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【ケース別に解説】家屋の相続税評価額の求め方

2022年01月29日

基礎控除を超える財産を保有している人が亡くなった場合、相続税の申告が必要となります。「不動産を相続したけど家屋の相続税評価額がわからない」と悩んでいませんか。専門知識がないと、どのように考えて何を行えばよいかわからないはずです。相続では、家屋と土地の評価を別々に行います。また、家屋の評価方法は複数に分かれます。したがって、ケースにより相続税評価額の求め方は異なります。

この記事では、家屋の相続税評価額の求め方等をケース別に解説しています。
以下の記事を参考にすれば、被相続人が住んでいた場合、家屋を貸していた場合、家屋を建設していた場合の計算方法がわかります。相続税の評価は売却する際の価格とは異なりますので、建物の正確な計算方法を知っっておくことで適切な対処方法を理解できるはずです。

評価の方法は贈与税も同じです。相続や贈与でお困りの方は参考にしてください。

ケースによって変わる家屋(建物)の評価額

家屋の相続税評価額は、基本的に固定資産税評価額を使用して求めます

固定資産税は、毎年1月1日時点における土地・家屋などの所有者に対し、地域によって定められており、これらの価格(=固定資産税評価額)に基づき課される税金です。

固定資産税評価額は、毎年、不動産の登記に記載されている所有者に4月頃に送られてくる固定資産税課税明細書の価格欄に記載されていますので、所有する不動産の固定資産税評価額を確認することができます。
例えば、「10000000」と記載されている場合、固定資産税評価額は1,000万円です。この書類を紛失している場合は、市役所などで固定資産税評価証明書を取得するとよいでしょう。

建物は状況別に評価の方法が異なるため、現状に対応した計算を行う必要があります。ここからは、家屋の固定資産税評価額の求め方を状況別に解説します。

ケース1 被相続人が家屋(建物)に住んでいた

最も多いパターンと考えられるのが、被相続人が自宅として住んでいた家屋(自用家屋)を相続したケースです。このケースにおける相続税評価額の求め方は簡単です。

具体的には、以下の計算式で求めます。
評価額=固定資産税評価額×1.0

つまり、固定資産税評価額が相続税評価額になります。
例えば、固定資産税課税明細書に「10000000」と記載されている場合、相続税評価額は1,000万円です。書類さえあれば簡単に求められます。

ケース2 お金をもらって家屋(建物)を貸していた

賃料を貰って貸していた家屋の計算方法はやや複雑で、そのままの金額で評価されるわけではありません。人に貸している分、自分が使用している時よりも一定額が減額される制度となっています。

代表的なものとしては、賃貸アパートなどです。

アパートを貸していた場合の計算方法は次のとおりです。
評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

借家権割合は借主が家屋を使用する権利、賃貸割合は実際に貸している床面積の割合です。
固定資産税評価額から借家権割合を減じる理由は、貸家は自用家屋よりも権利の制約を受けるからといえるでしょう。

では、借家権割合と賃貸割合はどのように求めればよいのでしょうか。

借家権割合は全国一律30%です。
今後、変更になる可能性もありますので各都道府県の借家権割合は、国税庁が運営するWebサイト「財産評価基準書路線価・評価倍率表」で調べたい都道府県を選択して、土地関係以外の「借家権割合」を選択すればわかります。
次に賃貸割合は「課税時期に貸していた専有部分の床面積/家屋における専有部分の総床面」で求めます。

参考に、以下のケースで相続税評価額を計算します。

  • 固定資産税評価額:1億円
  • 借家権割合:30%
  • 家屋における専有部分の総床面積:400平方メートル
  • 課税時期に貸していた専有部分の床面積:200平方メートル

このような場合だと、計算式は以下のようになります。
1億円×(1-30%×200㎡/400㎡)=8,500万円

課税時期に空室だった部屋は、貸していた専有部分の床面積に加えられません。ただし、一時的に空室となっていた場合は、貸していた部分の床面積に加えられます。
一時的な空室に該当するかどうかは、課税時期前に継続的に賃貸されていた部屋、空室になってから速やかに賃借人の募集が行われている、空室期間中に他の用途に使用されていないなどを勘案して総合的に判断します。

尚、賃貸割合は、アパ-トなどで各部屋が同じ面積の場合には部屋数で計算すればいいでしょう。

ケース3 お金をもらわずに家屋(建物)を貸していた

親族などにお金をもらわずに無償で家屋を貸していた場合(使用貸借に該当)、原則、借家権割合を減じられません

したがって、計算方法は以下のようになります。
評価額=固定資産税評価額×1.0

ケース4 家屋(建物)が建設中だった

居住用として利用しようと考えて建設中の家屋を相続した場合、以下の計算方法で評価額を求めます。
評価額=課税時期までの建設費用原価×70%

建設費用原価は、「総建築代金×工事進捗率」で求められます。

参考に、以下のケースで評価額を計算します。
【例】

  • 総建築代金:3,000万円
  • 工事進捗率:50%

このような場合だと、計算式は以下のようになります。
建設費用原価=3,000万円×50%=1,500万円
建設中の家屋の評価額=1,500万円×70%=1,050万円

このように建設中の家屋を相続した場合も、正しく評価する必要があります。

家屋を相続したときは税理士に相談

いかがでしたでしょうか?家屋の相続税評価について解説しました。上記のとおりケースにより計算方法が異なるため、家屋の評価は非常に複雑です。また、相続税を計算する際は所有する財産の合計を確認する必要があります。相続財産の評価や小規模宅地の特例や配偶者控除など各種特例の適用可否も考慮して計算を行っていく必要がありますので非常に複雑な計算となります。財産の総額を誤って申告をした場合、税務署に指摘され、加算税と言われる高い税率で課税される可能性があります。

また、相続が発生した後10カ月以内と短い期間に申告を完了させる必要がありますので、相続税の算出方法や手続きに不安を感じる場合は、税の専門家である税理士に相談することをおすすめします。税理士に依頼することで、それぞれの財産が評価を依頼することができますし、特例の要件についても確認することができるので安心して手続きを進めることができます。場合によっては相続税を下げることができるかもしれません。

申告書の作成を依頼する際は遺産の内容や金額に応じて費用が異なりますので、先にいくらくらいの費用となるか確認しておきましょう。知り合いに紹介してもらうことが難しい場合は、ホームページなどで相続税に強い税理士事務所・税理士法務人を探してみるとよいでしょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい