お役立ちコラム一覧

土地・家屋を保有している場合の相続税の計算方法を解説!

2023年02月09日

相続が発生すると葬儀だけでなく、遺産分割協議や不動産の登記など様々な手続きを行う必要がありますが、特に大変な作業が相続税の申告です。相続税を申告するためには不動産など、被相続人が所有するあらゆる財産を評価し、相続税の計算を行う義務があります。

当記事では住宅用などで利用している土地・家屋を保有している場合の相続税の計算方法やノウハウを具体的に解説します。

相続税の計算の流れ

まずは相続税を計算する際の流れや仕組みについて解説します。

相続税を計算する際は、まず、法定相続人を確定します。法定相続人は民法で定められています。配偶者は常に相続人となり、子、親、兄弟姉妹の順に相続人となります。子が亡くなっている場合は孫に、兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪に代襲します。

次に財産を確定します。仏具など、一部非課税の財産を除き、預貯金や有価証券、不動産、金などの現物資産など被相続人が保有する全ての財産を含めて評価を行い、課税の対象となる財産の評価額の合計を計算します。プラスの相続財産の総額から債務と基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を差し引き、次に全体の財産を法定相続分を取得したものと仮定し、相続税の総額を計算してから、各人の取得割合に応じて税率をかけあわせ、速算表を用いて相続税額を求めます。

生命保険にも非課税の枠があり、法定相続人1人につき500万円までは非課税となります。例えば、法定相続人の数が2人の場合、基礎控除は4,200万円、生命保険の非課税枠が1,000万円となりますので、合計5,200万円までは非課税で相続することができます。同じく3人の場合は、合計6,300万円となり、相続人が多ければ多いほど基礎的な控除は大きくなっていきます。

一人当たりの相続する相続財産が1,000万円以下の場合は10%、6億円超の場合は55%と財産の額によって税率は大きくことなります。相続税の速算表は下記の国税庁のホームページに掲載されています。

速算表(国税庁ホームぺージ)

相続財産が基礎控除の金額未満であれば、相続税がかかることはありませんし、申告も不要です。

また、配偶者控除や居住用や事業用の土地で小規模宅地の特例の要件を満たす制度があれば、その分、実際に納める税金から減額することができます。小規模宅地の特例は東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県などの首都圏や、大阪府、京都府、兵庫県などの関西圏に住む場合、土地の値段も高くなるため、評価減の効果も大きくなります。

実際には特例を利用することで税金が0になることもありますが、基礎控除を超える財産を保有する場合は、税金が0円でも申告は必要ですので注意しましょう。

相続税ではこのような流れで計算をするため、土地・家屋など一部の財産の評価額を確認するだけでいくらの相続税がかかるか計算することはできず、すべての財産の評価を行う必要があります。

全ての計算を行い、相続発生後10ヶ月以内に、必ず税務署に申告書を提出する必要があります。そのため、被相続人が亡くなってからすぐに準備に取り掛かる必要があります。

土地の評価方法

土地の評価は原則、路線価方式で行うものと定められています。路線価とは相続や贈与をする際の基準として国税庁が市街地にある各道路ごとに定められた1㎡あたりの価格で実際の価値の80%程度で設定されています。路線価は物件が所在するエリアや大きな道路に面しているかなどに対応して値段が異なります。

路線価は毎年3月に発表され、路線価がある場合は、一般的に保有している土地が面する正面の路線価×面積で相続税評価を計算することができます。実際には土地の奥行き、間口、形状が不整形の場合の補正などを行って金額を計算します。

路線価が無い地域の場合は倍率で評価を行います。倍率で計算を行う場合は、固定資産税評価額に土地の種類にあわせた倍率をかけあわせることで相続税評価を行います。路線価と倍率は国税庁のサイトで確認することができますので自宅の評価額を参考にしてみると良いでしょう。

国税庁ホームぺージ

また、貸家として賃貸に出している場合は貸家建付地として評価を減額することができます。他人に貸している場合の貸家建付地評価の計算方法は以下の通り算出します。

自用地評価(路線価×面積)×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借地権割合は国税庁のホームページに掲載されている路線価図で確認することが可能です。借家権割合は全国一律で30%と定められています。

上記の式を使って計算すると自用地評価1億円の土地で借地権割合が70%、賃貸割合が100%のケースでは、土地の評価は7,900万円の評価となります。駐車場や更地になっている土地に賃貸アパートやマンションなどを建てるとその敷地は貸家建付地評価となりますので、相続税の節税につながります。

建設資金は必要となりますが、同じ土地でも評価が大きく下がり例がありますので、土地の評価が高い場合はこのような節税方法を検討してみても良いでしょう。ただし、賃貸経営には一定のリスクがあるということは注意点として理解しておきましょう。

家屋の評価方法

次に家屋の評価方法について解説します。家屋の評価は固定資産税評価額で計算を行います。毎年送付される固定資産税の納税通知書で確認することが可能です。納税通知書が手元にない場合は市区町村役場で名寄帳を取得して確認することができます。

固定資産税評価は建築費の50%~70%で評価されますので、賃貸用アパートを建設することで、土地の評価が貸家建付地評価となり、減額されるだけでなく、現金を減らすことで建物部分も大きく評価減が可能です。また、家賃が入ることで安定的に収益も見込めるなどメリットの大きい相続税対策です。

ただし、相続人が2人以上いる場合は分割しづらくなったり、共有にするとのちのちトラブルになる可能性があるなど、デメリットもあります、また空き家の状態が長く続くと赤字になってしまう可能性もあり、賃貸経営自体が成功するとは限りませんので慎重に検討する必要があります。

相続税の計算は相続発生後に行う?

