基礎控除を超える財産を保有する人が亡くなった場合、相続人は相続税の申告と納付を期限内に管轄の税務署で行う必要があります。葬儀などで忙しい中での期限は、相続発生から原則10ヶ月と短く、事務的な作業も多いため、相続開始後すぐに対応する必要があります。
相続税の申告は税理士に依頼することも可能ですが、必ず税理士に依頼する必要があるわけではありません。相続税の申告は自分で行うこともできます。実際に自分で申告を行うことはできるのでしょうか。
当記事では自分で相続税の申告を行う場合の手続きの流れや、税理士に依頼するべきケースや税理士に依頼するメリットについて案内します。
相続税申告の流れ
相続税の申告はどのような流れで行うのでしょうか、基本的な申告の手順を確認しておきましょう。
財産を確定し基礎控除を超えるかどうか確認する
まずは相続財産を把握し、総額が基礎控除を超えるかどうか確認してみるとよいでしょう。基礎控除の計算式は3,000万円+法定相続人×600万円です。相続人が3人いる例の場合は4,800万まで非課税となります。財産の合計が基礎控除を超える場合、財産を受け取る者は国民の義務として相続税の申告が必要になります。
課税の対象となる財産を確定する際に財産の種類ごとに評価を行う必要があります。例えば、土地であれば、路線価×面積、建物であれば固定資産税の評価額で計算をします。財産は銀行の預貯金や上場株式などの有価証券や不動産、生命保険などのプラスの資産と、債務などのマイナスの資産などあらゆる財産を洗い出し、評価額を計算する必要があります。財産を洗い出すことができれば、一覧の表にまとめておくとよいでしょう。仏具など一部非課税の財産もありますが、ほとんどの財産が課税対象となります。
財産の件数が多い場合、対象となる作業が多く、負担もかかりますので早めに作業することが必要です。
財産を確定した結果、承継する財産が基礎控除以下であれば、相続税はかからないため、申告は不要です。しかし、特例を活用することで課税価格が0円になる場合は申告が必要となりますので、注意しましょう。
法定相続人を確定する
法定相続人は被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を集めて相続人の範囲を確定します。ご自身では相続人が分かっている場合でも、税務署や各金融機関で手続きをする際に書面で相続人を特定するために提出する必要があります。
戸籍謄本は公的機関などに相続人を確定する証明書のようなものだと考えると良いでしょう。
配分を確定する
被相続人が亡くなる前に遺言書を書いていなかった場合、自宅の不動産や預金など、誰が何を相続するか、法定相続割合を基準に誰が何を受けるか遺産の分割協議を行います。遺言書がある場合は手続きを進めやすくなりますが、遺言書がない場合、それぞれの状況によって考えがあり、関係が悪化し、トラブルになり話し合いに時間がかかるリスクがあります。
遺産分割協議の結果をまとめ、遺産分割協議書という書類を作成します。遺産分割協議書は相続人全員で話し合った結果を書面にまとめる必要があります。相続人が多数いる場合、考えることが多く、配分の調整に日数がかかることが多いので、人数が多い場合は注意が必要です。
相続税は取得する財産によって納税者の負担額が決まりますので、財産配分が決定しなければ相続税の算出など手続きを進めることができません。
生前贈与を贈与をしている場合は生前贈与分を考慮するか否かも考えておく必要があります。いくら仲の良い家族でも、数が多いとさまざまな理由で配分がまとまらないことがあります。また、相続人の住所が全国ばらばらになっている場合、話し合いの時間を持つことができない場合も多いので早めに準備しておくことが重要です。
申告書を入手し、作成する
税務署で直接、書類を入手し、該当箇所を記載し、税額を計算し提出します。申告書は税務署で入手することが可能です。相続税の申告期限は被相続人が亡くなってから10ヶ月以内です。相続税の申告書は第1表~第15表に分かれており、小規模宅地の特例や配偶者控除を活用する場合、別表を作成し添付書類とあわせて提出する必要がありますので注意しましょう。
各種特例の適用条件などについては国税庁のホームページで確認することができます。
税理士に依頼するメリット
税務のプロである税理士に依頼することで報酬を払う必要がありますので、費用はかかります。申告手続きの相場は財産額の0.5%~1%程度で、安くはありませんので費用がかかる点は大きなデメリットといえるでしょう。しかし、税理士に依頼することで様々なメリットもありますので、具体的に解説します。
税務調査を受ける可能性が低くなる
相続税の申告後、3年程度の間に財産の申告漏れなどがないか、実際に税務署が調査に訪れる可能性があります。自分で行った場合、間違った申告をして、指摘されることも少なくありません。
税務調査で申告漏れや不動産の評価が誤っている場合など、誤った金額で申告をしていることが指摘されると、修正申告の必要があり、追徴で加算税や延滞税を高い税率で課される可能性があります。
税理士に依頼することで、税務署に正しい専門知識とノウハウを持つ人が申告していると認識しますので、税務調査を受ける可能性は低くなります。
過去の相続税の納税額や所得税の額が多い場合、税務署調査を受ける確率も高くなります。税務署から目をつけられた場合、徹底して調べられますので、漏れなく申告することが重要です。
特例を漏れなく利用できる
相続税にはさまざまな特例や税額控除の制度があり、税金が控除されます。要件を満たす場合は漏れなく利用することで、評価額の減額や税額軽減で相続人にかかる負担を減らすことができます。
相続税の特例は条件や判断基準も非常に複雑です。特例を利用する際は適用を適用できるか否かの判断や添付する資料の準備も必要です。特例は自分で申請する必要がありますので、特例の存在を知らず見落としていると、特例を受けることができません。
相続税に関する知識がなくはじめての方が自分で申告する場合、特例の適用漏れが起こる可能性がありますので、ペナルティを課され、必要以上に多い額で納税してしまう可能性があります。
手間を省くことができる
相続税の申告は平日に金融機関の名義変更や税務署に出向き手続きをする必要があります。仕事などで土日や祝日しか休むことができず、平日に手続きをすることが難しい場合は、税理士に依頼することで休みを取らずに相続手続きを期限である10か月以内に間に合わせることができます。仕事で忙しい方や高齢となった配偶者が手続きを漏れなく完了させることは難しいことです。
相続人が複数いる場合でも相続人のうち1人が代表して申告の手続きをするケースが多いです。そのため、1人に大きな負担がかかることになりますので、税理士に依頼し、報酬を均等に負担することで平等性を担保することにもつながります。
税理士の探し方
知り合いや紹介を受けることができる税理士がいない場合、どのような点を見て良い税理士を探せばよいのでしょうか。税理士選びのポイントや注意点を解説します。
経験が豊富
税理士に依頼する際は、業務として相続税や贈与税の申告実績が豊富で最新の情報を持つ税理士や税理士法人に依頼するようにしましょう。
税理士の中でも法人税や所得税など得意分野があります。相続税は改正も多いため、相続税を専門にしている、適切に対処できる相続税に強い税理士に依頼することをおすすめします。
料金が明確
税務申告の費用相場は被相続人が死亡時に保有する財産の0.5%~1%程度で、1億円の財産であれば50万円~100万円程度です。また、資産が現金、預金が多い場合よりも不動産など複雑な内容の財産が多い場合、手間がかかりますので追加で料金が加算されるケースが多いです。
後で法外な料金を請求されることがないように、相談した時に明確に料金体系を示してくれる税理士に依頼するようにしましょう。先に見積もりを確認しておくことで安心して依頼することができます。
非上場の株式など複雑な形状をしている不動産など、評価に時間がかかる財産を保有する場合に追加料金がかかるケースも事前に確認しておくことが重要です。
申告だけでなく、節税のサポートもしてくれる
配分が決まっていない場合、配分の方法で特例を利用できるか否かで実際に納税する金額が異なります。申告書の作成や納付の手続きだけでなく、配分なども節税のためによい配分をアドバイスし、悩みを解決してくれる税理士に依頼するとよいでしょう。
また、生前に相談することで、現時点でシミュレーションを行って、生命保険の課税枠の活用や生前贈与等の対策もアドバイスしてくれます。
相続税の申告が難しそうな場合は税理士に相談を
上記のとおり税務署に行ったり、ホームページからダウンロードして書類を手に入れれば、相続税の申告が自分でできないわけではありません。相続税法で定められている各種特例についても国税庁のホームページなどにアクセスすれば参考にすることはできます。
しかし、税制改正も多く複雑ですので、課税制度を理解して正しく相続税の申告をすることは簡単ではありません。特例についても教えてもらわないとなかなかわからず、時間はかかってしまうでしょう。また、計算や書き方にミスがあり、納める金額が間違えていると税務署から指摘される可能性があります。
相続税は相続発生の翌日から10ヶ月以内に申告を行う必要があります。相続発生後は不動産の登記や金融機関の窓口での名義変更の手続きなど様々な手続きを行う必要がありますのであっという間に時間が過ぎてしまいます。自分で申告することが難しく感じる場合や不安がある場合は、無理して自分で行わず税金の専門家である税理士に相談することをおすすめします。初回の一般的な相談は面談や電話でサービスで無料で応じてくれる税理士事務所も多いので、まずは気軽に相談してみるとよいでしょう。
税理士に相談する際は被相続人の財産の残高や相続人関係図など詳細が分かる資料をもっていくことで、スムーズに相談に入ることができます。
税理士に依頼することで、相続人の負担や実際に納税する金額を軽減することができます。
広島相続税相談テラスでは、相続税で困っている・遺産分割に悩んでいる・生前贈与を検討しているあなたをサポートします。
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