お役立ちコラム一覧

相続税に影響を与える小規模宅地等の特例の対象・要件・減額割合

2021年12月05日

小規模宅地等の特例は知っているけど、自分がその対象になるかわからない…と疑問を抱いていませんか。

この特例は、被相続人が所有していた宅地(以下、土地)の課税対象の評価額を減額することで相続税を抑えて土地や事業を引き継ぎやすくするものです。適切に活用すれば税額を抑えられますが、すべての土地・相続人が適用できるわけではありません。

この記事では、同特例の対象になる土地と相続人の要件、各土地における限度面積と減額割合などを解説しています。さらに、具体的な事例をもとに、どれくらいの評価減を受けられるかも紹介しています。この記事の情報を参考にすれば、全体像とポイントをつかめるはずです。
土地を相続してお困りの方などは、参考にしてください。

小規模宅地等の特例を受けることのできる土地と適用要件

土地は路線価×面積で評価をしますが、さまざまな特別な事情があることを理由に特例を受けることで評価を大幅に減額することができます。小規模宅地の特例は使えることが多いので、基礎控除を超える財産を保有する人が亡くなった場合、控除漏れがないように、必ずご確認いただきたいと思います。

同制度の対象になる土地は、以下の4種類に分類されます。それぞれの概要と適用要件を説明しますので、利用する可能性のある特例の条件や内容、効果を確認しておいてください。小規模宅地の特例はあくまで宅地に対する特例で家屋については対象ではありません。

特定事業用宅地

相続が始まる直前まで被相続人などが事業を行っていた土地で、一定の要件を満たす被相続人の親族が相続などで取得したものです。ただし、以下の3事業を行っていた土地と相続が始まる前の3年以内に新規事業(一定規模以上の事業は除く)を始めた土地は除きます。

【3事業】

  • 賃貸アパートなどを含む不動産貸付業
  • 自転車駐輪場業(準事業を含む)
  • 貸駐車場などを含む駐車場業

「準事業」とは、事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うものをいいます。
国税庁 No.4124

次に、要件を紹介します。

区分 要件
被相続人が事業を行っていた土地 ・相続の申告期限までに事業を承継かつ同時期まで継続
・同時期までその土地を保有
被相続人の同一生計親族が事業を行っていた土地 ・相続が始まるすぐ前から申告期限までその土地で事業を行っている
・申告期限までその土地を保有

事業の敷地となっている土地の限度面積は400㎡、減額割合は80%です。
例えば、土地の評価額が6,000万円、総地積が500㎡であれば、評価減される金額は3,840万円(6,000万円×400㎡/500㎡×80%)になります。
つまり、相続税の課税価格は2,160万円(6,000万円-3,840万円)になるのです。

特定同族会社事業用宅地

相続が始まる直前から申告期限まで一定の法人が事業を行っていた土地で、一定の要件を満たす被相続人の親族が相続などで取得したものです。
ただし、特定事業用宅地等で紹介した3事業を行っていた土地は除きます。

続いて、要件を見ていきます。

区分 要件
一定の法人が事業を行っていた土地 ・相続の申告期限時点でその法人の役員(清算人[法人を解散するときに清算の職務を担当する者]を除く)
・申告期限までその土地を保有

一定の法人は、相続が始まる直前の時点で、被相続人とその親族などが発行済み株式総数もしくは出資総額の過半数を有している法人です。

限度面積は400㎡、減額割合は80%です。
例えば、土地の評価額が1億円、総地積が800㎡であれば、評価減される金額は4,000万円(1億円×400㎡/800㎡×80%)になります。
つまり、相続税の課税価格は6,000万円(1億円-4,000万円)になるのです。

特定居住用宅地

相続が始まるまで被相続人などが生活していた土地で、一定の要件を満たす被相続人の親族が相続などで取得したものです。土地が2つ以上ある場合、適用できるのは主に住んでいたほうに限られます。

続いて、要件を見ていきましょう。

区分 取得した親族など 要件
被相続人が住んでいた土地 被相続人の配偶者 ・要件なし
その土地で被相続人と同居していた親族 ・申告期限まで居住し保有していること
上記以外の親族 ・相続が始まる前3年のうちに、自身の配偶者・3親等内の親族などが有する家に住んだことがないなどの要件を満たし申告期限までその土地を保有している
被相続人の同一生計親族が住んでいた土地 被相続人の配偶者 ・要件なし
同一生計親族 ・申告期限まで居住し保有していること

限度面積は最大330㎡、減額割合は80%です。330㎡を超える場合は部分的に適用を受けることができます。
例えば、土地の評価額が5,000万円、総地積が400㎡であれば評価減額は3,300万円(5,000万円×330㎡/400㎡×80%)になります。
つまり、相続税の課税価格は1,700万円になるのです。

被相続人が要介護や要支援の認定を受けて有料老人ホームなどの介護施設に入居している例でも、自宅を賃貸に出していないなど条件を満たすことで特例を利用できます。また、被相続人と別居でも自宅を保有していない親族が相続する際に利用できる場合があります。自宅の土地・建物を保有していない親族を家なき子といい、該当する場合は、その親族は特例を使って相続できるので、相続税を軽減することができます。条件が複雑ですので、判断に迷う場合は税理士に相談するようにしましょう。

ただし、特例を使うために、住宅を相続すると、法定相続分とは大きく異なる配分となり相続人の関係が悪化する可能性がありますので注意しましょう。

貸付事業用宅地

相続が始まる直前に被相続人などが特定事業用宅地で上記で紹介した3事業を行っていた土地で、一定の要件を満たす被相続人の親族が相続などで取得したものです。
ただし、相続が始まる前の3年のうちに新たに事業を始めた土地は除きます。

要件は以下になります。

区分 要件
被相続人が事業を行っていた土地 ・申告期限までに事業を承継
・同時期まで土地を保有している
被相続人の同一生計親族が事業を行っていた土地 ・相続開始前から申告期限まで事業を行っている
・申告期限までその土地を保有している

限度面積は200㎡、減額割合は50%です。
例えば、土地の評価額が8,000万円、総地積が800㎡であれば評価減額は1,000万円(8,000万円×200㎡/800㎡×50%)になります。
つまり、相続税の課税価格は7,000万円(8,000万円-1,000万円)になるのです。

不動産を相続する場合の注意点

不動産を相続する場合、現金や預貯金と異なり様々なことに注意する必要があります。どのような点に注意する必要があるか確認しておきましょう。

登記が必要

不動産を保有している場合、登記簿に記載されている所有者の変更手続きが必要となります。数が多く、複数の法務局にまたがっている場合、各不動産毎に手続きをする必要があります。

登記をするためには、相続人全員で署名・捺印した遺産分割協議書が必要です。

配分が難しい

自宅の価値が高い場合や複数の不動産を保有している場合、配分に困るケースも多くあります。預貯金は割合さえ決めておけば、きれいに配分することができますが、不動産は目的や今後の予定に応じて、誰が相続するか決めるケースが多くあります。亡くなってから検討すると間に合わない可能性があります。

各資産を一覧の表にまとめて検討し、亡くなる前に遺言書を作成しておくなど、家族が困らないように対策を検討しておくようにしましょう。

納税資金が不足する可能性がある

不動産の評価の価額に応じて、相続財産として相続税がかかりますが、すぐに現金化して使えるわけではありません。納税は原則現金で一括納付する必要がありますので、評価が高い不動産を相続する場合、相続人が手持ちの現金で相続税の負担をする必要がある可能性があります。測量などが必要となる分、マンションよりも土地・建物の方が時間がかかるケースが多いので、不動産を売却しないと納税できない場合は注意が必要です。

小規模宅地の特例は税理士に!

いかがでしたでしょうか?今回は、小規模宅地の特例と相続税について解説しました。大きな評価減を受けられる可能性があるため土地の遺贈を受けた場合、積極的に活用したい特例です。今後、税制改正がある可能性もありますので、しっかりとチェックしておきましょう。

相続税の申告は10ヶ月以内と短い期間内に対応する必要があります。相続が発生したら、まずは財産を一覧にして配分を協議するようにしましょう。

とはいえ、相続税や贈与税の知識がない方が、特例について理解するのは簡単なことではありません。適用できるかわからない場合やどの区分に当てはまるかわからない場合は、税金の専門家である税理士に相談するとよいでしょう。また、小規模宅地の特例を利用するためには、税務署に申告書の別表と利用できることを証明する書類を添付して提出する必要があります。作成の方法が分からない方も税務のプロである税理士に相談するようにしましょう。税理士に依頼する場合は、相続税の申告を普段から業務として行っている税理士事務所や税理士法人に依頼ことをおすすめします。初回の相談はサービスで無料で行ってくれるケースもありますので、まずは気軽に相談してみましょう。

自分で申告した場合、特例の対象外であった場合など誤った申告をすると税務調査が入り、加算税を請求される可能性がありますので、注意が必要です。使う可能性がある特例の条件はしっかりと確認しておきましょう。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
税理士選びにお困りなら、まずは無料相談でお気軽にご相談ください!

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい