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相続放棄は複雑?相続放棄の手続き方法や期限を解説!

2022年08月07日

遺産相続をする際に、被相続人が借金を抱えていることが発覚した場合など、様々な理由で相続財産を受け取りたくないと考える法定相続人もいるでしょう。

そのような場合に必要となるのが相続放棄の手続きです。遺産を放棄する際は誰にどのように申し出を行っていけばよいのでしょうか。

今回は相続放棄の手続きの方法や期限などについて解説していきます。

相続放棄とは

相続放棄とは被相続人の死亡後に遺産の相続権を放棄することです。相続放棄をすることで、預金などのプラスの財産もマイナスの財産も遺産を相続することがなくなります。遺留分は事前に放棄をすることができますが、相続放棄はあくまで、被相続人が亡くなってから行う必要があり、生前に放棄することはできません。

相続放棄をした相続人は相続税の申告書の作成や資料を準備し、管轄の税務署に提出する必要はありませんし、遺産分割の協議に参加することはありません。

相続放棄をすることで、負債を引き継がないことや遺産分割の話し合い、司法書士に登記を依頼するなど複雑な手続きから免れるというメリットがあります。

ただし、相続放棄をすることで、遺産を相続することはできませんので、後から他の相続人の法定相続分を請求するようなことはできません。

相続放棄とは逆にプラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことを単純承認といいます。単純承認をした場合は、マイナスの財産も引き継ぐことになりますので、相続人が借金の返済義務を負い、債権者は相続人に借金の返済を要求することができます。

相続発生から3カ月が経過し、特に相続人が意思表示をしなかった場合、基本的に単純承認をしたものとみなされます。

相続放棄の手続き方法

相続手続きをするためにはどのような流れで行えばよいのでしょうか。相続放棄の流れを確認していきましょう。

相続放棄の申述方法

相続放棄をする際は被相続人の最後に住民票がある住所地の管轄の家庭裁判所に相続放棄の申述書に必要事項を記入のうえ提出する必要があります。相続放棄の申述書は家庭裁判所のホームページから直接ダウンロードすることが可能です。

相続放棄には収入印紙800円分と郵送用の郵便切手を貼付する必要があり、大きな金額ではありませんが、費用がかかります。他にも被相続人の出生からの連続した戸籍謄本や亡くなったことが証明できる除籍謄本や住民票の除票、相続人の戸籍謄本などを添付する必要となります。戸籍等は親子や兄弟などの関係が記されており、法定相続人を特定するための証明書として必要になります。

相続放棄は相続人の中で放棄を行いたい人が単独で行うことができますので、他の相続人に相談せずに裁判所に書類を提出したとしても有効です。

相続放棄が家庭裁判所に承認されれば、家庭裁判所から相続放棄が受理が完了した旨の通知が届きます。これにより、放棄した人は始めから相続人ではなかったことになります。

1人が代表として手続きを進めれば全員放棄したことになるわけでなく、全員が放棄するのであれば、全員放棄の手続きを進める必要がありますので注意しましょう。

相続放棄の期限

相続放棄は相続開始を知った時から3ヶ月以内に行う必要があります。期間内に書類を提出しなければ、相続放棄が認められることはありませんので、早めに準備をして提出することが重要です。3ヶ月を過ぎてしまうと制度を利用することはできませんので、注意しましょう。

期限に間に合うようにするためには、負債の額を早めに確定することが重要です。複数の金融機関で借入を行っているような例ではなかなか債務の額が確定できない場合がありますので、早めに調査を始めることが重要です。

相続放棄には受理されるための厳しい条件があるわけではありませんので、期限を守ることが重要です。

相続放棄についての注意点

相続放棄は比較的簡単な手続きで行うことができますが、いくつか知っておくべき注意点やデメリットがあります。

相続放棄では代襲相続は発生しない

相続には順位があり、もし相続人が先に亡くなっていた場合、代襲が発生します。例えば、子どもが先に亡くなっていた場合、孫が代襲により相続人となります。

しかし、相続放棄では代襲は発生しないため、子が放棄しても孫が相続人になることはありません。

相続放棄をすると撤回することはできない

一度相続放棄をすると原則撤回することはできません。相続放棄をするか否かの判断は被相続人の財産を預貯金、土地、建物などを種類別に評価をしたうえで一覧にし、判断する必要があります。多くの資産を持つ場合、財産を把握するまでに時間がかかります。株式などを多く持つ場合は相場によっても資産が変動しますので、より一層判断は難しいものとなるでしょう。

被相続人の財産が分からない場合は、被相続人と関係の深い人から情報を得て、知ることができた内容から判断するしかありません。

借金があっても、それ以上に多くの財産があるのであれば、相続したいと考える人も多いでしょう。相続の発生後は葬儀などで忙しく、あっという間に時間が過ぎてしまいます。相続放棄は3カ月という短い期間で行う必要があるため、迅速に財産を調査し、資産の内容を明らかにしたうえで正しい判断をする必要があります。

相続放棄によってトラブルに発展することもある

相続放棄は単独で意思表示をすることができますが、他の相続人に知らせずに相続放棄を行った場合、トラブルに発展するケースもあります。例えば、配偶者が相続放棄をした場合、親や子供、兄弟姉妹などが借金を背負う可能性があります。

相続放棄は一人で行う権利がありますが、不要なトラブルをさけるために、実際に相続放棄をする際は他の親族にも連絡をするほうがよいでしょう。

自分が相続放棄をすることで、他の相続人の割合も変わってしまい、相続人同士で争いに発展し、弁護士が仲裁に入るということもあります。相続人が多数いる場合は、気軽に放棄をするのではなく、相続人間の関係や利害関係の状況も考慮しながら検討するようにしましょう。

相続放棄以外の方法

相続放棄は財産を放棄するため、被相続人の財産が思ったよりも多かったときでも、一度放棄が家庭裁判所に受理されてしまうと、財産を受け取ることはできません。

故人の財産がどれくらいあるかわからない場合にほかの方法を探ることになります。

有効となるのが、限定承認です。限定承認は被相続人の財産がプラスであった場合のみ財産を相続する方法です。借金があっても、プラスの財産の範囲内であれば、財産を相続し、相続した財産を売却や処分をしたうえで借金を返済することも可能です。

限定承認の期限は相続放棄と同じく3カ月以内ですが、相続放棄とは異なり、相続人全員で意思表示をする必要がありますので早めに準備する必要があるでしょう。

被相続人の財産が一切わからないという場合は限定承認の選択を検討してみることをおすすめします。相続対策は正解があるわけではありませんので、状況に応じて的を得た対応を行うことが重要です。

借金がある場合の事前の対策

相続放棄を検討するケースの多くは被相続人に借金があるケースです。借金がある場合には事前の対策を検討しておく方がよいでしょう。

借金がある場合に重要となるのは借金の行先を決めておくことです。法定相続人の中で承継する人を決めておけば、トラブルになる可能性を下げることができるでしょう。不動産を購入するためのローンや事業用に借りている借金であれば、まとめて不動産や事業を引き継ぐ人が相続するのが一般的です。

承継する人が決まっている場合は遺言書を作成するなど、承継先を定めておくようにしましょう。遺言では一部の財産について承継先を指定することもできますので、債務と債務に関連のある資産だけ、取得する者を定めておき、負担がかかることを事前に説明することも有効な手段です。

遺言書は民法の規定に従って記載しなければ効力が発生しません。効果がある遺言書にするために行政サービスなどで無料の相談会を行っていることもありますので、利用してみるとよいでしょう。

判断に迷う場合は専門家に相談を

相続放棄の手続きは期限が短いため、判断に迷うことも多いでしょう。自分で判断することが難しい場合は、税理士など、相続の専門家に相談するようにしましょう。実績のある税理士であれば、もしかしたら、あなたの悩みをすぐに解決することができるかもしれません。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい