相続により財産を取得した者は期限内に相続税の申告を完了させる義務があります。相続税の計算をする際には相続発生時に故人が所有していたあらゆる財産を足し合わせる必要があります。
財産には預貯金や株式、不動産、金等の現物資産は当然含めますがそれだけでなくさまざまな権利も含みます。
では賃貸に出しており、家賃収入を得ることができるような不動産を保有しており、未収家賃が発生しているようなケースでは相続財産に含める必要があるのでしょうか。当記事では未収家賃の取り扱いについて解説します。
未収家賃も相続税の課税対象
所有するアパートなどを他人に貸しており、未収家賃がある場合は法律上借主に請求できる権利ですので、未収家賃として相続税の課税対象に含めます。
ただし以下の条件にいずれも該当する場合のみ相続税の課税対象です。
①支払い期限が到来している
②借主から家賃が支払われていない
未収家賃は到来している分をすべて含みますので、前月だけでなく未収であるものすべて対象となります。実際に滞納されている家賃があるケースでは滞納されてる金額すべてが課税対象となりますので申告漏れとならないように注意しましょう。
契約上の支払い期限が到来していない時は当月分であっても日割りで経過日数分を評価して相続財産に含める必要はありません。例えば、末日に支払う期限なのであれば、支払い期限までに亡くなった場合、未収家賃とはなりません。今月分に該当するかにかかわらず、基本的に契約上定めている支払い時期が到来しているかどうかによって判断しますので注意しましょう。
未収家賃は遺産分割により、その建物を相続する人が受け取るのが一般的です。
未払い家賃に限らず、申告時に財産の計上漏れがあった場合、税務署の税務調査の対象となった際に指摘される可能性があります。税務署から指摘をされた場合、加算税を支払うことになり、本来よりも多くの税金を納税することになりますので、申告漏れがないようにしっかりと確認し申告を行うようにしましょう。
前受家賃は債務控除の対象外
未収家賃は回収する権利があるため、相続税の課税対象となります。一方で支払の期限到来前でも来月分などとして既に受け取っている前受家賃を受け取っている事例もあるでしょう。
亡くなった時点でこのような前受け家賃があるケースでは逆に債務として控除できると考える人がいるかもしれませんが、前受家賃は将来受け取るものであり、債務控除の対象外です。間違って債務として控除しないように注意しましょう。
家賃は所得税の対象
相続が発生するまでに受け取った家賃については相続税だけでなく、所得税の対象になります。2024年の所得は原則2025年の確定申告によって所得税を納めますが、相続が発生した場合は相続発生の翌日から4カ月以内に純確定申告を行う必要があります。所得に応じて相続人が所得税の申告を行う必要があるということを覚えておきましょう。
収益不動産を保有している場合は税理士に相談を
収益不動産を保有している場合、財産の評価は非常に複雑になります。また、各種特例を利用することで相続税額を下げることが可能ですが、知識がないと特例で控除できるか否か判断することができません。
国税庁のホームページに相続税の計算方法や特例の適用可否は記載がありますが税金の計算に慣れていない人が自分で行うことは簡単ではありません。相続税は被相続人の死亡から原則10ヶ月以内と期限も短く、期日までに自分で対応して申告することが、難しい場合は税務の専門家である税理士にサポートを依頼する方が良いでしょう。
また、アパートがある場合は事前のシミュレーションが大切です。場合によっては売却しないと相続税の申告が出来ないケースがありますので、土地や上に立っている建物の相続税評価を確認し、課税価格を確認しておいたほうがよいでしょう。相続が発生した際に家族に負担がかからないように、生前に遺言を作成するなどあらかじめ配分方法などを定めておくことをおすすめします。遺言書を作成しておくことで、相続が発生した後に遺産分割をめぐって相続人同士の関係が悪化することを防ぐことができます。また、短い期間に手続きを行い、負担の大きい相続人の手間を大きく減らすこととなるでしょう。
ただし、税理士にも得意分野がありますので、相続税・贈与税を普段から扱っており、遺産の評価や相続税の申告手続きの経験が豊富な税理士事務所・税理士法人に依頼することが重要です。まずは財産を一覧にし、相談にいくとよいでしょう。
相続税の申告でご不明点がある場合は広島相続税相談テラスにお気軽にご相談ください。