通常は相続税の計算は相続が発生した後に行います。しかし、できるだけ相続税は生前に計算しておくことをおすすめします。相続税の計算を早めに行い、準備をしておくメリットや効果について解説します。

節税ができる

1億円を超えるような資産家の方は税率も高くなりますので、相続税の負担も大きくなります。

事前に相続税の節税をしておくと課税対象となる資産が、それぞれどれくらいの評価額となるのか、その時点ではあるものの計算することになります。課税対象の財産の中には、利用していない土地など節税できる可能性や生前贈与を検討することができます。

節税対策を行う際は財産の内容や額に応ずる鵜対策を行うことが重要です。遺産相続の前にシミュレーションをしておくことで、財産を引き継ぐ相続人にも相談をしながらポイントを抑えた有効な節税対策をすることができます。

節税対策をするためにはまずは現状を把握し、子どもや配偶者等に説明してから判断する事も大切です。対策を行ったことで、結果的にトラブルになることもあります。家族と相談し、家族が反対するのであれば、別の方法を検討してみてもよいでしょう。

利用できる特例を事前に確認できる

相続税にはさまざまな特例があります。特例にはさまざまな要件があり、要件を満たすことで、特例の適用を受けることができ、税額の控除や財産の評価を下げることができます。

例えば、小規模宅地の特例では自宅用の不動産であれば、引き続き居住する方や持家がない方が相続した場合、最大330㎡まで80%評価減となるケースや貸付事業用の不動産であれば、事業を継続する相続人が権利を引き継ぐと最大200㎡まで50%差し引いて計算することができます。

どの特例を利用できるか先に確認することで、特例の適用漏れを回避することができますので、多く税金を納めることを防ぐことができます。

相続人の負担を減らすことができる

相続発生後、相続人はさまざまな手続きを行う必要があり、忙しくなります。相続人が被相続人の財産について情報を持っていない場合、故人の家の中にある通帳や生命保険の証書や株式の明細等を探すこととなりますので、財産をわかる状態にしておくことも重要です。。

財産が多い場合や相続人が遠地に住んでいる場合など、状況によっては、内容がわからず財産を調べることや、複数保有している土地を特定するだけでも大変な作業になり、時間がかかることがあります。

財産をまとめて一覧の表を作成しておけば、不動産や金融機関の取引など、保有しているの財産を確認しやすくなり、財産分けの話し合いもすぐに行えますので、遺された親族も納得のいく分け方ができるでしょう。相続発生後に財産配分をすると争いになる可能性が高い場合は遺言を作成しておいてもよいでしょう。遺言書に配分を決めて記載しておくことで、相続人間の関係を悪化することなく、財産を分けることができます。

また財産の申告漏れや納税した金額が異なる場合、税務調査によって加算税が課せられる場合もあります。一覧にしておくことで、申告漏れも防ぐことができるので相続人も安心です。

相続税の申告や相続税対策は税理士に相談を

ここまで解説したとおり相続税の計算は複雑で、知識がなく、慣れない方にとって自分で行うのは簡単ではありません。何から始めていいかわからないという方もおおいでしょう。

また、相続発生後、家族は悲しみに暮れる間もなく、10ヶ月という短い期限で申告と一括での納付を済ませる必要があります。10ヶ月以上過ぎてしまうと加算税を請求される場合もあります。財産の評価や申告書の書き方がわからない方は専門家である税理士のサポートを受けることをおすすめします。

知り合いや紹介してもらうことが難しい場合は相続税や贈与税を専門としている税理士をホームページなどで探してみるとよいでしょう。相続税は所得税や法人税とは違う知識が必要となりますので、相続税に強い税理士を探すことは重要です。また、初回の相談は無料で行っている場合もありますので、まずは気軽に相談することをおすすめします。

実際に申告を依頼する場合は、財産の額などに応じて費用がかかりますが、特例などの適用のアドバイスを受け、うまく活用することで、同じ遺産の額でも実際に納める税金が引き下げられることもあります。

相続税には不動産だけでなく、未成年者や障害者が相続する場合の税額控除など、さまざまな特例があります。税理士に報酬は支払いますが、しっかりと特例を利用することで、それ以上に納税する金額を減らすことができる場合もあります。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
税理士選びにお困りなら、まずは無料相談でお気軽にご相談ください!

注1]参照:国税庁:No.4158 配偶者の税額の軽減
[注2]参照:国税庁:No.4205 相続税の申告と納税
[注3]参照:国税庁:財産を相続したとき

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい