お役立ちコラム一覧

海外に居住している人が亡くなった場合の相続税とは?

2023年08月11日

相続税はさまざまな制度がありますが、特に複雑となるのが、海外に居住している人が亡くなった場合や海外の不動産を購入している場合など資産がある場合の手続きです。相続税は死亡から10ヶ月以内に、財産を分割し、相続税の申告を済ませる必要があります。期限を過ぎると延納になってしまいますので、期限に完了させることが重要です。

通常でも相続発生後は忙しくなりますが、親族が海外に住んでいる場合など、海外が絡む場合はさらに、忙しくなります。

当記事では海外が絡む相続の課税制度や注意点について解説します。

相続財産の所在地

海外を含む相続においてポイントとなるのは以下の3つです。

①相続財産の所在地
②被相続人の住所
③相続人の住所

上記3つの組み合わせによって日本の相続税が課されるか否かが決まります。最も大切となるのが、財産の所在地です。日本国内にある財産については、全て日本の相続税の課税対象となり、納税義務が発生します。相続発生前に、被相続人、相続人ともに海外に居住しており、日本国籍を有していなかったとしても、日本国内にある財産を取得した時は、日本の相続税がかかるので、注意しましょう。

相続人・被相続人ともに日本に居住しており、海外の資産を相続する場合も日本の相続税がかかります。ただし、海外資産については、その国の法律に従う必要があります。

例えば米国では、不動産や、金融資産など全ての資産の検認を受ける必要があり、非常に時間がかかり、計算も複雑なため、注意が必要です。海外で事業を行っている場合や、過去に居住していて、財産がある場合は、いずれ発生する相続に備えて事前に売却する等、対応を検討しておいた方がよいでしょう。

被相続人・相続人が海外に居住しているケース

財産が海外にある場合、被相続人と相続人の状況によって異なる税制になっています。次に被相続人・相続人が海外に居住しているケースについてみていきましょう。

日本に居住する相続人が海外に居住する被相続人から財産を承継するケース

日本に居住する相続人が非居住者である被相続人から財産を引き継ぐ場合、日本の相続税の対象となります。日本にある資産だけでなく、国外の資産についても相続税がかかりますので、注意しましょう。

海外に居住する相続人が日本に居住する被相続人から財産を承継するケース

日本在住の親が亡くなり、海外に住む相続人に遺贈した場合、日本の相続税がかかります。外国人と国際結婚をした場合や仕事で海外に移住しているケースなど、相続人が海外に住んでいるケースは少なくありません。

海外に居住している子供は日本で印鑑証明書・住民票を取得することができないため、代わりにサイン証明と在留証明を取得します。

書類の取得にも時間を要しますし、日本の金融機関の手続きも自分で行えないことが多く、相続開始から10ヶ月以内に手続きを終えることが難しいことが多いです。専門家に手続きを依頼した方がよいでしょう。

被相続人・相続人ともに海外に移住していたケース

被相続人・相続人どちらも海外に移住していたケースでは、いずれかが10年以内に日本に住所を有していた場合、海外の資産についても日本の相続税の課税対象となります。相続発生日前10年以内にいずれも日本に住所を有していなかった場合は相続税の課税対象とはなりません。

海外が絡む場合の対応方法

海外が絡む場合の相続についてはまず、相続税がかかるかどうかを確認しておきましょう。基礎控除は3,000万円+法定相続人×600万円で計算します。相続人が配偶者と子供2人の場合は、4,800万円までは非課税です。また、保有する財産は一つずつ評価していく必要があります。不動産は売却の価格ではなく、土地は路線価、建物は固定資産税評価で計算しますので、株式、投資信託、預貯金、生命保険などの金融資産とあわせて事前に調査しておくとよいでしょう。

資産の評価の合計が基礎控除の範囲を超える場合は相続税を申告する必要があります。財産を一覧の表にして、相続税の申告が必要な場合は対応を行った方がよいでしょう。

具体的な対応の方法としては海外資産に該当するものを事前に売却しておくことや、海外に相続人が住んでいる場合は事前に遺言を作成して、方針を決めておくことが考えられます。相続人のうち海外に住む人がいる場合、会って話し合いをすることが難しく、遺産を巡って、関係が悪化するケースも多くあります。

また、不動産を海外時居住者が引き継いだ場合、自分で利用することはできませんし、貸付した場合、所得税の申告の問題も出てくるため、取り扱いに困ることも多いでしょう。

生前に遺言書を作成して、誰が何を相続するか決めておくことで、節税や、手続きの対策だけでなく、遺産分割のトラブルを回避することも可能です。

外国税額控除

海外資産に日本の相続税がかかった場合、日本の相続税と海外の相続税の二重課税になる可能性があります。日本の相続税では、二重課税を防ぐための特例として、外国税額控除という制度があります。

外国税額控除を適用した場合、いずれか2つのうち、少ない金額の税金が控除されます。

①海外で納付して相続税の金額
②日本の相続税額×(海外の財産合計÷相続人の財産額合計)

要件を満たす場合、負担を減らすためにも控除の申請を忘れないようにしましょう。

海外が絡む相続税については税理士に相談を

海外の財産や被相続人または相続人が海外に居住している場合の相続税や贈与税の申告は非常に複雑になりますので、知識がない人が自分で申告することは難しいでしょう。

短い期間で完了させる必要があるうえに誤った申告をした場合、税務署に税務調査で指摘される、精算される可能性がありますので、自分で手続きが難しい場合は、税理士に相談した方が良いでしょう。初回の相談は無料としている税理士も多いので、気軽に相談しましょう。

相続税法は税制改正も頻繁にありますので、税理士に依頼する際は海外が絡む相続税の経験が豊富な税理士事務所・税理士法人に依頼するようにしましょう。

海外資産を対象とする場合の申告は、同じ財産の額でも手間が大きく増えるため、通常よりも高い報酬となることが一般的です。税理士に料金を事前に確認しておくようにしましょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
税理士選びにお困りなら、まずは無料相談でお気軽にご相談ください!

注1]参照:国税庁:No.4158 配偶者の税額の軽減
[注2]参照:国税庁:No.4205 相続税の申告と納税
[注3]参照:国税庁:財産を相続したとき

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい