基礎控除を超える財産を保有する人の相続が発生すると預貯金等の財産を取得する者は相続税の申告をする納税義務があります。相続税の申告をするためにはあらゆる財産を評価する必要があります。資産の中にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産として控除できる財産があることをご存知でしょうか。場合によってはマイナスの財産を差し引くことで、基礎控除以下となり、相続税の申告が必要ないケースもあります。
今回の記事では、相続財産の総額から控除できる債務の扱いや注意点について解説します。
債務とは
債務とは銀行からの借入金など法的に他人に支払う義務があるものです。債務は不動産投資ローンなどの大きな価額の負債だけでなく、病院へ未払いの入院時の医療費や墓の購入代金、クレジットカードの使用後引き落としされていない金額、葬式の費用、賃貸物件の保証金返還債務、電気やガス、水道光熱費、電話料金などの公共料金等の未払金、納税する義務があるものの、まだ納税できていない所得税や住民税、固定資産税などの公租公課など、いわゆる借金に限らず支払われていないあらゆるものが含まれます。相続発生時点で債務を残した場合は相続人が支払う必要がありますので、債務を負担する分は、預貯金や不動産など、課税の対象となるプラスの相続財産からマイナスの財産として相続税の計算をするうえで課税価格の合計から差し引くことができます。
債務の額が大きい場合は納付する税金にも大きく影響を与えますので、相続が発生した時に残っている債務は、申告の際にそれぞれの金額を確実に記載するようにしましょう。
ただし、住宅ローンの団体信用生命保険など、債務者が死亡した場合に、生命保険の保険金として返済できる場合、債務として控除することはできません。
債務も誰に引き継ぐかを決めることができる
債務は元々の契約を引き継いで相続人が支払う義務を負います。自分の借金ではないため、責任はないと思う人も多いかもしれませんが、支払いが不能になった場合は、現に自分が使っている土地や建物など自分の財産が差し押さえられる可能性もあります。
主たる債務や特定の債務の保証人になっている場合の保証債務、連帯債務もプラスの財産と同様に、遺言で誰が承継するかを方針を決めて指定することができます。
大きな債務がある場合は遺言を作成し、プラスの財産の配分割合と債務を誰に遺贈するか、適切な人を指定しておくことをおすすめします。
一般的に未払いの費用などは配偶者が負担し、弁済することが多いでしょう。不動産投資用のローンや預かっている敷金の返還債務など、債務や借入が財産に紐づいている場合は、その財産を取得する親族の名義にし、今後賃貸から得られる収入でローンを支払った方がスムーズです。他にも事業に紐づいている債務がある場合はその事業を承継する人が引き継ぎ返済することになります。もし返済をしなかった場合、債権を持っている法人などから相続人の住所に督促状が送られてくるでしょう。債務を引き継ぎたくない場合は相続放棄をすることで、債務を引き継ぐ必要が亡くなりますが、プラスの財産も受けることができなくなります。東京や横浜などアクセスの良い土地などがある場合、債務を全額引き継いでも有利となるケースも多いので、預貯金の残高なども確認し、慎重に判断しましょう。
遺言を作成する際は金融機関に預けている預金や株式、不動産など、所有する各財産の評価額を確認し、財産を一覧にしてから検討する方がよいでしょう。相続税の申告は10ヶ月と短い期間でさまざまな手続きを同時進行で行う必要がありますので財産の配分を特定しておき相続人の負担をなるべく軽くすることが大切です。財産の配分はすべての財産を2分の1ずつなど、包括的に指定することも可能ですし、部分的に遺言で決めることも可能です。相続人以外の受遺者に債務を遺す場合は基本的に包括遺贈を選択することになります。
亡くなる前に遺言を書いて、財産を示しておくことで、財産の概要を調査する必要もなくなりますし、借金の存在も明らかになりますので、期限内に滞りなく手続きを進めることができる可能性が高くなります。債務がある場合など、財産の内容に注意が必要なケースや、遺産分割で相続人間の関係が悪化しそうなケースでは遺言を作成するなど対策を行っておくようにしましょう。遺言では執行者を決めておくことで、執行者が代わりに手続きを進めることができるので、通常よりもかなり早く手続きを進めることができます。相続人同士が遠方にいるなど手続きが滞りそうな状況の場合は事前に準備をしておくようにしましょう。
事前に配分をシミュレーションしておくことで、各人の税額も把握することが可能です。事前に判断し、相続人に案内しておくことで、相続人にかかる負担を軽減することができるでしょう。
相続税の申告は税理士に相談を
相続税や贈与税は税制改正も多いので、常に最新の知識をインプットしておかなければ、メリットの大きい特例を適切に利用することができません。また、相続開始の翌日から10ヶ月以内と短い期間に、申告の書類を作成したり、該当の資料を集めたりするのも簡単ではありません。また、不動産の所得がある場合は4ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。確定申告をする場合は控除対象となる経費などがある場合、領収書を一緒に保管しておくようにしましょう。
実際に自分で申告するほど知識がない方は、相続税の申告は税の専門家としてあらゆる情報を持ち、税務の専門家である税理士に相談するようにしましょう。被相続人が亡くなった後に対応することもできますが、生前に相談することであらゆる対策をすることができます。例えば、生命保険の非課税枠の活用や、各種特例の適用や贈与の制度を活用することで、遺産を効率的に次の世代に承継することができます。
相続税は遅延するとその分延滞税も請求されますし、認められない特例もありますので、確実に期限内に申告を済ませることが重要です。税理士の紹介を受けることが難しい場合はホームページなどで、相続税や贈与税を専門としており、実績のある税理士に依頼するようにしましょう。初回の相談は無料で応じてくれる税理士事務所や税理士法人も多くあります。相談に必要な持ち物や費用相場は電話で確認してみてもよいでしょう。
申告を依頼する場合は報酬はかかりますが、土地・家屋の評価や特例の適用をしっかりと行うことで、税務署から税務調査で指摘されることなく、申告することができますので、報酬以上に節税になる場合もあります。
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