相続が発生するとあらゆる財産の評価を行って相続税の申告手続きを行う必要があります。被相続人が地目が田や畑になっている耕作を目的としている土地を保有している場合、宅地とは異なる評価方法で計算を行う必要があります。当記事では農地の相続について解説します。
農地の相続税評価方法
農地の相続税評価は以下の4つの区分に分類して評価を行います。
純農地:倍率方式
中間農地:倍率方式
市街地周辺農地:市街地農地で評価した金額の80%
市街地農地:宅地比準方式または倍率方式
倍率方式とは固定資産税評価額×倍率で計算を行います。倍率は国税庁のホームページで確認することができます(国税庁HP)。
宅地比準方式とは宅地としてみなした場合の評価額から転用する際に必要な造成費を差し引いて算出します。宅地の造成費は各都道府県で定められており、先ほどの国税庁HPの都道府県をクリックし、整地にかかる宅地造成費の金額表で調べることができます。宅地としてみなした場合の評価とは前面道路の1平方メートル当たりの路線価に地積を乗じて価格を算出します。前面に道路がない場合は近傍路線価を参考に評価を行います。
路線価は駅へのアクセスなど所在によって、価格が異なります。路線価も先ほどの国税庁HPで全国の分を確認することが可能です。
土地の区分によって評価の方法が異なり、かかる相続税も大きく変わりますので、相続の対象となる農地がどの区分に該当するか生前に確認し、シミュレーションしておきましょう。
農地を相続する際の注意点
農地を相続する際には一般的にどのような点に注意をすればよいのでしょうか。具体的に解説します。
配分について注意が必要
農地がある場合、農地は共有したり、それぞれの土地ごとに取得する人を決めたりせずに相続人一人がすべての土地を相続するケースが多いです。財産の中で農地の割合が多い場合、財産の多くを一人の相続人が相続することになり、民法で定められた法定相続割合と大きく異なる配分で遺産分割をせざるを得ない例も多くあります。
相続人間で争いになりそうな場合は事前の対策として遺言書を作成しておくことをおすすめします。遺言を作成する際は財産を一覧の表にして、配分を決めてから、誰に何を相続させるか記載していくとよいでしょう。
納税について注意が必要
農地を相続する際の相続税は通常の土地とは異なり、納税猶予の特例制度があります。納税猶予制度とは被相続人が農業を営んでおり、相続人が引き続き農業に従事する場合、納税が猶予される制度です。
ただし、首都圏、近畿圏、中部圏の三大都市圏の市街化区域内にある土地は生産緑地として指定されている土地、または田園居住地域内でないと利用できないなど制限もあります。納税猶予が利用できるかどうかで納税する額は大きく変わってきますので、要件を満たすか、事前に調べておくことが重要です。
また、相続税は期限内に原則、現金で一括納付する必要があります。納税猶予が認められず適用できない場合は、取得する財産額に応じて相当な現金を用意しておかないといけない可能性もあります。いくらくらいかかるか把握して現金の準備や生前贈与による節税対策など事前準備が必要となります。
特に東京などに近い都市部で規模が大きい農地を所有している場合、負担も大きくなるますので、注意が必要です。
農地は簡単に手放すことができない
農地を所有する人が所有権などの権利を売買する際は、農地法3条の規定により農業委員会の許可を得る必要があります。そのため、農地をする際は通常の土地よりも慎重に検討を行ってから誰が相続するか決める必要があります。相続した次の世代の人が土地を使用しない場合でも相続を受けたあと、売却することができないため、固定資産税を払い続ける必要があります。相続する人にとって大きな負担になる場合もあります。
農地を相続したら届出が必要
農地を相続したら農業委員会に届出をする必要があります。相続発生から10ヶ月以内に行う必要があり、相続税の申告を行う時期と重なりますので、忘れないようにしましょう。
農地の相続は相続に強い税理士に相談を
財産が自宅と金融資産のみの場合と異なり、農地を財産として保有している場合は土地の評価や相続税が控除される制度など複雑な計算が必要となります。農業委員会とも連携して手続きを進めていく必要がありますので、農地や贈与税・相続税の情報を持つ、実績のある税理士に相談をするようにしましょう。
宅地の評価も原則路線価図で評価しますが、土地の形状や奥行などでも考慮して評価を求める必要があり、専門家でないと難しいものです。複数の土地を持っている場合は早めに計算して評価額を把握しておかないと間に合わなく可能性もあります。
相続税は被相続人の死亡から10ヶ月という短い期間に行う必要があります。相続税の申告が誤っていた場合、税務署の税務調査により指摘を受け、加算税を請求される可能性もあります。費用はかかりますが、税理士のサポートを受けて申告書類や相続手続きを進めることをおすすめします。
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[注1]参照:国税庁:No.4158 配偶者の税額の軽減
[注2]参照:国税庁:No.4205 相続税の申告と納税
[注3]参照:国税庁:財産を相続したとき