相続の手続きをする際に相続税の申告期限である相続開始から10ヶ月以内という期限を意識して手続きを進める必要があります。相続税の申告では、納税義務がある者のさまざまな事情を考慮し、財産の評価額を減額することで、相続税の負担を軽減する特例があります。相続税や贈与税にはさまざまな種類の特例があり、要件を満たす特例をしっかり活用することで相続税を納税する額を減らすことができますので、特例は相続対策を検討するうえでも重要です。
今回は代表的な相続税の特例と適用条件について説明します。
小規模宅地の特例
小規模宅地の特例とは自宅や事業用、貸付用の宅地を相続した場合に評価を減額することができる特例です。対象となる宅地、適用面積と減額割合は下記の表の通りです。
対象宅地 |
限度面積 |
減額割合 |
特定居住用宅地 |
330㎡ |
80% |
特定事業用宅地 |
400㎡ |
80% |
貸付事業用宅地 |
200㎡ |
50% |
特定居住用宅地の場合、同居して一緒に住んでいた配偶者や子供、または自宅を所有していない子供等が相続した場合に適用することができます。子供が自宅を保有していない場合の適用するケースは家なき子の特例とも呼ばれています。被相続人が介護などが理由で老人ホームに入居して生活している場合でも利用できる場合があります。また、申告までは他の人に住宅として売却することはできません。評価減の効果も大きい制度ですので、しっかりと条件を満たせているか確認しましょう。
特定居住用宅地の特例は最大330㎡まで適用可能です。330㎡以上の土地を保有してる場合、330㎡の部分まで適用することができます。マンションは利用できないと勘違いしている方も多いですが、マンションも自分の部屋の広さなどに応じて土地を所有していますので、利用することが可能です。
特定事業用宅地は被相続人が事業のために使っていた敷地で申告期限まで引き続き事業を継続した場合に利用できる特例です。貸付事業用宅地は駐車場など宅地の貸し付けを行っていた場合に適用することができます。最大400㎡まで適用可能です。
該当する宅地を所有する場合、小規模宅地の特例を利用することで財産の評価を下げることができます。適用できる相続人と適用できない相続人がいる場合は適用できる相続人を優先して相続させるという方法もあります。最大200㎡まで適用可能です。
上記の表の通り小規模宅地の特例は金額ではなく、面積で上限が決められていますので、土地の路線価が高い地域の方が控除できる割合が多くなります。なお、本特例では建物・家屋については評価減はありません。
配偶者控除
配偶者控除は一番よく使われる特例です。
配偶者控除とは配偶者に遺贈した場合、法定相続分か1億6千万円までは非課税となる制度です。配偶者は被相続人と生計を共にし、財産を作り上げた存在として、大きな税額軽減が権利として認められています。
そのため、相続財産として受ける財産には一定の部分について納税が免除され、ほとんどの場合非課税になります。
未成年者控除
未成年者控除とは未成年者が財産を相続した際に適用できる特例です。具体的な計算方法は以下の通りです。
10万円×(18-相続発生時の年齢)
例えば10歳の時に財産を相続した場合は100万円の控除となります。
障害者控除
障害者控除は障害者が財産を相続する時に利用できる制度です。具体的な計算方法は以下の通りです。
一般障害者:10万円×(85歳-相続発生時の年齢)
特別障害者:20万円×(85歳-相続発生時の年齢)
特例を利用する際の注意点
次に特例を利用する際の注意点を解説します。
特例を利用する際の注意点にはどのようなものがあるのでしょうか。
相続税が0になる場合も申告が必要
死亡した人の財産が同じでも分割方法によって特例や税額控除を利用することで納付する税額が0円になる場合があります。税金が0円になる場合でも、基礎控除(計算式:3,000万円+法定相続人×600万円)を超えている場合は相続税の申告が必要となります。明らかに基礎控除の範囲内の場合は相続税の心配はありませんが、特例の利用によって相続税が0となる場合は遺された親族は税務署に申告書を提出する必要があります。申告の要否が明らかになるまでは、必ず財産を調査するようにしましょう。
財産の総額が基礎控除を超える人は特例によってメリットを受けられ、税金がかからない場合もありますが、申告が必要であるということは覚えておきましょう。
原則期限内に申告しないと特例は受けられない
原則、相続税の特例は期限内に申告することで適用を受けることができます。期限後に適用を受ける場合は別途手続きが必要となります。
特例を利用する場合は期限にも特に注意して手続きを進める必要があります。期限内に手続きを進めるために有効な手段の一つが遺言書を書いておくことです。2人以上の相続人がいる場合、遺言書を書いておくことで、遺産分割協議を行う必要がなくなるため、大きく負担を減らし、早く手続きを進めることができます。
配分に注意が必要
特例を利用することで、相続税の負担を減らすことができますが、特例を利用するための財産配分とすることには注意が必要です。
例えば、配偶者の税額軽減を活用するために、すべての資産を配偶者に取得させることで子どもの遺留分を侵害する可能性があります。他にも小規模宅地の特例を利用するために、一人の子どもに土地を承継させた場合、財産の大部分を子どもが相続することになるケースもあります。事業を営んでいた場合、法人として所有していた財産を相続させる場合もあるでしょう。
特例を利用するために不動産を偏った配分にすると相続人間でトラブルに発展して、関係が悪化してしまう可能性があります。生前に特例を利用して贈与をしている場合は贈与した分も含めて検討するようにしましょう。また、生前に贈与をしている場合相続開始前3年以内の贈与は相続税の課税対象となりますので、その点も注意が必要です。
財産配分を検討する際は、亡くなる前に資産の合計額を計算し、シミュレーションを行ったうえで相続人の状況や亡くなった方との関係性についても理解したうえで決めていくと良いでしょう。
相続税の申告は税理士に相談を
相続税の計算は非常に複雑です。数多くの特例があり、上で解説したもの以外にもあります。特例を適用しなければ、相続した人の税負担が大幅に増えてしまう可能性があります。国税庁のサイトマップにアクセスし内容を確認すれば、どのような特例があるか概要を理解することはできますが、添付する書類なども多くありますので、相続税の知識がない方が適用条件に付いて理解し、対応することは難しいでしょう。万が一申告を怠ったり、過少申告をした場合、税務調査を受ける可能性もあります。
相続税には期限があります。遺言がない場合、遺産分割協議を行って相続財産の一覧を作成し、それぞれの財産ごとに評価をするとかなり時間がかかるでしょう。相続発生後は不動産の登記や金融機関の預金口座の名義変更など、何かと忙しい中で法定の期限内に申請を行わないと適用が受けられなくなるという大きなデメリットがあります。節税をするためにも期限を守ることは重要です。確定申告のように毎年経験するものではありませんので、相続税に詳しい人でないかぎり、税務署に提出する書類の記載方法などは分からないことが多いため、早めに対応するようにしましょう。
税制改正も頻繁に行われますので、過去に相続税申告の実績があり、最新の情報を持つ専門家である税理士や税理士法人に相談するようにしましょう。申告を依頼すると財産等に応じて費用がかかりますが、初回の相談はサービスで無料で応じてくれる場合も多いので、課税対象となる財産の一覧を持っていくとよいでしょう。
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