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相続時精算課税制度のデメリットとして注意しておくべきポイント

2021年11月02日

自分で蓄えてきた財産を相続税の税額を抑えて子供や孫にできるだけ多く贈りたいと考えた際に利用されているのが、生前贈与です。節税対策で行う生前贈与にはいくつかの方法がありますが、相続時精算課税制度に注目している方もいるでしょう。

2,500万円までであれば贈与税がかからないメリットが注目されがちであるものの、デメリットもあります。

そこで「相続時精算課税制度の具体的なデメリットが知りたい」と考えている方のため、注意しなければならないポイントについてまとめました。この記事を読むことによって、自分には本当に向いているのか、損をする可能性はないのかなどが理解できるようになります。

相続時精算課税制度のデメリット

相続時精算課税制度を利用することで、財産を先に渡すことができるなど、相続対策において有効な手段の一つではありますが、確実に相続税を抑えることができるわけではありません。

相続時精算課税制度を利用するにあたり、おさえておかなければならないデメリットがあります。詳細について、下記に解説していきます。

①暦年贈与が使えなくなる

特に手続きをしない場合、通常の贈与は暦年贈与となります。

相続時精算課税制度を活用した場合、暦年贈与(暦年課税制度)は利用できなくなります

暦年贈与とは、1月1日から12月31日までの間の1年間で課税される制度です。110万円以内であれば非課税となりますので税金の納付も申告も不要です。そのため、110万円の範囲内で贈与をしている人も多くいます。非課税となるための要件は特にありませんので、配偶者や子供など相続人以外でも贈与をすることができます。

110万円を超過する贈与については贈与額によって累進課税される贈与税を支払うことになります。贈与額が110万以下であれば税金はかかりませんし、特に手続きも必要ありません。ただし、1年間の間に複数回分けて贈与を受けた場合や複数人から贈与を受けた場合、受贈者の合計で110万円を超えると贈与税がかかるため注意点として認識しておきましょう。

自分にとってはどちらを選んだほうがよいのか、比較して慎重に判断していくことが必要になります。また、途中で変更はできません。

相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた場合には、被相続人が亡くなった時にその贈与で受けた金額を相続財産に加算し相続税の計算を行いますが、暦年課税制度による贈与は、原則、相続財産に加算する必要がありません。2024年の税制改正で相続時精算課税制度にも毎年110万円の基礎控除の枠ができ、制度が改善されたため、このデメリットは小さくなりましたが、課税される財産の額によっては累進税率で毎年贈与税を支払った方が良いケースもあります。

なお、相続時精算課税制度は、贈与者ごとに選択することが出来るため、例えば父からの贈与は相続時精算課税制度、母からの贈与は暦年贈与を選択するなどの形は可能です。

②小規模宅地等の特例が利用できない

金額が大きくなる自宅や事業用の不動産に相続時精算課税制度を活用しようとしている方もいるでしょう。しかし、その場合、相続で取得した場合には、住宅として利用している土地の評価の際に最大80%まで評価を下げることが出来る小規模宅地等の特例が適用出来なくなります

控除できる金額が大きい制度ですが、先に贈与をすると特例を使うことができません。特定居住用宅地の特例を使いたい場合は、居住用不動産の贈与に相続時精算課税制度を利用しない方がよいでしょう。

③財産の時価が低下したら余分な税金を払うことになる

毎年税金を支払っておく暦年贈与とは違い、基礎控除(3,000万円+法定相続人×600万円)を超える場合、相続時精算課税制度で贈与をした金額に対しても相続税がかかります。

もし、価値が高い時の贈与を行って、将来的に財産の時価が下がってしまうようなことがあれば、税負担が増えることになり、逆効果となってしまいます。

相続時精算課税制度は、相続が発生したケースでは、贈与された財産を相続財産に加算し相続税の計算を行うことになりますが、この加算する金額が贈与をした時点の価格となるため、その分高い評価額の財産に対して相続税がかかってしまうのです。

相続税対策で相続時精算課税制度を活用する場合は、贈与をした後で、実際に相続発生する時までに現時点以上に値上がりしている可能性が高い、自分が代表を務めている会社の株式などの資産や家賃を得られる賃貸アパートやマンションなど、一定の収入を生む事業用不動産を選ぶ必要があります。

土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価を行いますので、所有している不動産の現時点での評価を確認しておきましょう。しかし、贈与以降に課税対象の資産の時価や物件から得られる収益がどうなるかはわからないので慎重に判断する必要があります。

④他の相続人の相続税負担が大きくなる

相続時精算課税制度によって、他の相続人の負担が大きくなってしまうのもデメリットです。これは、相続時精算課税制度で贈与した財産は相続税の対象になってしまうからです。

相続税の計算は、相続時精算課税制度で贈与された財産も相続財産に加算して計算します。そのため、相続税の総額が増加し、贈与を受けていない他の相続人の税率もあがってしまい、税負担も増えてしまうのです。配分の割合などの関係でトラブルが生じることが予想される場合は慎重に検討した方がよいでしょう。

⑤税制改正で不利益が出る可能性がある

現時点で相続時精算課税制度を利用するのがお得だったとしても、将来的にどうなるかはわかりません。現在は2,500まで相続税に加算され、2,500万円を超える場合は一律20%の税率で課税されいます。しかし、今後、税制改正が行われ、場合によっては不利益に繋がってしまう可能性もあります。

例えば、現在に比べて、相続税が大幅に増えてしまった場合はどうなるでしょうか。相続時精算課税制度で贈与したものは相続税の対象になるため、将来的なことまで考えて検討しなければなりません。

前述したように、一度相続時精算課税制度を選択すると取り消しは不可能です。状況が変化したらそれに合わせて考え直すなどの対応はできないので注意が必要です。

⑥届出が必要

相続時精算課税制度を利用し、親や祖父母から子や孫に贈与をする場合は、必ず贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に税務署に戸籍謄本などの書類を添付して提出する必要があります。届出は無税となる場合でも贈与を受けた人が行う必要があります。

生前に大きな資金を一括で贈与をすることができる制度ですが、手続きの手間があることは一つのデメリットといえるでしょう。

⑦財産の配分が崩れる可能性がある

相続時精算課税制度を利用することで、父母から子供など次の世代へ多額の財産を先に渡すことができます。しかし、先に渡すことによって法定相続割合とは大きく異なる配分となるため、相続人の数が多い場合は贈与の影響で配分でトラブルとなる可能性があります。大きな財産を贈与することで、遺留分を侵害するケースもあるでしょう。

相続時精算課税制度を利用して贈与をする場合は、亡くなる前に遺言書を作成し、方針を定めておくなど、あわせて配分の対策も考えるようにしましょう。

慎重に検討しなければ失敗する恐れも

いかがでしたでしょうか?今回は、相続時精算課税制度について注意すべきデメリットをまとめました。中には利用したほうが得をする方もいるのですが、慎重に検討が必要です。相続時精算課税制度は贈与者は60歳から、受贈者は成人年齢の引き下げにより、20歳から18歳以上と変更になり、早い段階から子供や孫に対して使うことができるようになっています。知識のない一般の人に課税価格の計算や特別控除の計算をするのは簡単なことではありません。資産が多い人は贈与は長い期間をかけて行う必要があるため、なるべく早いタイミングで税務の専門家である税理士にアドバイスを受けるようにしましょう。

相続税の申告と納付は国民の義務ですが、税理士に相談することで、実際に納税する金額を抑えられるケースもあります。税理士に相談する際は現金や有価証券、不動産等の財産を一覧の表を作成し、シミュレーションをして最適な方法を探してみるとよいでしょう。

また、相続時精算課税制度による贈与をする場合は、財産や相続人によって、注意するべき点が多いため、検討する際には税理士に相談しましょう。税理士に相談する際は相続税の申告実績が豊富な税理士事務所・税理士法人に依頼するようにしましょう。申告実績な豊富な税理士に依頼することで、税務調査の対応もしやすくなりますので、加算税を請求される心配もありません。

相談料や申告を依頼する際の報酬は財産の内容や、条件により異なりますので、依頼する前に費用についても問い合わせておくことをおすすめします。

広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい