「マンションを相続で取得したけど相続税評価額の求め方がわからない」と悩んでいませんか。専門的な知識がないと、何をどうすればよいかわからないケースが多いでしょう。しかし、いい加減に済ませることはできません。計算方法を間違えていると、相続税額にも影響がでるからです。マンションを相続した場合は、正しい方法で評価する必要があります。
この記事では、マンションの相続税評価における理解しておきたい用語の説明と評価の流れをわかりやすく解説しています。以下の内容を参考にすれば、計算の手順などを理解できるはずです。マンションの相続税評価でお困りの方は確認しておきましょう。
マンションの相続税評価に使う用語
マンションの相続税評価額を求めるうえで最初に理解しておきたいのが、登場する専門用語の意味です。
まずは、以下の用語の意味を押さえておきましょう。
共有部分・専有部分
マンションは、共有部分と専有部分に分かれます。共有部分は住人が共同で使用する部分、専有部分は購入した人しか使えない部屋(=購入した部屋)です。共有部分の例として、エレベーター、エントランス、中庭、廊下などが挙げられます。共用部分は利用規約で定められています。
区分所有権・敷地利用権
マンションの独立した部分(専有部分)の所有権を区分所有権といいます(所有者を区分所有者)。マンションの敷地は、区分所有者全員で共有します。それぞれの区分所有者が有する土地を利用する権利を敷地利用権といいます。大規模なマンションであれば、一室当たりの土地は小さくなります。
持分割合
マンション全体対する各専有部分の割合を持分割合といいます。持分割合は、売買契約書や登記簿などで確認できます。
マンションの相続税評価額の計算手順
総額が基礎控除を超える遺産を相続する場合、各財産の評価を行う必要があります。マンションの相続税評価は、土地と建物を別々に行います。土地は全体の評価額を求めてから持分割合で按分して住戸別の評価額を算出します。
建物と土地の評価額の合計が相続税評価額です。
計算の手順は次のようになります。
Step1.建物の相続税評価額を求める
建物の相続税評価額は「固定資産税評価額×1.0」です。固定資産税評価額は、毎年4月上旬に送られてくる「固定資産税の課税明細書」の「価格」欄に記載されています。
ちなみに、固定資産税評価額には、共有部分の評価(住戸別)も含まれています。
Step2.土地全体の相続税評価額を求める
土地の評価方法は、路線価方式と倍率方式に分かれます。路線価方式は土地が面する道路ごとに設定された1平方メートルあたりの路線価に基づき、面積×路線価で評価の金額を求める方法、倍率方式は固定資産税評価額に一定倍率をかけて評価額を求める方法です。路線価方式は市街地の土地、倍率方式は郊外・農村部などの土地で用いられます。
路線価方式で用いる相続税路線価は、国税庁ホームページなどで調べられます。各路線には、200C・300Dなどが割り振られています。前半の数字は宅地1平方メートルあたりの価額(単位は千円)、後半のアルファベットは借地権割合です。つまり、300Dであれば300千円になります。賃貸に出している場合は借地権割合等によって、評価を減額することができます。
例えば、マンションの土地が1,000平方メートルで1平方メートルあたりの価額が300千円であれば、土地の相続税評価額は3億円になります。実際に相続税評価額を算出するときは面している道路などに応じて路線価補正を行わなければなりません(複雑なためここでは割愛します)。
倍率方式の計算方法は、「固定資産税評価額×評価倍率」です。評価倍率も、相続税路線価と同じく国税庁ホームページの財産評価基準で調べることが可能です。
Step3.土地の相続税評価額を求める
以上の方法で土地全体の相続税評価額を求めてから、住戸あたりの相続税評価額を求めます。具体的には、土地全体の相続税評価額に持分割合を乗じるだけです。
例えば、土地全体の相続税評価額が3億円、持分割合が400000分の8000だとしたら住戸あたりの相続税評価額は600万円になります。
Step4.建物と土地の評価額を合計
住戸あたりの土地の評価額を求めたら、建物の評価額と合算します。
以上の合計が、マンションの相続税評価額です。
マンションを相続する時の注意点
マンションを相続する時の注意点について解説します。
小規模宅地の特例も利用可能
居住用の不動産を相続する場合に利用できる小規模宅地の特例の対象は一戸建てだけではありません。マンションの一室を相続した場合でも、配偶者や同居の子どもが相続するケースなど、条件を満たしている場合、小規模宅地の特例を利用することができます。適用が漏れないようにしましょう。いくらの減額になるかは地域によって異なります。最大330㎡まで、80%評価を減額することができますが、都市部の方が、1㎡あたりの価格が高くなりますので、減額の効果は大きくなります。
実際の価格と大きく乖離する場合が多い
マンションの相続税評価額は上記に説明した計算式で行うことができます。しかし、マンションの相続税評価額は実際の売買価格の半分以下になることも多くあります。特に価格が高い、高層マンションの上の階であればあるほど同じマンションでも大きな乖離が生まれる傾向にあり、物件によっては数千万単位で乖離が生じる場合もあります。
そのため、この価格差を利用して、自宅だけでなく、収益用としてマンションを購入し、資産を圧縮することで相続税対策に活用することもできますが、相続税評価額で平等に相続人に配分した場合、実勢価格と比較して乖離することにより不公平になる可能性があります。
被相続人の財産を一覧の表で見て、配分する際に、マンションとマンション以外の財産のバランスをよく考えて、関係が悪化しないように遺言を作成するなど、生前に対応する必要があるでしょう。
また、いわゆるタワーマンションに該当する場合、相場との乖離幅が問題視されており、今後制度変更により評価方法の変更が行われる可能性があります。規模の大きいアパートを建てるよりも、タワーマンションを複数保有する方が相続税の節税効果が大きいこともあり、相続税対策の主流となっていましたが、制度改正により相続税対策の方法も変わるかもしれません。
わからないときは税理士に相談
いかがでしたでしょうか?マンションの相続税評価額の求め方を解説しました。不動産の評価は、現金や預貯金と異なり、簡単ではありません。ここに路線価補正などが加わると非常に複雑になります。ある程度理解できていたとしても、実際の計算で間違えると相続税額にも影響します。課税対象の相続財産の中に評価が難しいものがある場合や、不動産の数が多い場合など、評価に不安を感じるときやわからないとき、配偶者控除などの特例の適用条件が分からない場合は、専門家である税理士のサポートを受けるようにしましょう。
自分で申告手続きを行うことが難しい場合は、費用はかかりますが、申告を税理士に依頼することをおすすめします。知り合いの税理士がいない場合は、インターネットなどで、相続税に強い、実績のある税理士を探すようにしましょう。
電話やオンラインで相談ができる税理士法人も増えていますので、気軽に相談してみるとよいでしょう。
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