遺産分割協議は一度完了したら基本的にやり直すことはありません。しかし、場合によっては遺産分割協議をやり直した方が良いケースもあります。いったん遺産分割協議書に署名・押印した場合、再度分割協議を行うことができるのでしょうか。
当記事では遺産分割協議をやり直すべきケースとやり直す際の注意点について解説します。
遺産分割協議はやり直し可能
遺産分割協議をやり直すことは可能です。特に、時効もありませんので、相続開始後数年経っている場合でも相続人全員で納得して合意できるのであればいつでも再度協議を行なって分割することで名義変更をすることが可能です。
一方でやり直すことで、さまざまなことをやり直す必要がありますので、大変な作業が発生し、負担も大きいです。そのため、よほど重要なことがない限り遺産分割協議を取り消してやり直すことはありません。ただし、本当に必要な場合は遺産分割をすることが可能です。
遺産分割をやり直すケースとは
遺産分割をやり直すべきケースとはどのようなパターンがあるのでしょうか。具体的に確認してみましょう。
遺言書が見つかった場合
相続が発生した時点では気づいておらず、遺産分割協議が完了した後に被相続人が生前に相続対策のために作成した遺言書が見つかる場合があります。
遺言書が後で見つかった際に分割した内容と異なる内容であった場合、再度遺産分割を行なって財産を分けることが認められています。遺言者の希望が実際の配分と違うケースや遺言書によって非嫡出子が認知され、財産を取得する権利がある者が増えるケースもあります。
嫡出子を認知して相続人が増えた場合、子供には遺留分もありますので、遺言には財産を遺さないと記載していても遺留分が侵害されている場合、遺留分を請求し、財産の取得を主張される可能性があります。その子が相続放棄をしない限り原則、遺産分割に参加してもらい成立するまで再度話し合う必要が生じます。
ただし、遺言書が作成された当時、遺言者が作成する前に認知症などの診断を受けており意思能力がなかった場合などは無効となるケースがあります。また、遺言書の能力に問題がなくても自筆証書遺言であった場合、不備により法的には無効となる可能性がありますので家庭裁判所で検認を受ける必要があります。また、有効な遺言であったとしても、必ずもう一度分割の必要が生じるわけではありません。
新たな財産が見つかった場合
遺産分割後の調査等により、最初に遺産分割した時には存在に気づいていなかった新たな財産が見つかった場合も、財産を分けるために遺産分割協議が必要となります。当初の財産配分から遺産が増えたことで、特に東京の都心に近くアクセスが良い不動産など価値が高く、それぞれに金銭で分割することが難しい場合は話し合いからやり直さざるを得ないと判断するケースが多いでしょう。
再度、話し合いを行い、遺産の分割方法を決める必要があるでしょう。また、相続財産が増えたことで、基礎控除以下であった財産が基礎控除を超えてしまい、相続税の申告が必要となるケースもあります。
詐欺・脅迫・錯誤があった場合
財産を配分した後に詐欺・脅迫・錯誤により適切な判断ができない状況であった場合、本来の意思とは異なった配分となっている可能性があります。
そのようなケースでは詐欺・脅迫・錯誤があったことを理由に遺産分割協議をやり直すことが可能です。
万が一、相続人間で関係が悪化し、トラブル状態になった場合、相続人と弁護士を交えて交渉することになります。第三者である弁護士を交えても解決が出来なかった場合、家庭裁判所で調停、審判に進むことになります。
特別受益などが判明した場合
特定の相続人がすでに多額の生前贈与を受けていたなど、特別受益が後で発覚した場合は、遺産分割の内容を変更することが可能です。民法の法定相続割合を超える財産を生前に贈与を受けていた場合などは相続発生後に分割する財産を共同で相続する必要がないと考える人も多いでしょう。
そのため、先に財産を取得している場合、全員の合意を得られれば再度、遺産分割をすることが可能です。生前に受けた贈与も含めて再度分割について検討してもよいでしょう。
遺産分割協議のやり直しは専門家に相談を
遺産分割協議をやり直すことで税金の計算や申告手続きもやり直す必要が生じる可能性があります。遺産分割協議をやり直す場合は通常よりも複雑な手続きが必要になり問題となるケースが多くありますので対応に注意が必要です。
遺産分割や不動産登記の手続きや相続税の申告は所得税のように毎年行っていくものではありませんので、基本的な知識がない人も多いでしょう。特例を活用することで相続税の節税につながることもありますので、自分で特例の条件を確認することや手続きをすることが難しい場合は、無理をせずにサポートを受けることが大切です。
費用はかかりますが税務の専門家である税理士にサポートを依頼することで安心して進められるという大きなメリットがあります。
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