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夫婦間のおしどり贈与とは?メリットを解説!

2023年03月20日

夫婦間で自宅として利用している土地・建物を贈与できる通称「おしどり贈与」という特例をご存知の人も多いのではないでしょうか。夫婦間で贈与をすることで、財産を平均化することに有効な手段の一つです。

今回はおしどり贈与のメリットと活用事例を解説します。

夫婦間のおしどり贈与とは

夫婦間のおしどり贈与とは婚姻期間20年以上経過している配偶者に自宅として利用している住宅を贈与をして名義変更ができる制度です。

特例を適用する条件を満たすと2,000万円までことで贈与税が非課税になります。暦年贈与の基礎控除の110万円とは別に非課税枠を使えるため、1年間で最大2,110万円まで非課税で配偶者に贈与することが可能です。2,110万円を超える額の贈与を行った場合、超えた分に対し贈与税がかかります。

特例を利用したあとも暦年贈与は続けられますので、資金を少しずつ移すことも可能です。

自宅の所有権を渡す場合の土地の評価は路線価、建物は固定資産税評価で行います。路線価は国税庁のサイト(国税庁HP)。固定資産税評価額は毎年贈られてくる納税通知書で確認することができます。

特例を利用する際は戸籍謄本や戸籍の附票の写し、贈与を受けた居住用不動産の登記事項証明書を添付し、税務署に申告する必要があります。また、贈与をした翌年3月15日を過ぎるまでは住み続ける必要があります。

贈与時点で20年以上法律上の婚姻関係を続けていることが条件ですので、内縁関係の場合、この特例を利用することができません。

おしどり贈与を使うべきケース

おしどり贈与はさまざまな事情を考慮して検討する必要があります。おしどり贈与を使うべきケースとは具体的にどのような理由が考えられるのでしょうか。次に活用例を紹介します。

夫婦のどちらかに財産が偏っているケース

夫婦のどちらかに財産が偏っているケースではおしどり贈与を利用して財産を配分しておくことで大きな節税メリットがでます。

例えば、夫の資産が1億円、妻の資産が1,000万円、子どもが1人というケースでは夫が先に死亡した場合、子どもが払う税金は約385万円です。一方で、おしどり贈与を活用して、夫の財産を8,000万円にしておけば、子供が払う相続税を235万円まで引き下げることが可能です。配偶者が取得する分は配偶者控除により課税されませんが、子どもが相続する金額が大きいと税率が上がってしまうため、相続税も高くなってしまうのです。

妻が先に亡くなったケースでも妻の基礎控除(4,200万円)の枠内ですので、自宅を妻に取得してもらっておいた方が節税になります。おしどり贈与をする際は二次相続も含めてシミュレーションして比較する必要があります。おしどり贈与にかかる費用よりも、節税効果も上回る場合には、事前に家族にも説明し、理解を得ながら進めるようにしましょう。

自宅の売却を検討しているケース

自宅の売却を検討しているケースでもおしどり贈与によって売却時の譲渡税対策をすることができます。

自宅の売却をして、購入時よりも利益が出た場合は譲渡所得税として20.315%の税金が課されます。親から引き継いだ土地など、取得価格が分からない場合、取得費は5%とみなしますので、売却価格のほとんどが利益になってしまいます。

ただし、居住用財産の売却の場合、3,000万円の特別控除があり、おしどり贈与を利用して夫婦で共有にすることで、特別控除も二人分利用することができます。要件を満たせば二人分の6,000万円まで控除することができますので、課税対象となる金額を大きく減らすことが可能です。

おしどり贈与を利用する際の注意点

おしどり贈与を利用する際はどのような点に注意をすればよいのでしょうか。財産の額やおかれている状況によって、注意点は異なります。

手続きに手間と費用がかかる

おしどり贈与の特例を活用する場合、土地・建物の登記時の司法書士への報酬や登録免許税、不動産取得税などの税金がかかるうえ、税務署への申告の手間がかかります。財産が基礎控除以下で相続税がかからないなど節税メリットが大きくない場合など、コストや手間などの対応するデメリットの方が大きいケースもあります。特に遺産の総額が基礎控除以内であれば、節税という面では意味がありません。

おしどり贈与を利用して先に生前贈与をするか、相続が発生した後に相続させるかによってどれくらい相続税が変わるのかを実際の金額を見て検討するようにしましょう。同じくらいの負担であれば、わざわざ特例を利用して贈与する必要はないでしょう。

贈与をした際のシミュレーションをするためには課税対象になるすべての相続財産の評価を行い、一覧を確認して検討する必要があります。軽減できる税金よりも諸費用の方が多い場合、おしどり贈与を選択するべきではありません。自分で計算することが難しい場合は税の専門家である税理士のアドバイスを受けるようにしましょう。

子どもいない場合は要注意

子どもがいない夫婦の場合、それぞれの兄弟姉妹もしくは甥・姪も相続人となります。自分が亡くなると配偶者が自分の兄弟姉妹もしくは甥・姪と遺産分割を行うことになりますので、自分が住んでいる家も遺産分割協議の対象ですので、民法で定められた法定相続分を支払うために自宅を売却せざるを得ないケースもあります。

自宅の一部でもおしどり贈与で権利を移すことで、親族間での遺産分割複雑化するケースもありますので、親族に財産を請求されるなど問題が起こらないように検討する必要があります。

問題が起こりそうな場合には、配偶者の生活を守るために、自宅や金銭を配偶者に遺す内容の遺言を作成するなど対策を施しておきましょう。

相続税は相続発生から10ヶ月と期限も短いため、事前の準備も重要です。

贈与の特例を利用する際は税理士に相談を

おしどり贈与のように贈与の特例は非常に複雑ですので、知識のない人が気軽にできるものではありません。特例を使って効果的に贈与をするために目的を明確にし、ポイントをおさえて贈与を行う必要がありますので税理士に依頼する方が安心です。

提出する書類などを誤ったり、申告を怠った場合、税務署に指摘され、加算税を請求される可能性もありますので、贈与の特例を利用する場合、相続や贈与を専門としている税理士や税理士法人に相談する方が良いでしょう。

また、相続税や贈与税は改正も頻繁に行われるため、最新の情報を得て判断するようにしましょう。

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注1]参照:国税庁:No.4158 配偶者の税額の軽減
[注2]参照:国税庁:No.4205 相続税の申告と納税
[注3]参照:国税庁:財産を相続したとき

筆者情報

氏名:山根 謙二 (やまね けんじ)

資格:税理士(税理士登録番号92527号)
   行政書士(行政書士登録番号18342346号)
   相続手続カウンセラ-

専門分野:相続税、事業承継

出身:広島県廿日市市

趣味:ゴルフ、旅行(海の綺麗な所)

お客様に一言:相続の事なら何でもご相談下さい