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遺産の分割が相続税の申告期限までに間に合わない場合は?

2024年12月29日

相続が発生した後に相続人全員で遺産の分割協議を行い、相続財産が基礎控除を超える場合は原則、被相続人の死亡の翌日から10カ月以内に相続税の納付と申告が必要となります。

しかし、遺言書がない場合で遺産の分割の話し合いに時間がかかり、期限までに間に合わない場合もあるでしょう。相続税の申告期限までに分割が間に合わない場合はどのように対応したらよいのでしょうか。当記事では遺産分割が間に合わない場合の対応方法について解説しますので参考にしてみてください。

期限までに間に合わない場合は未分割で申告を行う

相続税の申告期限までに遺産の分割が間に合わなかったとしても納税期限を延長することはできません。相続税は国税として納税の法的義務がありますので、期限を過ぎても申告と納税が行われなかった場合、延納となり延滞税が課されます。また、無申告のままとなった場合、税務署から指摘され加算税を課される可能性もあります。

そのため、相続税の申告期限までに間に合わない状況の場合は、民法で定められている法定相続割合で分けたものとして税額を算出し、相続税の申告を行い、金銭で一括納付します。

未分割申告の場合、物納を選択することができないほか、配偶者控除や小規模宅地の特例等、農地や非上場の自社株式の納税猶予や各種特例を適用することができません。配偶者控除は配偶者が相続する際に法定相続分まで、もしくは1億6,000万円まで相続税がかからない特例。小規模宅地は自宅の土地の評価額を最大330㎡まで80%減額できる特例で、いずれも非常に大きな節税効果があります。

ただし、申告時に3年以内の分割見込書を添付し、3年以内に遺産の分割を完了のうえ、修正申告を行い更正の請求を行うことで、特例を受けることができ、納税した税金が返金され、税金の軽減効果を得ることができます。

事情があり相続人同士で折り合いがつかず3年以内に分割が難しい場合はやむを得ない事由がある旨の承認申請書を提出することでさらに期限を延長することが可能です。ただし、申請が必ず承認されるわけではありません。

未分割とならないための事前の対策

万が一未分割のまま期限を迎えてしまった場合は未分割のまま対応するしかありませんが、未分割のデメリットは大きいため、一般的にはできれば期限内に税務署に申告書を提出したほうがよいでしょう。未分割とならないための対策について案内します。

遺言書を作成する

生前に対策をするのであれば、遺言書を作成し、遺産の分け方を明確にしておくことが最も有効な手段です。

また、遺言を作成する時には民法上の法定相続分や遺留分なども考慮して財産配分について検討する必要があります。遺留分を考慮して作成しないと遺留分侵害額請求がされた場合に遺言書通りに配分することができないため制度もよく理解して遺言を作成する必要があります。遺言書では一部の財産のみ配分を指定することもできますが、全財産の分割方法を指定しておくことをおすすめします。

また、遺言書には執行者を指定することができます。執行者とは遺言書に基づいて遺産の手続きをする人のことで、相続人の中から指定することもできますし、税理士や司法書士に業務として依頼しておくことも可能です。執行者は遺言書を利用して不動産の登記や金融機関の名義変更を行うこともできますので、あらかじめ指定しておくことで、相続発生時に手続きをスムーズに進めることができるでしょう。

被相続人の財産を一覧にしておく

財産の一覧を作成し、相続税のシミュレーションを行っておくことで、各財産を取得する者にどれくらいの税負担がかかるかを示すことができます。不動産など現物資産を中心に相続する場合、納税資金を自分で用意する必要がありますので、早めに税負担が大きいことを伝えておいたほうがよいでしょう。

また、遺産分割がまとまらない理由の一つに財産調査に時間がかかるケースが多くあります。遺産について早めに調査を行っており財産の総額が固まっていれば話し合いもスムーズにすることができますが、被相続人の財産を把握している人がおらず財産の全体像を把握するまでに時間が経過してしまうと申告期限まで時間がなくなってしまいます。

相続が開始する前に一覧を作成しておくことで、時間を短縮することができる例は多いでしょう。

相続税に申告は税理士に相談を

財産が基礎控除以下の場合は相続税の心配はありませんが、基礎控除を超える財産を保有している場合は申告期限までに相続税の申告が必要です。

申告期限までに未分割の場合の申告は通常よりも複雑で、添付するべき書類もありますので、相続税法の知識がない場合は申告をする際に税理士に相談のうえ行ったほうがよいでしょう。未分割で申告をする場合は配偶者控除や小規模宅地の特例などを利用することはできませんが、遺産分割の協議が成立し、分割方法が確定した際に特例を利用できる場合があります。特例の概要については国税庁のホームページに記載されていますが、適用可否がわからない場合は費用がかかりますが税務の専門家である税理士に申告を依頼したほうがよいでしょう。

相続税の相談をする際は相続税・贈与税の申告実績が豊富な税理士事務所・税理士法人に依頼することが重要です。広島相続税相談テラスでは、初回の相談無料で、お客様のお悩みの解決をサポートしております。お気軽に広島相続税相談テラスにご相談ください。

 

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい