一切延長が認められないわけではありません。現金が足りない場合の基本的な対処方法として相続税の延納という制度があります。延納とは税務署に税金を一括で支払えない場合に納付する期限を延長することです。ただし、延納は、相続税額が10万円を超えており、一括納付が困難である場合に限られており、土地などの担保の提供も必要です。また、延納している期間の利子が課税されるため負担が大きくなるなど注意点も多い方法です。
物納
物納は、延納も困難な場合に、不動産や上場株式などの資産で現金に相当する評価額の財産を代わりに納め、相続税を支払う方法です。物納にも要件があり、必ずしも許可されるわけではなく、物納の許可が必要となります。小規模宅地の特例を利用する場合、特例を利用後の評価額となりますので、注意しましょう。
また、資産を売却して換金してから支払った方が有利な場合もあり、どちらが有利かよく検討して申請することをおすすめします。
銀行などの金融機関から融資を受ける
相続税の支払いをするために金融機関に融資を受けることができるケースもあります。保有している不動産などを担保に入れるなど、ローンの条件は金融機関によって異なります。借り入れをすることで、土地を売却せずに借入金を相続税の支払いに充てることができ、相続発生後、分割払いで少しずつ返済していくことが可能です。可能な範囲で不動産や株式を手放したくない方には有効な手段です。
不動産など、受ける財産からの利回りが高く安定的な収入が見込める場合は、売却して一括で支払うよりも、利息の負担はありますが融資を受けて少しずつ返済した方が、最終的に得なケースもあります。引き継いだ資産の実際の収益などを見て、実際にお金を借りるかどうか判断するようにしましょう。ただし、希望通りに融資が行われるかどうかはわからないため、早めに金融機関に相談するようにしましょう。
資産を売却する
相続した不動産や貴金属などの動産の中にまとまって換価することができる資産がある場合は売却し、現金化することで納税資金を確保することが可能です。
期限内に相続した資産を売却することに意見がまとまらない場合や、購入した時の金額がわからないことで譲渡所得税がかかり現金が手元にあまり残らないケースもありますので、価格を調査して、相続人間で早めに話し合うようにしましょう。
事前の準備が重要
現金が少ない場合、相続発生後に対応するよりも、生前に対処法を考えておく方がよいでしょう。先に対策を考えることで、死亡保険金を多く受け取ることができる生命保険を活用したり、相続人に資産を生前贈与しておくなどの方法も考えることができ、次の世代にスムーズに財産を承継することができます。亡くなってからできることは多くありませんが、相続発生までに時間があれば、特例を適用するなどさまざまな選択をとることができます。
遺産相続では所有する財産の種類や内容、家族構成、法定相続人との関係によって、税率やそれぞれの主張があわずトラブルになる可能性など検討するべき点は大きく異なりますので慎重に考慮する必要があります。
財産を配偶者が財産を受け取る方が良いケースと子供が受け取る方が良いケースがありますので、全体を把握して事前にシミュレーションを行い、検討すべきポイントを抑えておくとよいでしょう。
トラブルや納税が大きな負担となって、相続人がほかの財産も相続放棄をせざるを得ない状況にならないように、方針を定め、遺言書を書いておくなど具体的な準備をしておくことも重要です。遺言は法律上有効なものにする必要がありますので、書き方に不安がある場合は弁護士や司法書士など専門家に相談するとよいでしょう。遺言以外にもさまざまな方法がありますので、優先順位をつけて一つずつ検討していきましょう。
自分の相続の準備をする場合、財産を取得する者の中で代表として誰かを決めておくことをおすすめします。相続発生後は状況に応じてさまざまな対応をする必要があるため、中心になって動く人を決めておいた方がよいでしょう。
相続税の申告・納税に困った場合は税理士に相談を
相続が開始すると死亡の翌日から10ヶ月以内に財産の評価や遺産分割協議を行う必要があります。期限が短く同時進行で不動産の登記や金融機関の名義変更の手続きなどさまざまな手続きを行う必要があるため、自身の仕事などで忙しい方には簡単な作業というわけではなく、あっという間に時間が過ぎてしまいます。10カ月以上かかってしまうと特例の適用ができなくなったり、延滞すると利子税がかかるなど、デメリットも多くあります。
一般の人が国税庁のホームページで調べて、自分で特例の申請や書類を作成し税務署に提出することは簡単ではありません。
書き方などがわからず、自分で行うことが難しい場合は専門家である税理士に相談し、申告書を作成してもらうようにしましょう。現金が足りなくなる可能性がある場合は、特に早めに対応を行うようにしましょう。
もし財産の申告漏れや申告自体を怠った場合税務調査で指摘され、無申告加算税などの加算税を請求される可能性もありますので、しっかりと対応を行う必要があります。
税金に関する初回の相談はサービスで行っている税理士も多くいますので、まずは無料相談を利用し、手続きをする際の報酬などについて見積もりを依頼しましょう。電話で面談する際に持参するべき資料などを事前に聞いて用意しておくとスムーズに相談できるでしょう。
相続税や贈与税はは税制改正も多くありますので、税理士に依頼する際は相続や贈与の申告実績がある税理士に相談することをおすすめします。税理士の中にも専門分野があり、税理士資格を持っていても相続税には詳しくない税理士もいます。
税理士に依頼することで、報酬を支払う必要はありますが、評価の減額や特例の活用などで、結果的にかかる費用以上に税額を抑えることができる場合もあります。
広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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