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相続税が払えない場合どうしたらいい?

2024年11月30日

財産を相続し、財産の額が基礎控除を超える場合は被相続人が死亡した翌日から10ヶ月以内に法定相続人が相続税の申告を完了させ、税金を支払う義務があります。相続が発生すると金融機関の手続きや不動産の登記などもあり、非常に短い期間にさまざまなことを行う必要があります。

相続を受ける財産の多くが現金や預貯金や上場株式など比較的現金化しやすい資産であった場合には、相続した財産から払えるでしょう。しかし、不動産など換金することに時間がかかる財産が中心であった場合、税の額の割に現金が手に入らず、支払えないことがあります。

当記事では税額が大きく、相続税が払えない場合の対処方法について解説します。

納税資金不足に陥った場合の対策

相続が開始した後で納税資金不足となった場合どのような対応方法があるのでしょうか。相続人がとることができる選択肢をご紹介します。

相続した資産を売却する

不動産など、資産性の高いものであれば、売却して換金することが可能です。ただし、相続財産の分割を経てから相続により取得した者が不動産の仲介業者に土地・建物の査定を依頼し、買主を探した場合、相応の期間がかかります。そのため、本来ならもっと高く売れるものが急いで売りに出してるため、低い値段でしか売れず、手元に現金があまり残らないケースもあります。

相続の手続きは同時進行で進めることも可能ですが、相続する権利を持つ人が複数いるケースで分割方法や売買の価格で折り合いがつかない場合、納税の期限に間に合わない可能性も高いでしょう。

資産を担保にして金融機関から借り入れをする

不動産は資産としての価値があるものであれば、不動産を担保にし、銀行など金融機関から融資を受けることができます。ただし、金融機関の審査があり絶対に借りれるわけではありませんので、早めに審査を行って、納税期限までに資金を用意することが必要となります。

また、金融機関に金利を支払う必要があり、変動金利で契約をした場合は今後、一定の金利上昇によりコストが高くなる可能性があります。もし督促をされても借金が返済できない場合は金融機関から担保に提供した物件を差し押さえられ、処分して得た金銭で返済に充てる可能性があります。

延納する

相続税の支払いは原則、現金で一括で支払う必要がありますが、不動産など換金性の低い財産が多く、支払うことが難しい場合は税務署に書類を提出することで延納により分割払いが認められる場合があります。

10万円以上の相続税がかかることが条件となりますが、申請すれば必ず認められるわけではないことと、市場金利に応じた利子税を支払うことになりますので、長期間延納した場合は相当な負担になることには注意が必要です。

また、申請から許可が下りるまで最長で6ヶ月かかりますので、早めに手続きを行いましょう。

物納する

物納とは不動産や有価証券などの遺産を現物のまま納税する方法です。不動産が多く、換金も難しい場合に取ることができる選択肢ですが、物納も必ず認められるわけではなく、認められない場合には他の方法を選択する必要がありますので、早めに準備が必要です。

納税資金不足となる可能性がある場合の生前の対策

ここまで、相続発生後の対応方法について解説しましたが、出来れば相続が発生する前に事前の対策を打っておく方がよいでしょう。相続発生前の対策について具体的に解説します。

分割方法を決めておく

納税資金不足となりそうな場合には納税期限までに資産を売却するか相続人自身が金銭を用意する必要があります。そのため、誰が何を相続し、どの程度相続税を負担することになるのか、あらかじめ決めておく方がよいでしょう。

遺言を作成し、各人にどのように分けるか決まっていることで、トラブルを回避し、遺産分割にかかる時間を大幅に短縮できることは大きなメリットとなります。また、財産の分け方を決めておくことで、相続人同士の関係が悪化し、弁護士を交えて争いになることも避けることができるでしょう。

路線価などを確認し、財産の価格を知っておくことで売却するかどうかの判断もすぐにすることができますし、現状を把握することで、自身の財産が基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)以下であれば心配する必要はありません。

生前に贈与をする

賃貸に出しているマンションなどを保有しており、定期的に収入がでているケース等の場合、収益を相続させる子どもなどに贈与をすることで相続税の課税対象となる財産を減らすことができますし、現金をしっかりと貯めておけば納税資金として活用することもできます。

また、贈与税の基礎控除は110万円のため、110万円を超える贈与を行うと贈与税の課税の対象となりますが、自宅を購入する場合は最大1,000万円、や孫等の教育資金であれば最大1,500万円までの範囲で一括で贈与ができる特例もありますので、利用を検討してみてもよいでしょう。

また、配分を決める際にあらかじめ贈与をしておくことで、贈与を受けた人は相続が発生した時に相続放棄をしてもらうというのも一つの手段です。相続発生時に財産を受け取る人を一人にすることで、お金の把握もしやすいですし、状況に合わせてスムーズに手続きができるでしょう。ただし、贈与をすることで不公平が生じることもありますので、法定相続分通りに分けるのか家族の中で差をつけるのかもよく検討する必要があります。

生命保険を契約しておく

生命保険は契約者が亡くなった時に遺産分割協議を行わなくても指定を受けた人が直接受け取ることができます。遺産分割協議が困難なケースでも生命保険はすぐに現金化し、受取人の預金として使うことができますので、納税資金の一部に充当することも可能です。

生命保険を契約することで、解約返戻金が元本を割れるものもありますので、契約者の財産としては使いづらくなるというデメリットはありますが、相続人が受け取れるという点ではメリットのある対策といえるでしょう。

また、生命保険の死亡保険金は法定相続人×500万円まで非課税となりますので節税にもつながります。

相続税のお悩みは税理士に相談を

相続税の制度は国税庁のホームページに概要や詳細の計算方法が記載されています。しかし、非常に複雑で知識が無く、慣れていない人が実際に自身で期限内に計算を行い、支払いまで完了することは簡単ではありません。相続税の申告で評価や特例の適用条件等を誤った場合、税務署から訪問で調査を受け、加算税を請求される可能性がありますし、最終的に申告を怠った場合は無申告加算税というペナルティがあり、高額の税金が課されることがあります。

所有する各財産の評価額や自宅の評価をする際に小規模宅地の特例など特例の利用可否など、判断できないことがある場合は、税の専門家である税理士のサポートを受けるようにしましょう。

税理士に相談をする際は相続税や関連のある贈与税に強い税理士に依頼することをおすすめします。税理士に相談に行く際は被相続人が保有していた不動産や金融資産など課税の対象となる資産の内容や全体の額がわかるものの一覧を持っていくとスムーズに相談できるでしょう。特に不動産の数が多い場合は、評価に時間がかかりますので、早めに依頼するほうがよいでしょう。

税理士に申告を依頼することで、費用はかかりますが、配偶者控除や小規模宅地の特例など、特例の申請を漏れなく行うことで節税につながることもあります。自分で申告をすることが難しい場合は税理士に依頼することで安心して進めることができます。

初回の相談はサービスで無料で応じている税理士も多いので、まずは電話やメールなどで気軽に問い合わせてみるとよいでしょう。

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい