相続税の申告は税理士に依頼することもできますが、自身で申告・納付の手続きを行うことも可能です。当記事では自分で申告を行う場合の手順と注意点についてポイントをおさえて解説していきます。
自分で相続税を申告する際の手順
自分で相続税を申告する際はどのような手順で対応をしていけばよいのでしょうか。以下に相続税申告の流れと手順を紹介します。
①法定相続人を確定する
相続税を申告する際には、法定相続人を確定する必要があります。法定相続人の確定をするために、出生から亡くなるまでの戸籍謄本を収集し、申告の際にも添付する必要があります。戸籍謄本の収集は司法書士に依頼することも可能です。
②財産の評価額を確定する
遺産相続をする際の相続財産には現金・預金、株式、土地・建物、金等の現物資産も含まれますので、あらゆる種類の財産ごとに評価を行っていきます。被相続人が持っているプラスの財産から借金や債務などのマイナスの財産を控除して財産の総額を求めます。
各種財産を相続発生時点の残高や価格で評価し、課税対象の財産を確定する必要があります。遺産の評価を確定することができたら、一覧の表にしておくとよいでしょう。遺産分割の話し合いよりも先にしっかりと財産の内容と額を確認しておくことが重要です。
特に相続対策で生前贈与をしている場合や投資用不動産を購入し、ローンを組んでいる場合など、財産の内容が複雑であったり、不動産の数が多い場合には、評価に手間がかかりますので、相続発生後すぐに総額の確認作業に着手した方がよいでしょう。
亡くなった人の財産が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)超える場合申告が必要ですが、基礎控除以下であった場合、相続税がかかることはありませんので、申告手続きは必要ありません。また、生命保険の非課税枠(法定相続人×500万円)を利用することで基礎控除+非課税枠の範囲で収まる場合も申告は必要ありません。ただし、特例の適用を受けて相続税を算出した結果0円になる場合は、相続税を納める必要はありませんが、無税であっても申告の手続きは必要ですので間違えないようにしましょう。
③配分を確定する
小規模宅地の特例など、財産を取得する人によって特例が適用できるか否かわかれるものもありますので、税額を確定するためには申告の前に分け方を決めておく必要があります。人数が多い場合はトラブルになり配分の確定に時間がかかる場合が多いので早めに話し合いを始めるようにしましょう。
遺言書がある場合は遺産分割協議は不要ですが、遺言書がない場合は法定相続割合を参考に相続人全員で協議を行い配分を確定することになります。遺言書がある場合は遺言書に沿って配分を確定するとよいでしょう。
④申告書を作成し、税務署に提出する
配分を確定することができたら、税務署で書類を入手して税務署に提出する書面の作成を行います。申告書は管轄の税務署の窓口で入手するか国税庁のサイトでダウンロードすることも可能です。申告書は第1表~15表まであり、財産の内容や配偶者控除や小規模宅地の特例など特例の適用状況などによって記載する書式が異なり、証明するための添付書類も異なります。どの書式を使用するかホームページでよく確認しましょう。書類の書き方は税務署で確認することも可能です。
国税庁HP
相続税の申告を自分で行う際の注意点とデメリット
税理士に依頼せずに自分で相続税の申告を行うことで、税理士に支払う費用を節約できるというメリットがあります。税理士に支払う料金は決して安くありませんので、大きなメリットといえるでしょう。
しかし、自分で相続税の申告を行う際には様々な注意点やデメリットがあります。自分で申告する際はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。
財産の評価
財産の中に銀行などに預けている預貯金が多い場合は評価もしやすく相続税計算も難しくありません。しかし、不動産や美術品などの現物資産が多数あれば、難易度が格段に高くなります。例えば、土地の場合、原則路線価×面積で評価を行いますが、側面の路線や、奥行や土地の形によって実際の評価が高くなったり、低くなったりする例があります。
財産評価を誤ると相続税の金額も異なってきますので、財産の評価を正確に行うことが重要です。
特例の判断
相続税の特例は要件が複雑で、適用できるか判断基準が難しい場合があるでしょう。特例や税額控除の適用漏れがあると、過大な税金を支払うことになります。後から適用できることを知っても、払い過ぎた税金を取り戻すことは難しいです。条件を満たし、適用できる特例はしっかりと確認し適切に対応するようにしましょう。
申告期限
相続税の申告・納税は被相続人の死亡から10ヶ月以内に完了させる義務があり、期限は非常に短いです。相続開始後は、金融機関の手続きや、法務局で不動産の登記なども行う必要があり、なにかと忙しいため、時間はあっという間に過ぎてしまいます。期限内に完了できず、延滞すると税金も多く支払うことになります。
金融機関への紹介は平日しかできないことも多く、知識のない方は財産の調査と財産額の確定だけでも時間がかかりますので、期限に間に合わないリスクがある方は、できるだけ早めに着手するようにしましょう。
生前の準備で負担を軽減できる
相続税の申告は、多くの場合、配偶者や子供など代表となる人が1人で手続きを行うことになります。遺された配偶者や子供などが困らないように、生前に準備をしておくことをおすすめします。
まず、しておきたいことが財産を一覧の表にまとめておくことです。相続発生後、どんな財産があるかわからず、通帳の場所もわからない場合、残高を調べるのに時間がかかるということは以外と多いものです。預貯金を預けている金融機関の口座や不動産など財産を簡単な資料にまとめておくだけで相続人の作業を大きく減らすことができます。財産を一覧にして目録を作っておくことで、事前に税率もわかりますので、シミュレーションしておくことも可能ですし、的を得た有効な対策をうつことができます。
次に検討しておきたいのが遺言の作成です。遺産分割協議でそれぞれの立場で主張しあった結果、争いが発生することは少なくありません。遺言を作成し、誰に何をいくら相続させようと考えているのか、明確にしておくことで相続人の争いを避け、スムーズに承継手続き進めることができるので、遺言の作成を検討してみましょう。
自分で申告することが難しい場合は無理せず税理士に相談を
相続税の申告は必ず税理士に依頼する必要があるわけではありませんので、自分で行うこともできますが、制度も複雑で理解することは簡単なことではありません。
自分で正しく手続きすることが難しい場合は、無理せずに専門家である税理士に依頼するようにしましょう。特例等をうまく活用することで、相続税の減額をできる可能性があります。また、財産の申告漏れなどがあり、過少申告をしていた場合、税務調査で指摘されるケースもあります。税理士の費用を節約できたとしても、それ以上にペナルティとして追徴の加算税を請求される可能性もあるのです。
相続税や贈与税は税制改正により頻繁に課税制度の変更があるため、最新の情報をチェックしておくことも重要です。過去に親の相続などで一度経験していても、今回もミスなく特例を活用し、申告を完了できるとは限らないのです。
少しでも不安がある方は税務のプロである税理士のサポートを受けると安心です。初回の面談はサービスで無料で応じてくれる税理士事務所や税理士法人も多くありますので、まずは気軽に相談してアドバイスを受けてみましょう。税理士に相談する際は財産の概要がわかるものを持っていくと良いでしょう。報酬も課税対象の財産を目安に定めることが多いので、財産の一覧を持っていくことで、報酬の見積もりも依頼することが可能です。
税理士に依頼する場合は相続税・贈与税に強い、実績がある税理士に依頼するようにしましょう。
広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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